税金・健康保険・年金・水道…収入減で使える「免除&猶予」リスト!納付後に減免も可能?
新型コロナウイルスの影響で収入が減ってしまって、家計の出費が重く肩にのしかかってきているというご家庭も多いことでしょう。そのため、政府や民間企業では、さまざまな支払いを免除したり猶予したりしています。
「免除」とは、基本的には払わなくてもいいお金。「猶予」とは、後で払わなくてはいけないお金です。中には、猶予だけれども、払えないようなら免除にしてくれるというお金もあります。ただ、今はどのご家庭も家計が土砂降りの状態。「やまない雨はない」と言いますが、いつか雨がやむことを願い、土砂降りの間は免除や猶予を傘代わりにしたらいかがでしょうか。
まずは、「国や地方自治体に申請するお金」から見ていきましょう。
国税の納付には手厚い「特例猶予」が
新型コロナ禍で事業の継続や生活が困難になっているという人は、納税期限から6カ月以内に税務署に申請すれば、最大1年間、国に収める税金を猶予してもらうことができます。対象となるのは、所得税、消費税、法人税、相続税、贈与税など、国税で扱うほぼすべての項目になります。
ただし、猶予を受けるには国税以外に滞納がないことが条件です。また、資金がある人の場合は、持っている資金に応じて分割納付になる場合もあります。
国税の猶予の申請が認められれば、原則として1年間は税金の支払いを先送りすることができます。ただし、多少の延滞税は課されます。通常の延滞税は年8.9%ですが、これが年1.6%になります。この通常の猶予は、かなり幅広い人に認められていますが、新型コロナの影響で収入が落ち込んで生活の維持が困難になっている人に対しては、さらに手厚い特例が設けられています。
2020年2月1日から2021年1月31日に納付期限が来る国税については、2020年2月以降に1カ月以上、前年同期に比べて2割ほど事業収入が減っていて税金を一度に全額納めることが難しい場合、所轄の税務署に申請すれば、納付期限から1年間、延滞税が全額免除されます(新型コロナ税特法第3条)。また、通常は担保などがあるとそれを示さなくてはなりませんが、今回の特例では必要ありません。
詳しくは、最寄りの税務署に問い合わせてみてください。国税局の猶予相談センターの電話番号は下記で、電話料は無料です。
地方税も分割払いや支払猶予が可能に
国税だけでなく地方税も、新型コロナで収入が大幅に減って生活が苦しくなった人のために、税金の分割払いや支払猶予を行っています。対象となるのは、住民税、事業税、地方消費税、自動車税など。
地方税の優遇の対象となる税金は、2020年2月1日から2021年1月31日の間に納付期限が来るもので、向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど、申請する人の事情が状況によって判断されます。これらのうち、すでに納期が過ぎている未納の地方税についても、さかのぼって猶予の特例を受けることが可能です。詳しくは、最寄りの市区町村の税金の窓口に問い合わせてください。
国民健康保険料も収入減で減免を利用できる
会社で健康保険に加入している人以外は、病気やけがに備えて国民健康保険に加入しなくてはならないことになっています。日本は国民皆保険なので、会社で健康保険に入るか、自治体などの健康保険に入って、みんなが保険料を払わなくてはなりません。保険料を払わないままでいると、最悪の場合は医療費負担が10割になったり、悪質だと思われれば財産を差し押さえられたりすることもあります。
ただ、新型コロナの影響で収入が激減し、保険料を支払えないという人もいることでしょう。国民健康保険については、特別な理由がある人に対しては、国民健康保険法第77条で市区町村及び国民健康保険組合が各自の判断で保険料の減免ができるようになっています。
そこで政府からは、新型コロナの影響で収入が減った人に対しては減免をするように要請し、財政支援もするという通達が出ています。また、すでに保険料を収めてしまった人も、新型コロナの影響で収入が激減しているのに、やむをえない事情で減免を申請できなかった場合には、さかのぼって減免してほしい旨の通達も出されていますから、もし該当する場合は、無保険になる前に各自治体の窓口で相談してみましょう。
国民年金保険料には臨時の特例免除
2020年5月1日から、新型コロナ禍で国民年金保険料の納付が困難になった人については、臨時の特例免除申請の受付手続きが開始されています。対象は、2020年2月以降に新型コロナ禍で収入が減少した人。また、単に収入が減少しただけでなく、今年の所得の見込みが現在の国民年金保険料免除に該当する水準になっていることです。
現在の国民年金保険料免除の基準は、下記の表のような収入になっています。
そもそも、国民年金には所得に応じた保険料免除制度があり、免除を申請して承認されれば、年金を払っていなくても、将来、通常もらえる年金額の半分くらいはもらうことができます。また、遺族年金や障害年金の対象にもなるので、残された家族の生活費や自分が病気やケガで働けなくなったときなどに保障が受けられます。特に、うつ病など精神的な病の場合には長期の治療が必要となることもありますから、障害年金が使えると助かります。
免除には4段階あり、単身世帯なら全額免除は年収122万円以下、4分の3免除は年収158万円以下、半額免除は年収227万円以下、4分の1免除は年収296万円以下。2人世帯、4人世帯でも、年収に合わせてそれぞれ免除が使えます。
該当する人は、免除制度が使えないか、年金ダイヤル(0570-05-1165または03-6700-1165)で聞いてみましょう。
水道料金を免除する自治体が増加
水は新型コロナ対策と切っても切れないもので、外から帰ったら手洗い、うがいを必ずしなくてはなりません。また、シャワーも浴びる、洗濯もするで、水の使用量を抑えることは難しいでしょう。
そのため、水道料金が払えないと困るのですが、水道は自治体が管理しているので、料金が払えないからといって、すぐに止められてしまうものではありません。料金が払えなくなったとしても、止められるまでに2~4カ月くらいの猶予があります。
さらに、新型コロナの影響から住民を守るために、水道料金の一部もしくは全部を免除するという自治体が増えています。すでに多くの自治体が水道料金の免除に着手していて、愛知県刈谷市では、地区にもよりますが、3月から7月の水道の基本料金及び基本使用料を対象に免除を公表しました。
その後、大阪府堺市なども減額を公表。埼玉県所沢市は、6月から7月に検針する2カ月分の水道料金を全額免除するという太っ腹。埼玉県加須市も、全4万9000戸を対象に5~8月の請求分の基本料金を免除するなど、免除の方針はかなりの自治体で広がっています。
水道料金については、自治体で決めて徴収しています。ですから、役所に掛け合って首長が決断すれば、減免制度がない自治体でも、なんとか対処してくれる可能性があることは覚えておいたほうがいいでしょう。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)
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