不動産投資“アービトラージ”で儲ける方法…ファミリー物件、古い戸建、再建築不可物件
こんにちは! 不動産鑑定士、不動産投資コンサルタントの浅井佐知子です。
皆さまは、アービトラージという言葉を聞いたことがありますか? もともとは株やFXの取引で使われていますが、裁定取引ともいい、金利差や価格差を利用して売買し、利ざやを稼ぐ取引のことです。
仮想通貨で説明すると理解しやすいです。仮想通貨のアービトラージは、取引所の間で生じる価格差を利用して儲けを得ます。価格が安い取引所で購入し、価格の高い取引所で売却することによって、差額分の儲けを得ることができます。市場のゆがみを見つけてリスクを低く抑えつつ、確実に利益を得る方法です。
不動産にも以下のようなアービトラージがあります。市場のゆがみに着目して、上手に利益を出す方法をお伝えします。
(1)賃借人付きファミリーマンション、もしくは賃借人付き戸建を買って、退去後、実需として売却。
(2)全空のアパート、古い戸建を購入してリフォームし、満室にして売却する。
(3)再建築不可物件を購入後、再建築可にする。
(1)賃借人付きファミリーマンション、もしくは賃借人付き戸建を買って、退去後、実需として売却
不動産投資の利回りを考えた場合、ファミリーマンションよりも、1Kやワンルームのほうが高い利回りを達成できます。例えば6坪、1Kの賃料が坪1万円で総額6万円だとすると、20坪の3LDKの賃料は、1万円×20坪=20万円とはなりません。単価と総額との関係で、総額が高くなると単価は低くなるのです。したがってこのケースでは、8,000円×20坪=16万円というようになります。
この例からわかるように、「ファミリー物件は利回りが低くなるため、投資として考えた場合は不適格」であるといえます。ということは、なんらかの理由で貸していた自宅をすぐに売却したい場合は、賃借人がいるので自宅を探している人は買いません。投資用としても先に述べたように利回りが低くなります。したがって、実需としても投資用としても不適格なのです。
こういう物件は本来、定期借家契約で契約しておいて、契約期間満了とともに終了して実需として売るか、今借りている人に買ってもらうのが一番高く売却できます。ちなみに「定期借家契約」というのは、期間満了とともに終了するような契約のことをいいます。通常の借家契約(普通借家契約)は、借主保護の立場から、貸主からの解約や更新の拒絶は、正当な事由(貸主がそこに住む必要がある、売らなければならない理由など)がない限りできません。
このような賃借人がいるファミリー物件は、「すぐに住めない」「利回りが低い」という市場のゆがみから、安くなりやすいのです。しばらくは利回りが低いけれど、入居者が出たらリフォームしてマイホームを探している人に高く売る。という戦略を取ることができます。この方法で大きくなった会社が「スターマイカ」であることからスターマイカ方式とも言われています。
スターマイカ方式はどちらかというと、都心のマンションや総額が高い戸建に当てはまります。例えば地方の300万円くらいの安い戸建だと、オーナーチェンジ物件として借主がいたほうが高く売れることも多いです。
(2)全空のアパート、古い戸建を購入してリフォームし、満室にして売却する。
入居者がまったくいない全空のアパートは買い手がなかなかつきません。全部屋空室の物件を買うのは、空室が埋まるかどうかもわからないため、不動産投資の上級者でない限り、精神的ハードルが高いといえます。また融資が付きづらいという現実的な問題もあります。したがって、全空のアパートを買うことができるのは、「入居者を決めるスキルを持っていて、現金で支払うことができる人」だけなのです。
買える人が少ないので売主は買主の言い値で売らざるを得ず、値段は安くなってしまいます。こういう物件を買うのはほとんどが転売業者です。転売業者は安く買ってリフォームをし、満室にして個人投資家に売却することで利益を得ています。一般の人がこういう物件を買うには、転売業者が購入する価格よりも少し高い価格を提示する必要があります。地方に行くと築30年程度のものでも、全空のため500万円~600万円で買えるケースもあるので、そういうアパートを現金で購入し、リフォームローンを借りてリフォームして、満室にするのです。
空家が問題となっているように、誰も住んでいない古い戸建は全国、いたるところにあります。そういう戸建を安く購入してリフォームし、入居者を決めて利回り物件と売り出す方法もアービトラージの一つです。実際の例でいうと、110万円で購入した埼玉の戸建を100万円かけてリフォームし、月5万円で貸し出すと、表面利回りは、60万円÷210万円≒28.5%になります。この戸建を5年ほど所有してオーナーチェンジ物件として売り出すのです。表面利回り12%で売却すると、60万円÷12%=500万円、500万円での売却となり、500万円-210万円=290万円の利益となります(簡略化のため、仲介手数料、税金は考慮していません)。
(3)再建築不可物件を購入後、再建築可にする。
道路との関係で建物を建て替えることができない物件というのがあります。例えば以下の図のAは前面道路に2m接していません。建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していないと、建築はできません。また、Bのように道路にまったく接していない土地に建っている建物や、Cのように建築基準法上の道路ではない、例えば「通路」などに面している建物も建て替えはできません。建物が建てられたときは建築基準法がまだ制定されていなかったり、建築後に何らかの理由で道路に接しなくなった土地というのがあります。このままでは再建築ができないため、不動産の価格も低くなります。
このような不動産を安い値段で買います。そして例えばAの土地の場合は左右の隣接地のほうに土地を少し売ってくれないかを打診します。もし売却に応じてくれれば建て替えができるようになり、再建築不可から再建築可になることで、価格は大きく上昇します。Bの土地の場合も同じように前面の土地を買うことで再建築可能になります。
Cの土地は「建築基準法第43条第2項第2号」の許可がでれば、建物を建てることができます。この規定は、「道路でなくても建築物の条件や敷地の周囲の状況によって行政の同意を得られた場合、建築することができる」というものです。前面の通路が道路の代わりとして許可を得られれば建築可能なのです。
いずれも、現時点では建物の建て替えが見込めず、価格は周辺の建て替えができる不動産の相場よりも安くなりますが、建て替えの難易度によって価格に差が出てきます。難易度は、B>A>Cの順に高くなり、価格はC<A<Bの順に安くなります。Bの価格が一番安いということです。
まとめ
市場のゆがみを見つけてリスクを低く抑えつつ、確実に利益を得る。いわゆる不動産のアービトラージとしては、比較的簡単にできるものとして以下の3つがあります。
(1)賃借人付きファミリーマンション、もしくは賃借人付き戸建を買って、退去後、実需として売却。
(2)全空のアパート、古い戸建を購入してリフォームし、満室にして売却する。
(3)再建築不可物件を購入後、再建築可にする。
このような不動産を見つけて大きな利益を出すことが可能となります。
上級者向けのアービトラージとしては、
・借地権者が底地を買い取り完全所有権にする。または、底地の所有者が借地権を買い取って完全所有権にする。
・土壌汚染の土地を格安で買い取り、汚染処理をして高く売る。
などが考えられます。