マイホームを買うなら来年まで待つのが得策?200万円補助や520万円ローン減税も?
マイホームの取得を考えていた人たちも、コロナ禍の長期化でさまざまな影響を受けています。分譲住宅や中古住宅などが売れなくなっているので、有利な環境で買えそうだから、いまのうち買っておいたほうがいいかもしれないと考える人がいれば、コロナ禍が長引けば、住宅価格暴落の可能性もあるので、それまで待ったほうが得策とみる人もいるでしょう。
さて、マイホームの取得、どうするのがいいのでしょうか。
24%の人がマイホーム計画を中断している
リクルート住まいカンパニーでは、コロナ禍の長期化がマイホーム取得行動にどんな影響を与えているのかを調査しています。その結果が図表1です。
複数回答で、最も多かったのは「影響はない」とする人の34%でしたが、さまざまな形で影響ありとする人も多いようです。「検討を休止した、いったん様子見にした」という人が24%で、「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた」とする人も23%います。新型コロナウイルス感染症の流行が長期化すれば、仕事や収入への不安が強まりますし、価格も下がるかもしれない、しばらくは成り行きを見極めたほうがいいだろう、それに現地見学など、いまは“三密“を避けたほうが無難、とする人が多いわけです。
反対に、「住まい探しの後押しになった」が16%、「住まい探しを始めるきっかけになった」とする人も15%います。在宅勤務の定着で、会社への時間距離を気にする必要がなくなったので、遠くてもいいから落ち着いて仕事ができる住まいに引っ越したほうがいいのではないかなどと考える人もいるわけです。
9月末には21年度予算要求や税制要望が出揃う
この先の住宅市況がどうなるのか、なかなか読みきれません。「コロナ禍の長期化で需要が減退、マンションなどの暴落が始まるだろう」とする専門家がいれば、「いやいやそんなことはない、日本人の持家願望は強いし、分譲会社もいまは大手が中心なので資金力があり、多少売れなくてもあわてて値引きすることはない、だからマンション市場は下がることはない」とする専門家もいます。
どちらに動くのかは、もう少し市場の動向を見極める必要がありそうですが、注目しておきたいのが、来年度の国の予算編成と税制動向です。
例年、翌年度の予算の編成、税制に関しては、8月末に各省の概算要求・要望が出揃うのですが、21年度に関しては、新型コロナウイルス感染症への対応を最優先という事情から、9月末まで延びる方向ですが、その概算要求、税制改正要望に、どんな住宅施策が盛り込まれるかが気になるところです。
年末か年始かで400万円以上も控除額が変わったことも
住宅関連予算や税制動向は、マイホームの取得に大きな影響を与えます。古い話で恐縮ですが、1990年代のバブル崩壊時、景気を刺激するためにローン減税の大幅な拡充が実施されました。それまで10年間で最高160万円だった控除額が、99年度から15年間で587.5万円に拡大されたのです。
それを知らずに98年中に入居してしまった人は160万円の控除ですが、拡充策を知っている人は入居を99年に延ばして、587.5万円もらうことができました。「知っている」「知らない」でなんと、400万円以上の差が出てしまったわけです。
今回はそこまで極端な違いにはならないとみられますが、コロナ禍の長期化を受けて、住宅投資を促進するために、さまざまな積極策が打ち出されることは間違いないでしょう。それらが出揃うのを待った上で損得計算を判断、それから行動を起こしても遅くないかもしれません。
現実には、9月末の各省の予算概算要求、税制改正要望の決定によってほぼ21年度の施策が固まります。それを見極めてから動き出してもいいのではないかということです。
最大200万円相当の新住宅ポイント制度創設も
そのひとつの参考になるのが、住宅生産団体連合会(住団連)が国土交通省などに提出した要望書です。コロナ禍で国民の住宅取得意欲が低下、このままでは住宅投資が減少し、日本経済にも悪影響を与えるので、積極的な住宅取得支援策の実施を要望しています。それも極めて厳しい環境を打破するためには、「かつてない規模・内容」の施策が必要と、強い決意で要望しています。
もちろん、要望がすべて実現するとは限りませんが、19年度の消費税引上げに対応して実施された住宅取得支援策については、住団連などの業界の要望に沿う形で住宅ローン減税拡充、次世代住宅ポイント制度の創設などが実施された経緯があります。ましてやいまは、コロナ禍で政府はこれまでにない積極的な対策をとっていますから、かなり実現性が高いのではないかとみられます。
具体的な要望は、図表2にある6点ですが、目玉はなんといっても、最大200万円相当のポイントを付与する「(仮称)新しい生活様式ポイント制度の創設」です。
賃貸住宅やリフォームもポイントの対象に
これまでにも、住宅に関するポイント制度としては、「住宅ポイント」「住宅エコポイント」「次世代住宅ポイント」などが実施されてきましたが、付与ポイントは30万ポイント、60万ポイントなどが上限でした。
それに対して、今回の要望では最大200万ポイントとしています。1ポイントは1円ですから、実現すれば200万円相当のポイントが付与されることになり、かなり大きなインパクトが期待されます。
対象となるのは住宅(貸家を含む)の取得・リフォームで、即時交換のほか、電子ポイント、商品券などによる付与が挙げられています。貸家、賃貸住宅も対象になれば、このところ落込みが激しい賃貸住宅市場の活性化にもつながりそうです。
即時交換で住宅設備機器などの設置も可能に
具体的には、(1)テレワーク環境、(2)家で過ごす時間の長時間化に対応した居心地良さ、(3)災害時の自立的継続居住性(レジリエンス性)、(4)在宅診療、(5)感染が疑われる家族とともに居住できる環境――などを実現するためにかかる費用が対象としています。
ウィズコロナ時代の「新しい生活様式」に対応するために実施する住宅建設・取得、リフォームなどに対してポイントを付与することを想定しています。住宅を取得する人などがポイントを受け取るのではなく、テレワーク環境を整えるための設備などを追加で住宅メーカーなどに発注、その代金分のポイントは住宅メーカーなどが受け取る形になる、即時交換もOKとしています。これなら、住宅メーカーなども売上げ拡大につながるので、積極的な制度の活用を働きかけるはずですから、より大きな効果が期待できます。
ローン減税は13年間で最大520万円に拡充要望
第二の住宅ローン減税の拡充に関しては、現在の控除期間は原則10年間で、控除額は年末ローン残高(一般住宅は上限4000万円)の1%ですから、年間では4000万円の1%の40万円までで、10年間では最大400万円です。
それが、19年10月の消費税増税にともなって、控除期間が暫定的に13年に延長されていますが、それを隙間なく継続するとともに、11年目以降の控除率も1%とすることで、現在の控除額よりは多くなることを目指しています。
現在の暫定的な拡充では、11~13年目の3年間の控除額の上限は80万円で、10年目までの400万円と合わせて、13年間の最大控除額は480万円ですが、住団連の要望では、控除期間13年を恒常化し、13年間ずっと控除率1%とすることを求めています。つまり、実現すれば、年間40万円が13年間で、最大控除額は10年間で520万円に増えることになります。13年間で最大480万円が520万円になるわけです
補助要件を満たすすべての住宅にZEH補助金を
次に、ZEH(ゼロエネルギーハウス)補助金に関しては具体的な数字は出されていませんが、「要件を満たす全てに補助できる予算の確保」を求めています。また、第一の「(仮称)新しい生活様式ポイント制度」との併用を可能とすることも要望しています。
通常、国の補助金などは、ひとつの住宅に併用できないことが多いのですが、併用をOKとして、メリット感を高めてこそ需要拡大につながるということでしょう。
第四の住宅取得資金等に関する贈与税の非課税枠は、3000万円とすることを求めています。20年3月末までは3000万円だったのが、4月以降は1500万円に減少しています。それを元に戻し、当分の間継続することを要望しています。
そのほか、中小企業の支援策や行政手続きの効率化なども求めています。
第三次補正か来年度予算に盛り込みたい意向
新型コロナウイルス感染症対策では、すでに20年度の第二次補正予算まで成立して実行されていますが、コロナ禍が想定以上に長引き、経済の回復が遅れた場合には、第三次補正ということもあるのかもしれませんが、そのときにはこれらの要望を取り入れてもらいたい考えです。そうでなくても、この8月に本格化する21年度予算の編成に当たって、6つの要望を盛り込むように、国土交通省などに強力に働きかけていきたい意向です。
先にも触れたように、21年度の予算編成、税制改正の各省の要望は9月末にまとまる見込みです。ここで、採択されれば、12月末の与党の予算案、税制改正案につながり、21年3月に予算案や税制改正案が成立すれば、通常は1月に遡って適用されるので、そこに向けてマイホーム取得計画を進めておくのがいいかもしれません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)