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高橋篤史「経済禁忌録」

秋元司議員・IR汚職事件、うごめく怪しすぎる人脈と金脈…カギ握る“第5の男”の存在

文=高橋篤史/ジャーナリスト
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秋元司衆議院議員のオフィシャルサイトより

 IR(統合型リゾート)汚職に絡む証人買収事件で8月28日、逮捕状発布後に行方をくらましていた松浦大助容疑者が東京地検特捜部によってついに逮捕された。証人買収を発案したとされる秋元司衆議院議員、それを受けて贈賄側証人に働きかけを行っていた淡路明人、佐藤文彦、宮武和寛の各被告に続く「第5の男」――。ここ数年、松浦容疑者は新興仕手グループの頭目として株式市場でひそかに注目され続けてきた人物だった。

 今回の証人買収事件には2つのルートがあったとされる。

 1つは贈賄側の中国企業500ドットコムの元顧問でコンサルタント業などを行っていた紺野昌彦被告に対するもの。淡路、佐藤両被告は、秋元議員に賄賂を渡したとの捜査段階における供述について公判で一転して取り消すよう働きかけていたとされる。紺野被告は先の初公判において、目の前で現金2000万円を見せられ、さらに1000万円の成功報酬を示唆された旨を証言している。

 もう1つは紺野被告の学生時代からの知人で2017年まで浦添市議を務め、落選後に同じく500ドットコムの顧問となった仲里勝憲被告に対するものだ。「弁護士費用を見る」「一生面倒を見る」――。仲里被告はそう持ち掛けられ、さらに500万円ほどの現金らしきものを見せられたという。その際、那覇市内の面談場所に宮武被告とともに同席していたのが松浦容疑者だったとされる。

 あまりに大胆不敵であけすけな証人買収行為だが、これに松浦容疑者が関わっていたのはある点、意外である。というのも、松浦容疑者は新興仕手グループの頭目と目されてきたものの、自らは関係企業群の役員に就くことはなく、決して表には出ず背後から影響力を行使してきた人物と見られていたからだ。本人はこれまで足跡を残さぬよう細心の注意を払ってきたはずである。

松浦大助容疑者の「ビジネスパートナー」たち

 松浦容疑者が株式市場で注目され始めたのは2010年前後のことだ。実父は1980年代に高砂熱学工業に対する恐喝事件を起こし、その後は政治団体「法曹政治連盟」を主宰して独特の活動を行い、それとともに事件や騒動、トラブルの陰でたびたび名前が囁かれてきた朝堂院大覚こと松浦良右氏。関係企業群が東京・新橋の雑居ビルに入っていることから関係者の間では「新橋グループ」と呼ばれることもある。六本木界隈のクラブを手掛けるなど、グループはこれまで幅広い利権に首を突っ込んできた形跡が窺える。

 資金力を獲得したきっかけは、和牛預託商法で消費者から数千億円を集めた安愚楽牧場(2011年倒産)の飼料利権に食い込んでいたこととされる。それを元手に上場株への投資に手を広げたようだ。最初に関与先として注目されたのはリミックスポイント。同社では突如、「ダイマジン・グローバル」なる香港法人が大株主に登場。そこの佐戸康高代表は取締役経営企画室長としてリミックスポイントに入社し経営の中枢に関与を始めた。同じ時期に佐戸代表は安愚楽牧場が倒産後に開いた債権者集会において前触れなく同社執行役員として登場、体よく負債だけを整理して会社を延命させようとしたフシがある。

 その佐戸代表が深く関与していたのが3年前に摘発されたストリーム株の相場操縦事件だ。2014年、佐戸代表は複数の仕手筋と示し合わせてなれ合い売買を繰り返しストリームの株価をつり上げていた罪で検挙された(今年3月に懲役3年執行猶予5年などの一審判決、控訴中)。この事件の公判における本人の証言によれば、佐戸被告は遅くとも2003年頃には松浦容疑者と親しい関係にあったようだ。佐戸被告は松浦容疑者のことを「ビジネスパートナー」と表現している。

 ストリーム事件では不起訴となったものの、もう1人、松浦容疑者と近い人物が逮捕されている。その人物は早稲田大学中退後、前述した法曹政治連盟に入った変わり種で、過去、エルシーエーホールディングス(2015年に上場廃止)に深く関与したことが知られている。佐戸被告とともに松浦容疑者を支えるグループの番頭格と目されてきた。こうしたことから、ストリーム事件の捜査が始まった当初は松浦容疑者が捜査線上に浮かぶ可能性さえ取り沙汰されたほどだった。

 松浦容疑者を頭目とするグループの特徴は、中国人経営者のネットワークに深く根を張ってきた点だ。ストリームを創業した劉海涛・元社長は佐戸被告の会社「SDI」から多額の資金を借りるなどし、相場操縦においては保有株を「タネ玉」として提供していた。劉元社長はストリーム事件の強制捜査が始まった直後の2016年12月に羽田空港から出国、そのまま日本には戻っていない。ある意味、事件の中心人物だったといえる。

 その劉元社長と親しいSJI(現・カイカ)創業者の李堅・元社長もキーマンといえる存在だ。李元社長はSJIの上場直後から株式投資のため金融ブローカー筋から数十億円規模のカネを借りまくり、その返済のため架空取引に手を染め、挙げ句、2014年10月に会社を追われた。それに先立つ2008年暮れ、李元社長は「マルマーレ」なる会社を都内に設立しているが、同社の取締役には佐戸被告も名を連ねていた。それほどグループとは古い関係ということだ。

 SJIで資金繰りのための架空取引を重ねていた李元社長は2013年初頭、ある有力経営者に接近する。ユニバーサルエンターテインメントの創業者、岡田和生氏である。SJIの香港法人は岡田氏の資産管理会社から18億円を借り入れたが、その返済をめぐり翌年10月、複雑なスキームが合意された。そこに突如登場したのが先述したダイマジン・グローバルである。怪しげな金融取引をめぐり李元社長は松浦容疑者の右腕である佐戸被告と一蓮托生の関係にあったということだ。

 さらにその翌月、李元社長は岡田氏から20億円を借りている。李元社長が英領バージン諸島に設立した「ゴールドラック・テック」なるペーパーカンパニーに流れ込んだ20億円が、その後どこに行ったかはわからない。最終的に空いた穴は2015年3月にユニバーサルエンターテインメントが肩代わりした。3年後に勃発した岡田氏追放劇の知られざる核心はまさにそこにあった。その後、李元社長が例の新橋の雑居ビルに出入りする姿が目撃されていることから、密接な関係はなおも続いているものと見られている。

政治家との接点

 これらさまざまな事件、トラブルの背後でその存在が注目されてきた松浦容疑者だが、かねてから政治家に接近を図ってきた形跡も窺える。2005年10月、「コッルツィオーネ」という有限会社が松浦容疑者を代表取締役にグループの拠点ビルで設立された。目的欄の筆頭に記されているのは経営コンサルティング業だ。取締役に名を連ねたのはその5年前の衆議院選挙で自民党から出て落選した元東京都議。もう1人の取締役も4年前に引退した公明党の元都議だった。

 そんな中、秋元議員との接点が確認できるのは2004年6月のことだ。この時、秋元議員と松浦容疑者はそろって「アフリカ開発協会」という社団法人の理事に就任している。秋元議員が参議院選挙に自民党候補として比例区から出馬し初当選を果たす前の月のことである。

 それ以前、秋元議員は小林興起衆議院議員(当時)の秘書を長く務めていた。その小林議員は1998年から同協会の理事を務めていたから、秋元議員はその線で関わりを持った可能性が高い。他方、松浦容疑者が理事となった経緯はよくわからないが、現在、例の新橋の雑居ビルには同協会の「分室」が入居しているとの案内板が掲げられているから、かなり深い関係にあることは間違いない。もっとも活動の有無は不明である。

東レ口利き騒動

 昨年、秋元議員が東レに対し口利きまがいの電話をしていた騒動があった。前年11月に「エム・アールカンパニー」という会社が行った1000万円の融資に関係する電話だったとされる。融資先は東レが保証しているかのような説明を行っており、その履行を求めていた。このエム・アールカンパニーなる会社が入居するのは例の新橋の雑居ビル。同社の代表取締役は佐戸被告とともに先述のSDIで代表取締役を務めている。騒動の裏には松浦容疑者の影がちらついていた。

 今回、一緒に証人買収を持ち掛けていた宮武被告は沖縄の地で松浦容疑者との接点が垣間見える。関西出身の同被告は2014年、浦添市内で整骨院を運営する会社の代表取締役に就任。その会社が入居する建物を前まで所有していた柔道整復師関連の社団法人は一時期、佐戸被告と関係が深い企業群とともに東京・芝公園のビルに存在していた。その社団法人から寄附により建物を取得した学校法人で理事長を務める人物は松浦容疑者と縁戚関係にある可能性が高い。

 関係者によると、松浦容疑者は家族を沖縄に住まわせており、本人も沖縄と東京との間を頻繁に往復していたようだ。そうした関係から宮武被告とともに那覇市内で仲里被告に面会したものと思われる。関係者は「カジノについては、本体に入ることができないので、監視システムなど周辺ビジネスで入ることを狙っていたようだ」とも話す。

 松浦容疑者をめぐる人脈は複雑に入り組んでおり全容把握がかなり難しいが、ネットワークに連なる40代の男性はある金銭トラブルに際し相手の上場不動産会社顧問に対し昨年7月、LINEでこんなメッセージを送りつけている。

「本件は私も親族や私の父の会社の関連部署に相談済みです。(父には強い叱責を受けましたが…)/その部署を動かすには父の許可が必要なので恥を偲んで頼みました/●●さんには私の一族の事業全体の一部の話しか出来ておりません/ただの一介の財務コンサルが様々な方とこうしてお話し出来るのを不思議に思われた事はありませんでしたか…?」(●●は送信先の実名)

 そして4日後にはこう要求している。

「今日必ず新橋事務所にお越し下さい」

 男性は先述した李元社長関係のマルマーレや宮武被告の整骨院運営会社で監査役を務めたことがある。リミックスポイントにも関係していた。文面にある「関連部署」や「一族」が具体的に何を指すのかはわからない。ただ、えも言われぬ不気味さが強烈に伝わってくることだけは確かだ。

(文=高橋篤史/ジャーナリスト)

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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