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就活に必要なTOEICが受験できない…抽選で7万人落選、受験料“前払い”で返金2カ月後

文=編集部
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『Getty images』より

 内閣府は17日、2020年4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値を発表した。前期比年率27.8%減で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内外の経済活動が停滞する中、1955年以降の統計で最大の落ち込みとなった。コロナ不況に直面する企業の新年度の新卒採用の見通しは暗く、就職氷河期の再来が強く懸念されている。

 多くの大学生が一つでも採用内定取得に有利な資格をとろうと躍起になっている中で、ビジネス英語の標準規格の一つ英語民間試験「TOEIC」の受験申込が抽選になるという珍事が発生した。つまり、試験を受験する前から選別されてしまったというのだ。

受験倍率4.3倍で試験会場にも行けない

 受験者抽選になったのは一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が主催する「第253回TOEIC Listening & Reading公開テスト」(10月4日実施)。今月5日に受験申込の受付が開始されたが、開始前から受験申込サイトにアクセスが集中して接続が困難になる事象が頻発していた。同協会は「再開の目途が立たない」として受付を一時中止。第252回の受験者募集の際も同様の事例の発生したことから、受験の受付を先着制から抽選制に変更して7日に受付を再開、17日に抽選結果を発表した。

 同協会広報担当者によると、全国の抽選対象者数は約9万9000人、当選者は約2万3000人で当選倍率は4.3倍だったという。その上で同協会は「現在のところ、新型コロナウイルス感染の影響を鑑み、当面の間、抽選方式を継続する予定ですが、今後の申込方式について変更する場合には、改めてご案内させていただきます」としている。

 文部科学省関係者は背景を話す。

「新型コロナウイルス感染症対策のため、試験会場は例年実施より大きく間隔をあける『ソーシャルディスタンス』を確保した座席配置にする必要があります。そのため英検や国連英検、TOEICなど資格検定事業者はどこも会場の確保で苦労しています。会場確保が進まなければ、受験者を削減しなければならず、TOEICの事例のように先着順や抽選で、『受験できる人』を選別しなければなりません。下半期にかけて、例年受験者は増える傾向にあるので、抽選や先着順などの措置を取る事業者が出てもおかしくはない情勢です」

 高校・大学受験にも活用されている漢検(日本漢字能力検定)試験を主催する公益財団法人日本漢字能力検定協会(京都市)も対応に苦慮している。同協会の広報担当者は次のように述べる。

「弊協会では、10月の検定につきましては進学・就職を目指す皆様にとって代えの効かない唯一の機会であるため、特定非営利活動法人全国検定振興機構(全検)が定めるガイドラインに則り、できる限りの対策を講じることで、検定試験実施を決定いたしました。

 受検を希望される皆様にご受検いただけないのは大変心苦しいのですが、安全な検定運営について検討を重ねた結果、現状では先着順での実施とさせていただきました。

 例示してくださいましたTOEICも、当初は先着方式を予定されていましたが、申込受付状況から抽選方式に変更されたと把握しております。弊協会では昨日8月17日(月)0時にインターネット・コンビニエンスストアでの申込受付を開始し、現在も受付中です。

 高校大学受験を控えた中高生や就職を目指す高校生・大学生の皆様にとっては代えの効かない大切な受検機会ですので、協会といたしましても、受検者と近隣地域の皆様の安全を最優先に考えて開催してまいる所存です」

受験料は前払い方式で返金まで1~2カ月

 今回のTOEICの受験抽選に落選した東京都新宿区の私立大学3年の男子生徒は話す。

「9月実施のTOEICは先着順で落とされました。10月実施の今回は申込まで進めたものの、抽選で落選しました。厳しい経済情勢で、東証一部上場企業の採用試験ではTOEICスコア700代中盤以上はないと足切りにあうともっぱらの噂です。自分の英語力が足りなくて思ったスコアを取れないのは仕方がないとは思いますが、足切りの前に足切りに遭うとは思いもよりませんでした。

 もはや運ゲー(編注:プレイヤーの能力ではなく、運要素のみでクリアできるかどうかが決まるゲーム)です。採用試験が始まる来年までに受験できればいいのですが、だめそうなら英検(実用英語技能検定)に切り替えようと思います」

 一方、神奈川県横浜市の国立大3年の女子生徒は今回の抽選の仕様に不快感を訴える。

「今回のTOEICの受験者抽選で最も不審感を抱いたのは、申込時に受験料を支払い、落選したら返金されるというシステムです。運営者の説明によれば、『同一受験者が複数回申込みをすることを避けるための措置』ということですが、返金されるまで1~2カ月かかるそうです。アルバイト先も経営不振でシフトを減らされている中で、何とか捻出した受験料だったので、今回落選して浮いたお金で次の資格に申込みしたいのですが……。心理的にも、経済的にも非常に厳しいです」

 コロナ禍で就職活動も受験も例年通りの対策では太刀打ちできない状況にあるのかもしれない。学生たちの苦難は続く。

(文=編集部)

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