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沖有人「不動産の“常識”を疑え」

新築分譲戸建で欠陥住宅を回避するために本当に必要な事とは?売主=不動産会社の見極め方

文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント
新築分譲戸建で欠陥住宅を回避するために本当に必要な事とは?売主=不動産会社の見極め方の画像1
「gettyimages」より

売主は選びたい

 分譲マンションには売主ごとにブランド名がつく。しかし、分譲戸建の売主はブランド名がない分、やや影が薄い。しかし、売主の重要性に変わりはない。

 そこで、新築分譲戸建を内覧したことがある方500人にアンケートした。その結果、持ち家購入に対する希望条件として、売主の信頼性は「絶対必要」38.6%、「かなり必要」41.6%、合計で80%を超える。これ以外の選択肢である「やや必要」17.0%まで含めると97.2%となる。つまり、裏を返すと「あまり必要ない」と「全く必要ない」と答えた人は2.8%しかいない。

 売主の違いは、売却するときに表れる。戸建ではまだ事例が少ないが、マンションでは大手売主の中古価格は安定している。数多くのマンションデベロッパーの中でも、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産などの財閥系は価格が下がりにくい傾向は強い。これは、施工品質がいいのと、ブランド力がもたらす取引の際の安心感が作用していると考えられる。

売主の信用って何だ?

 売主の信用といっても個人差がある。そこで、先ほどのアンケートでは「新築分譲戸建を購入する際、売主の信頼度として、あなたが重視する度合い」を聞いている。その選択肢は、「とても重視」「なるべく重視」「やや重視」「重視していない」の4つだ。これの上位2つの合計割合は以下のようになる。

1位 施工品質への取り組み姿勢     81.8%

2位 その会社の財務状態の健全さ    78.4%

3位 その会社の認知度         68.0%

4位 その会社の市場シェア       59.8%

5位 その会社の同一市区での実績戸数  58.0%

5位 ネットの評判           58.0%

7位 知り合いの推奨          51.0%

 最も重要視されるのが、施工品質への取り組み姿勢だ。これは、売主に自画自賛されたところで信憑性は生まれない。信頼できる第三者の施工チェックがあると、それが最大の姿勢になる。

 この意味で、国が定めた制度がある。住宅性能表示制度だ。新築時点で建設住宅性能評価書を取得することになるが、コストもかかるし、現場負担も大きいので普及率は戸建全体で4分の1ほどしかない。しかし、この住宅性能評価書を取得したものは、欠陥住宅になる確率が0.03%と非常に低い。

 2位の財務状態は上場企業であれば、投資家向けの資料で閲覧することが無料でできる。上場していなくても、企業財務情報を提供するサービスがあるので、売主のチェックは必ず行っておきたい。評点のように1つの数字で判断できるサービスもある。財務諸表を見るなら、自己資本比率(=自己資本÷資産)が高い方がいい。不動産会社がつぶれるのは、いつも借金返済が問題になるときだからだ。

 3位の認知度は名前を知っているかという問題で、エリア特化している企業はエリア内に広告を集中投下しているので、地場密着ということになろう。これは、5位の同一市区での実績戸数とも比例することになる。認知度は多くの人に知られた“評判”でもあるので、安心材料になり得る。

 4位の市場シェアは、全国展開している企業は発表しているところもある。一部地域の市場シェアも分母を住宅着工戸数にすれば、ほぼ公の数字になる。シェアが高い企業はスケールメリットを出せる強みがある。それはコストを下げてつくる能力の高さにつながるので、分譲価格もリーズナブルになりやすい。

 同率5位のネットの評判と7位の知り合いの推奨は、この選択肢の中では最も低かった。持ち家という人生最大の高い買い物のときは、私的な意見よりも公的な指標の方が安心材料になるということなのだろう。

構造計算書偽装問題がもたらした安心

 新築住宅の売主等は、住宅の主要構造部分について10年間の瑕疵担保責任を法律で負っている。対象は、構造耐力上主要な部分ならびに雨水の浸入を防止する部分になる。この部分で欠陥があった場合には、売主に修理を請求できる。しかし、10年の間に売主である業者が倒産してしまっては困ってしまう。そこで、新築住宅の売主には保険に加入したり、保証金を預けておくことが定められている。この保険金や保証金で修理代金が支払われるので、その売主の倒産が問題にならなくなった。

 この法律ができた背景には、連日メディア報道された大問題の過去がある。それが構造計算書偽装問題だ。この問題が発覚したとき、構造に問題があるマンションやホテルを建て替える十分な能力が売主や請負業者になく、購入者が非常に不安定な立場におかれる事態が発生した。そこで、構造などに問題があるストックをそのままにしないためにも、万が一の責任保険制度が売主側に課せられたのである。

 この法律で、大手企業も小規模工務店も欠陥は修理されるという意味で同レベルになった。しかし、この制度が始まって以降、欠陥が起こる確率が下がっているわけではない。保険があるからこその欠陥補償で会社が傾くことがなくなった中小事業者のモラルハザードが実際には存在するのかと、心配になる。そもそもの問題として、住宅性能評価のように第三者のチェックを入れることで欠陥の発生確率を未然に最小限にすることが最も大事なことに変わりはない、と筆者は考える。

売主の信頼性の真の意味合い

 このアンケートで、持ち家を取得する物件のリスク回避ニーズを聞いている。「欠陥住宅となること」(93.4%)、「欠陥住宅の際のコスト負担」(93.4%)と同等に「売主の倒産」(91.2%)への意識は高い。これは制度がセーフティネットとして働くものの、それ以前の安心を与える存在としての売主の信頼性の大切さを変えるものではない。

 また、同アンケートの「売主の倒産リスクが避けられるとしたら、物件価格の何%のコストを追加的に払いますか?」に対しては4.52%にもなっている。首都圏の平均新築分譲戸建価格が3500万円なので、158万円もの金額に相当する。

 これだけのコストを支払うなら、売主側に住宅性能評価書を求めよう。新築分譲戸建のまず第一の判断基準は、住宅性能評価書のあるなしだ。こうすることで、欠陥住宅で紛争になるケースは0.03%まで下がり、買主も売主もすべては丸く収まることになるのだから。

(文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント)

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、2社を経て、1998年、現スタイルアクト株式会社を設立。マンション購入・売却者向けの「住まいサーフィン」は28万人以上の会員を擁する。「タワーマンション節税」などの不動産を使った節税の実践コンサルティングに定評があり、不動産分野でのベストセラー作家として講演・寄稿・取材・テレビ出演多数。主な著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書、2012年)、『マンションを今すぐ買いなさい』(ダイヤモンド社、2013年)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書、2014年)など。
住まいサーフィン研究所

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