例年なら、マンションや建売住宅などの分譲住宅では、秋の販売シーズンを目指して新商品が続々と発表される時期ですが、今年はコロナ禍もあって例年ほどではありません。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、これまでにない特色を持った物件が数多く登場しています。オンライン内見などを活用して、密にならない範囲で見学などをしてみてはどうでしょうか。
マンションなのに玄関に土間がある?
最近は、注文住宅や建売住宅で玄関に土間を設け、手洗いできるようになっているプランが増えています。その考え方が、新築マンションにも採用されるようなってきました。そのひとつが、野村不動産が2020年11月から神奈川県藤沢市で販売を開始する『プラウド湘南藤沢ガーデン』です。JR東海道本線・小田急江ノ島線の「藤沢」駅から徒歩10分、総戸数93戸の中規模マンションです。
かつての日本の住まいには土間があって、そこでホコリを落とし、荷物を置いてオンからオフに、あるいはオフからオンに気持ちを切り替えたものです。『プラウド湘南藤沢ガーデン』でも、玄関サイドにワイドなフリー空間を確保した「DOMA-STYLE」を設けました。広い玄関スペースには窓が設置されていて、風通しがよく、そのまま洗面所に入ることができます。いまどき、玄関に窓があるマンションはそうありません。これも住まいの換気を重視するウィズコロナ時代ならではでしょう。
この土間から洗面室、バスルームに入ることができるようになっていて、居住スペースに入る前にウィズコロナで不可欠な手洗いができ、場合によってはそのまま服を脱いで、シャワーやお風呂を使うこともできます。玄関周りで、外部からウイルスを持ち込むのをシャットアウトできるようになっているわけです。
「書斎」のあるマンションが増えている
何十年も前の日本の住まいでは、重厚な雰囲気の書斎のある家が少なくありませんでしたが、高度成長時代以降、いつの間にかなくなってしまいました。分譲マンションや建売住宅のほとんどは、女性目線が重視されて、男性の居場所はほとんど意識されていないのが現実ではないでしょうか。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で在宅ワークが増えた結果、自宅内にワークスペースが必要とされ、それが書斎の復活につながっています。先の野村不動産の『プラウド湘南藤沢ガーデン』でも、書斎の付いたプランが設けられていますし、三井不動産レジデンシャルなどが、東京都中央区勝どきで2020年11月から販売を始める予定の『パークタワー勝どきミッド/サウス』もそうです。鉄筋コンクリート造の地上58階建て、45階建てのツインタワーで、総戸数は2786戸というメガマンションです。
ウィズコロナを意識して、3階にはカンファレンスルーム、個人ブース、ビッグテーブルや防音室などを用意、あらゆるテレワークに対応できるように配慮しています。仕事に集中したり、打合せや各種の作業などに対応できます。
専有部でも、在宅勤務の増加に対応して、自宅で仕事に集中できる書斎がついたプランを設定しています。大手不動産会社の新築マンションで本格的な書斎が登場するのは久々のことです。
分譲マンションで初めて「NURO光connect」導入
在宅ワークで仕事に集中し、効率を高めるためには快適なネット環境が欠かせません。その点、日鉄興和不動産などが2020年12月から販売開始予定の『センドリームプロジェクト』は、新築分譲マンションとしては、日本初となる通信速度最大2Gbpsの超高速回線「NURO光connect」を導入します。
ほかにもウィズコロナに対応したさまざまな設備が導入されます。たとえば、壁面が情報スクリーンになる「エントランスホール」には、ソニーPCLが企画した時刻や気象情報と連動した映像コンテンツが流れ、毎日の生活に彩りを添えます。また、ワークスペースや寛ぎの空間として自由に利用できる、最新キッチン家電などを体験できる「マルチラウンジ」、子どもたちが学び・遊び・交流できる「ファミリーラウンジ」などが設置されます。
この『センドリームプロジェクト』、JR相模線「海老名」駅から徒歩5分、小田急小田原線・相鉄本線の「海老名」駅からは徒歩8分の場所に位置します。建物は鉄筋コンクリート造の地上15階建てで、総戸数は1000戸です。神奈川県海老名市という場所柄、58平方メートル台の2LDKが3200万円台からというのも魅力のひとつかもしれません。
分譲マンションでは初の非接触型エレベーター
いろんな対策を進めているマンションですが、一戸建てに比べるとエントランス、エレベーター、共用廊下などで人と人の接触機会が避けられません。そこから、クラスターが発生しないとも限らないので不安ですが、そのひとつであるエレベーターに関して、新たな対策が登場しました。
日鉄興和不動産が2020年4月から販売を開始した『(仮称)横浜市中区翁町二丁目共同住宅』がそれで、神奈川県横浜市中区にあって、鉄筋コンクリート造地上11階建て、総戸数39戸の小規模マンションです。JR根岸線の「関内」駅から徒歩5分という希少性の高い場所にあり、1LDKが中心の単身者向けのマンションになります。
エレベーターには赤外線ビームセンサーを用いた「非接触ボタン」が採用されます。ボタンに手をかざすだけで、エレベーターホールでエレベーターを呼ぶことができ、当時に行き先階も登録できます。これまでの指でタッチする方式と同様に、簡単で安全に利用できます。
また、写真にあるように、エレベーター乗り場のインジゲーターに、混雑度が5段階で表示されるのも安心。それを見れば、「混んでいるから歩いて行こう」などと即座に判断することできます。また、エレベーターには専用クーラーが設置され、シャープの「プラズマクラスター技術」を活用して、エレベーター内の空気を浄化する機能も搭載されています。
家飲みで夫婦の絆を強める「うちdeバル」
一戸建ても負けていません。いえ、一戸建ての延床面積の平均はマンションの専有面積を大きく上回っているので、マンションに比べてさまざまな面でウィズコロナ対応がしやすくなっているといっていいでしょう。
たとえば、積水ハウスが2020年8月に発売をスタートした『ファミリー スイート おうちプレミアム』は、同社の独自工法による大開口、大空間を活かしてさまざまな面でアフターコロナに対応したライフスタイル提案を行っています。「在宅ワーク」「おうちでフィットネス」「うちdeバル」の3つかならなり、積水ハウスの鉄骨戸建て住宅、木造戸建て住宅の全商品で採用できるようになっています。
まず、「在宅ワーク」に関しては、「ファミリー スイート」の大空間を活かして、デスクやテーブルの後ろに家具を置くだけで仕事に集中できるコーナーをつくり出せるようになっています。「おうちでフィットネス」は、なかなか外出できないなかで、運動のモチベーションを継続するには、それにふさわしいスペースの確保が欠かせないということで、大空間のなかに専用や兼用のフィットネススペースを設置できるようになっています。さらに、「うちdeバル」は、気軽に外飲みできないウィズコロナでは、自宅での飲食機会が多くなります。
この「うちdeバル」は、夫婦が楽しく飲むためには演出も重要という考えのもと、照明、家具などで隠れ家的なバーのような非日常的空間を演出することができるようになっています。
リフォームで理想的なテレワーク空間
家を新築したり、マンションを買ったりする予算がない人は、リフォームでウィズコロナに対応する方法もあります。
たとえば、注文住宅やリフォームなどを手がける早稲田ハウスでは、快適な環境で仕事ができ、安心して眠れる空間として『究極の寝室』の販売を行っています。早稲田ハウスは自然素材を活かした家作りやリフォームに定評がありますが、その一環として、写真にあるような『究極の寝室』づくりを行ってきました。(1)床・壁・天井に隈なく炭塗り、(2)床に宮崎県産の天然木オビ杉貼り、(3)壁に天然成分の稚内産天然珪藻土塗り、(4)抗菌効果を有する抗酸化水溶液噴霧――といった4つの天然素材でつくり上げるもので、8年前に開発して以来、180例を設置してきましたが、花粉症などのアレルギーに苦しんでいた人たちから、「ぐっすり眠れるようになった」と好評で、2020年8月にはNHKで取り上げられるほどの評判になりました。
そのため、このほど新築やリフォーム向けに、この『究極の寝室』を、6畳で標準施工価格200万円(税別)で販売を行うことになったそうです。きれいな環境で、仕事に打ち込みたいという人にはうってつけではないでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)