
コロナ禍の影響による収入減で住宅ローン返済が困難になっている人が増えている。年金生活に入った高齢者は影響を受けていないと思われがちだが、「そんなことはありません。定年後も残った住宅ローンを支払うためには年金だけでは足らず、アルバイトをしている高齢者が少なくないのです」と、「NPO法人住宅ローン問題支援ネット」の代表理事を務める高橋愛子さんは語る。コロナ禍でアルバイトを打ち切られると、ローンの支払いに窮してしまうのだ。
実際、コロナ禍にかかわらず、高橋さんのもとに相談にやってくるのは高齢者が多いという。転職による減俸や退職金の大幅減額などによって、定年を過ぎてもローン返済が終わらない高齢者は決して珍しくない。
ローンが払えず、餓死寸前になった人も
Aさん(60代後半男性)は月額13万円のローンが残っている。年金とアルバイトを合わせても月額14万円しか収入がないため、生活に行き詰り、高橋さんのもとに相談にやってきたのだという。残債は300万円なので、現役世代なら、がんばればなんとかなりそうなのだが、年金生活者であるために、その300万円を完済できる手立てがない。
また、高橋さんは住宅ローンが払えず、餓死寸前にまでなったBさん(60代後半男性)を助けたことがある。「室内で犬が吠えているのだけれども、明かりがつかないし、電気のメーターも止まっている。様子を見てほしい」という隣人の依頼を受けて、Bさん宅のドアをノックすると、真っ暗な部屋から幽霊のように生気のない男性が現れた。
聞けば、仕事を失い、住宅ローンも光熱費も支払えず、電気もガスも止まり、食べるものも買えない状態なのだという。孤独と生活苦から、セルフネグレクト状態になっていた。ドッグフードだけは大袋の買い置きがあったために犬は元気だった。犬が吠えなかったら、数日後には餓死していたのかもしれない。
電気・ガス・水道が止まってしまうまで追い込まれるようなケースは決して珍しくないそうだ。水道はなかなか止まらないが、ガスは一番早くて、「水風呂に入っている」という話を聞くこともある。
高齢者ならではの思い込みが自身を追い詰める
「『今の時代に、こんなことがあるなんて……!』と驚くことがあります」と、高橋さんは語る。若いローン破綻者に、このようなケースはほとんどない。
「高齢者ならではの特徴なのです」