60歳以降、公的年金と別に毎月5万円を確実に受け取る方法…入院時には一時金数十万円
私の周りでは、将来、収入がゼロになり年金だけでは不足するからと、自分の死や残された生活費について真剣に考えるようになった人が増えています。
「少し前までは『元気なうちは働き続けるから老後もお金の心配はしなくて大丈夫』と思っていたのに……。もう仕事が見つからないだろう」と嘆くのは、都内在住のパート主婦、鈴木緑さん(58歳・仮名)です。夫は68歳で持病があり、もしも急に他界するようなことがあったら残された貯金で生活するしかありません。「新型コロナウイルスで私の事務のパートさえもなくなった。65歳くらいまでは仕事があるだろうと思っていた」とショックを隠せない様子です。
緑さんは日本人女性の平均寿命87歳まで残り29年もあります。もう、仕事にはありつけないことを覚悟して、最低でも60歳からは毎月5万円受け取れる方法を考えなければなりません。特に65歳までの5年間、年金を受け取らない場合、10万円は必要です。
将来、毎月5万円を10年間受け取るためには、以下の方法があります。
・自分で総額を貯金し口座から毎月引き出す
・個人年金保険などに加入して毎月受け取る
・孫や子どもがいれば学資保険に加入する
・駐車場や家を貸した家賃収入
・増える医療費を抑えるための損害保険
・家賃などを減らし節約する
今回は「個人年金保険」と「医療費を抑えるための損害保険」についてとりあげてみます。
(1)60歳から70歳まで個人年金保険5万円を受け取る
私の場合は60歳から70歳までの10年間、毎月5万円受け取るための個人年金保険に加入し、30代後半から毎月1万円を保険料として支払っています。保険料を受け取る時には税金を払う必要があるのですが、「保険料の払込期間が10年以上」「受け取り期間も60歳以上」で、「受け取り開始年齢が60歳以上」ですと個人年金保険料控除の対象になり、所得税で最⼤4万円、住⺠税で最⼤2万8000円の控除を受けることができます。保険会社によっては受け取り開始年齢の設定は、55歳から、60歳から、65歳から設定がありますが、60歳以降を選べば控除の対象になります。また、受け取り期間も10年ほどの確定年金で生涯受け取るように設定しないことです。
最近の個人年金は、以前ほどお得な商品は見当たらなくなりましたが、クレジットカードを利用して払うことも可能ですのでポイントを貯めることもできます。
それに、明治安田生命「年金かけはし」や住友生命「たのしみワンダフル」やJA年金共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」円建ては、若いときに契約していれば105%ほどの払戻率でお得です。全額を一括で払い込むなど早めに払い込んだ後、受け取り開始までの期間を据え置くことで、受取金額を増やす方法をとる保険会社も増えています。
例えば明治安田生命「年金かけはし」では、据置期間は1~5年の設定となっています。住友生命「たのしみワンダフル」のように年金を一回で全額受け取れる方法もありますが、その分、利率が低くなり払い込んだ金額より下回ることもあるので注意が必要です。また、契約時の年齢によっては据置期間を設定できないこともあります。JA年金共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」円建ては、予定利率が変動しますが、85歳まで加入でき、毎月の保険料が3000円からと少額からでも始められるので、途中解約が心配な方でも気軽にスタートできることが特徴です。
保険加入が面倒なら、今から月5万円節約して貯金にまわすことです。もし5万円が無理なら、25年もあるので月2万円ずつでも貯められると25年もあるので600万円になり、60歳になってから自分の貯金口座から10年間5万円ずつ貯金から切り崩すことができます。円建てで10年間という期間限定ですと、支払った保険料よりも多く保険金を受け取れる可能性があります。ただし途中で解約すると損します。保険料払込期間中に解約した場合は、返戻金額はすでに払い込んだ保険料を下回ります。
前出の緑さんは、リストラにあったことが将来の生活費について考えるきっかけになりましたが、なかにはすでに60代後半でも、まだまだ元気だからとアルバイトなどからの収入を生活費としてあてにしている人もいます。歳をとると「保険医療」関連の出費が若いときの1.39倍も増えます。これは、病気をしなくても健康維持・増進のためにビタミン剤や健康食品などの支出が増加するためです。高齢になると病気がちになり、その分、お金を使います。
(2)損害保険の一時金
最近は入院日数が短期化しているのが特徴です。保険特約の入院一時金は2万円から5万円ほどが多いので、10万円以上の保険商品を選ぶことです。
ただでさえ75歳以上になると急に医療費が増加します。そこで怪我や入院などの際の一時金が充分にあれば安心です。私の祖母も足を怪我したことから寝たきりの生活が20年続き、他界しました。高齢者はちょっとつまずいたり、怪我したことから寝たきりになることが多いものです。怪我した時に10~40万円の一時金が受け取れたら、少し余裕のある入院生活が送れます。
例えば、AIG損害保険の「けがの保険(一時金支払い型)」では、50歳から99歳まで、毎月8000円ほどの保険料で、骨折の場合は一時金として10万円、長期入院一時金として20万円ほど受け取れます。怪我だけでなく高齢者に多い熱中症や食中毒も補償されます。
損保ジャパンの障害総合保険「THE ケガの保険」では、69歳まで加入可能で、怪我による通院や日帰り入院、1000日までの入院を対象に補償します。怪我により要介護になった場合も補償され、個人賠償責任保険の補償もあります。「THE ケガの保険(まも~るプラン)」という70歳から89歳までを対象とするプランもあります。
チューリッヒ保険会社「シニア傷害保険チューリッヒ・ケアプラン」は65歳から79歳まで加入でき、100歳まで継続が可能です。月払い990円コースもあり、骨折時には一時金として5万円が受け取れ、また、手術費は最大12万円、家事代行サービス費用も補償してくれます。
介護経験者や外科の医師は口をそろえて「怪我が命取り」だと言います。いつまでも若い気分でダンスクラブなどで飛び跳ねたり、赤信号なのに小走りで横断歩道を渡ろうとして転んだり、台風の時、わざわざ商店街に買い物に出かけて看板が倒れてきて、逃げ遅れて救急車で運ばれたりと、高齢者であるという意識がないために怪我をすることも多いものです。備えあれば患いなしです。
(文=柏木理佳/城西国際大学大学院准教授、生活経済ジャーナリスト)