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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

マイナポイント手続き“わかりにく過ぎる”…別の決済サービスに変更不可、賢い家計管理法

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
マイナポイント手続き“わかりにく過ぎる”…別の決済サービスに変更不可、賢い家計管理法の画像1
マイナポイント事業」サイトより

 前編に引き続き、後編ではファイナンシャル・プランナーである筆者が実際に「マイナポイント」の手続きを行った感想とキャッシュレス時代の家計管理についてご紹介したい。

FPが「マイナポイント」手続きできたが、ソッコー後悔…

 総務省が2020年9月より開始予定の「マイナポイント事業」だが、すでに申し込み等ができると聞いて、早速、筆者もスマートフォンで手続きをしてみた。マイナンバーカードは、e-Tax(電子申告)の際に必要なため、すでに取得済みである。

 マイナポイント申請の手順などは、さまざまなサイトで紹介されているので、ここでは省略するとして、率直な感想を申し上げると、「わかりにくい」の一言だろうか。

 そもそも総務省のサイトにある「マイナポイントを予約」と「マイナポイントを申込み」の違いがよくわからない。前者は「マイナンバーカード」のICチップの中に搭載されている電子証明書から電子的に生成される「マイキーID」を発行することを指すらしいが、予約番号など発行されないので、ちゃんと予約できたのか不安にさせられる(同サイトによると「利用者マイページ」から確認できるとある)。

 続いて筆者は申込みへと進んだが、こちらは「マイナポイント」を付与してくれるキャッシュレス決済サービスとの紐付けの申し込みをすることらしい。画面の案内通りにしていくと、希望する決済サービスの「決済サービスID」と「セキュリティコード」の入力が必要となるが、「え? このIDとかコードってどこを見たら良いの?」と一瞬わからない。

 慌ててマイナポイントの申請方法を詳しく解説したサイトで確認し、申込みは無事完了したものの、これらを高齢者も含めた多くの人がスムーズにできるものかどうか。

 ネット上の口コミを見ると、「マイナンバーカードをスマホでかざしてもマイナンバーカードをうまく読み取れない」などと書かれてあったが、たしかに、途中からお手上げ状態の人もいるに違いない(同サイトのトップページにも、これについては、やり方が詳しく説明されてあったので、よっぽど苦情が来たのではと推測する)。

 さらに、手続きを終えてから「申込後に別のキャッシュレス決済サービスに変更することはできません」という一文を発見し、すぐに後悔した(ちなみに、同サイトの「よくあるご質問」には、「お申込みいただいた方法によっては、申込当日に限り、取消又は決済サービスの変更が可能な場合があります」とあるが、筆者はできなかった)。

 というのも、キャッシュレス決済事業者間で、顧客囲い込みのためのキャンペーン競争が再び始まっており、決済方法によっては、5000円+αの恩恵が享受できるからだ。

 なお、マイナポイントは手続きをした人全員が受け取れるわけではない。同サイトには、「マイナポイントの予約者数が予算の上限に達した場合には、マイナポイントの予約を締め切る可能性があります」と小さな字で明記されている。

 政府が発表している2020年度のポイント付与の予算枠約2000億円。これを5000円で割った先着枠は4000万人となるが、この規模の先着枠が早々に埋まるとは思えない。みなさんには、ゆっくりキャンペーンの内容を吟味し、決済方法を選択されることをお勧めしたい(ただ、筆者が早々に決済方法を決めてしまったのは理由があり、それは後述する)。

管理が難しいのは「お金の流れがわかりにくい」から

 一般的に、キャッシュレスのメリットは多額の現金を持ち歩くことが不要で、支払いがスマート&スムーズにできる。ポイントやさまざまなキャンペーン特典が受けられる。家計簿アプリと連携すれば、お金の管理がしやすいなどがある。

 その一方で、お金をつかっている感覚が希薄になりがちで、つい使い過ぎてしまう。支払い能力以上の消費を生じやすい。セキュリティやカード盗難、スキミングなど安全性の問題や、PCやスマホ、タブレットなどデジタル端末の操作になじみがないor苦手なシニア世代の場合、利用が難しい決済方法もある等がデメリットである。

 とりわけ、キャッシュレスに関してご相談が多いのが「どのように家計管理をすれば良いかわからない」ということだ。キャッシュレスの家計管理が難しい最大の理由は、お金の流れがつかみにくい点である。

 たとえば、クレジットカードの場合、使用した日と口座と引き落としになる日の間には数カ月のタイムラグがある。いずれを家計簿に反映させるかがバラバラだと、家計全体の収支がわからなくなってしまう。

 また家計簿アプリで銀行口座やキャッシュレスの情報を集約させておけば便利だが、自動的にデータがアップされるものとされないものがあり、後者は自分で記録・入力が必要だ。いくらキャッシュレスが普及したといっても、まだまだ現金しか使えないお店やサービスは少なくない。決済方法が混在しているので、すべてを把握しようと思うと、結構な手間ヒマがかかる。その上、毎月、手元の現金残高と家計簿の数字が合わないで四苦八苦する人もいるのではないだろうか。

キャッシュレス時代の家計管理法は?

 そこで、お勧めしたい家計管理方法は、次の3つである。

(1)利用するキャッシュレスを絞る

(2)使い過ぎ防止はいったん生活費を現金化することで解消

(3)こまめに管理して支出を“見える化”する

 それぞれ、詳しく説明しよう。

(1)利用するキャッシュレスを絞る

 自分の行動範囲を踏まえて、「クレジットカード・デビットカード」「電子マネー」「QRコード決済」の3つのうち、それぞれ1~2種類に決済方法を絞ることである。

 選ぶポイントは、還元率、チャージの手間、ポイントの種類・使いやすさ、利用できる店舗数など。たとえば、楽天スーパーポイントやTポイント、dポイントなど、代表的なポイントを軸に選ぶのも一手だろう。もちろん、3つのうちどれか1つだけでも良いが、スマホ決済ができるものに限定すると、端末故障や電池切れなど、肝心の場合に使えないことも考えられる。また、クレジットカードを使ってQRコード決済にチャージすれば、1回の買い物でポイントの二重取り、三重取りも可能だ。

 とにかく、自分がお金を使うシーンを想定して、最も有利なキャッシュレス方法を絞ってみよう。いろいろな種類を持っていたほうが、ポイントを取りこぼしにくいのは確かだが、多少おトクだからといって支出を増やしていては、家計管理を面倒にするだけでなく、節約にもつながらない。

 筆者がマイナポイントの手続きを早々に決めたのも、すでに頻繁に利用する決済方法が絞られているからである。大盤振る舞いの特典があるからといって、自分がまったく使わないであろうキャッシュレスを選択するつもりはない。

(2)使い過ぎ防止はいったん生活費を現金化することで解消

 前述の通り、使い過ぎてしまうのは手元の現金が減っていかないからである。そこで、公共料金など口座引き落とし分を除き、毎月の生活費をいったんすべて現金化し、食費や日用雑貨費など、それぞれの費目に袋分けする。そしてキャッシュレスでお金を使った場合、そのお金を使ったものとして、別の袋に分けてしまう。要するに、どのキャッシュレスを使っても、計上するのは「使った日」にして、使える現金を減らしていくのがポイントだ。

 アナログな方法だが、キャッシュレスによるポイントは稼げるし、分かりやすい。お金が減っていくのが目に見えるので節約の意識も強まりやすい。いちいち、口座から現金を引き出す手間が面倒だという人は、「後払い(ポストペイ)」ではなく、デビットカードのように「即時決済」のキャッシュレスを選ぶ方法もある。

(4)こまめに管理して支出を“見える化”する

 家計簿アプリに連動するデータはそれを活かしつつ、自動的に記録されない支出や現金で支払った分はこまめに入力。クレジットカードの明細もチェックするなど、とにかくお金を使ったら記録することだ。

 多少、残高が合わなくても「不明金」などとして仮に計上しておき、判明した時点で記録を修正するなどして、とにかく支出を“見える化”するようにすることが肝心である。

 現金でもキャッシュレスでも、決済方法が変わっても、家計管理の方法は同じ。収入に対して、何にどれだけお金を使ったかを支出を把握すること。それを振り返って、家計のムリ・ムダなど問題点や改善点を検討することである。

 そして、家計管理を行うのは、それぞれライフプランに応じてお金を貯める必要があるからだ。これが実行できるよう、それぞれのご家庭のライフスタイルに応じた家計管理法を見つけていただきたい。

(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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