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寺澤有「警察を見れば社会がわかる」

東京ミネルヴァ“破産問題”で問われる「裁判所と弁護士会の責任」防げたはずの武富士支配

文=寺澤 有/ジャーナリスト
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2010年に会社更生手続きを申請し、事実上破綻した武富士。同社からの“人脈”が、今回の「ミネルヴァ法律事務所事件」の大きな原因となった。(写真:ロイター/アフロ)

 2020年6月24日に東京地裁から破産手続き開始決定を受けた「弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所」(以下、東京ミネルヴァ)。負債約51億円のうち約30億円が消費者金融などから返還された過払い金(契約者が利息制限法の上限金利を超えて支払っていた金利)で、本来、依頼者へ引き渡されていなければならないもの。それが「リーガルビジョン」(以下、LV)という広告代理店へ流出していた。

 東京ミネルヴァの川島浩代表弁護士は「週刊新潮」(新潮社)2020年7月9日号のインタビューで次のように話している。

「ミネルヴァは会長(筆者注:兒嶋勝LV会長)の支配下にありました。LVに支払うのは広告費だけでない。ミネルヴァの事務所はLVのグループ会社からの転貸しで、事務所の派遣社員もLVグループからの派遣。その人件費にはじまり、電話やインターネット回線の使用料などもLVグループに支払っていた」

 前回の記事【東京ミネルヴァ法律事務所、破産の裏側…元武富士社員が支配か、法外な広告料の原資は?】で指摘したとおり、LVの前身の「DSC」も同様の手口で法律事務所を支配し、過払い金ビジネスを主導していた。2010年、DSCと取り引きのあった松永晃弁護士(当時、以下同)が月刊誌『紙の爆弾』(鹿砦社)や日本弁護士連合会(以下、日弁連)、東京弁護士会(以下、東弁)に告発した。

 しかし、日弁連、東弁がDSCを「非弁提携」(弁護士以外の者が弁護士の名義を利用して利益を得ること。弁護士法違反)で取り締まることはなかった。そのため、DSC(LV)は営業を続け、今回の東京ミネルヴァの巨額破産を招いた。

元武富士社員らが法律事務所を支配する仕組み

 松永弁護士は「DSCとの契約は公序良俗に反し、無効」(民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と規定)などと主張し、DSCが請求する代金を支払わなかった。そこで、DSCは松永弁護士を相手どり、2100万円余りを支払うよう求める訴訟を東京地裁に提起した。

 訴訟記録に基づき、2009年の出来事をまとめてみる(敬称略)。

【1月15日】松永晃が弁護士登録(東弁所属)。

【4月】松永が菊池公宏(元武富士社員)、木村博(同)、宇田篤雄(同)から順次接触を受ける。松永は宇田らの支援で法律事務所を開設することを決める。

【5月18日】宇田が出資し、人材派遣会社「KKサポート」が設立される。代表取締役が木村、取締役が宇田、菊池。

【6月2日】松永が宇田の紹介で兒嶋勝(元武富士社員)と会う。松永は兒嶋に法律事務所の広告を依頼する。

【6月17日】松永が「つくし法律事務所」を開設。事務長は菊池、事務員は木村と菊池の妻で、いずれもKKサポートからの派遣。

【9月14日】松永が兒嶋と共につくし法律事務所を訪れた司法書士と会い、「(司法書士が扱えない)過払い金が140万円を超える依頼者を紹介するので、利益を分配しよう」と非弁提携を持ちかけられるが、拒否する。

【10月21日】松永は非弁提携を理由にKKサポートとの契約を解除し、木村と菊池夫妻をつくし法律事務所から退去させる。さらに兒嶋に対しても、同様の理由でつくし法律事務所の広告を中止させる。

 訴訟では、KKサポート代表取締役の木村氏の証人尋問が行われた。原告(DSC)の弁護士が「この会社(KKサポート)はなんのための会社ですか」と質問すると、木村氏は「これは、つくし法律事務所を運営するというか、サポートするための目的会社というんでしょうか」と証言した。

 元武富士社員らが金も人も広告も用意して、つくし法律事務所が開設された。彼らと松永弁護士と、どちらに主導権があったのかは明らかだ。

KKサポートは「非弁提携行為の疑いがある」

 以上の経緯があったにもかかわらず、2012年2月9日、東京地裁(井出弘隆裁判官)は原告の請求を全額認める判決を言い渡した。以下、判決文から引用する。

〈KKサポートの被告事務所に対する開業支援の内容は、KKサポートにおいて、その開業費用や運営費用を負担するというものであり、かかる費用負担が立替金や貸金としてされたものであることを示す書面等も取り交わされていないことをふまえると、上記開業支援はそのような性質のものではなく、KKサポートにおいて、かかる費用を含めた報酬を後に被告事務所の弁護士報酬から回収することを予定したものとみられる〉

〈被告自身、上記のような開業支援を受けることが非弁提携行為の疑いがあるものであり、弁護士法の規定に抵触するおそれがあることを了解しながら、KKサポートから開業支援を受けていた〉

〈KKサポートとしては被告の協力がない限り非弁行為を行うことができない〉

〈原告代表者が被告に紹介した司法書士が被告に非弁提携行為を申し出たという事実があったことがうかがわれるものの、原告代表者は、上記の司法書士を紹介したのみであり、かかる非弁提携行為にどの程度関わっていたか定かではなく、これをもって、原告自身が報酬を目的として事件を周旋するなどの非弁行為を行ったということはできない〉

〈原告が本件広告委託契約を締結した当時、KKサポートの被告事務所に対する開業支援の内容が前記のとおり非弁提携行為の疑いがあるものであると知りながら、宇田らと通謀し、これに関与していたと認めるに足りる確たる証拠もない〉

〈以上の事情によれば、本件広告委託契約は、原告において非弁行為を行うことを目的として締結されたものとはいえないから、公序良俗に反するとはいえず、無効とはならないというべきである〉

 つまり東京地裁は、KKサポートには「非弁提携行為の疑いがある」としながらも、DSCには「これに関与していたと認めるに足りる確たる証拠もない」として、公序良俗違反を認めなかったのだ。

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