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トヨタ、定期昇給で完全成果主義へ…他社では過度の競争プレッシャーで事件に発展も

文=編集部
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米国・ラスベガスで2020年1月に開催されたエレクトロニクスとITの見本市「CES」において、話題となった「コネクティッド・シティ」構想について発表する、トヨタ自動車の豊田章男社長。(写真:AFP/アフロ)

 自動車産業の雄であるトヨタ自動車。日本を代表するこの企業が来年度から採用する制度が、話題を呼んでいる。

 時事通信は1日、トヨタが定期昇給制度において、人事評価を全面的に反映させる形にすると発表。同社の従来の定期昇給制度では、職位等に応じるものと、人事評価による成果を評価したものの2つが用いられていたが、2021年以降は後者のみになるとしている。

 トヨタがこの制度を導入したのは、成果主義による社員の労働意欲向上が目的だという。しかしネット上ではすでに、「評価するのも人間である以上、公平性が保たれるとは思えない」「雑務を人に押し付け、成果として評価される仕事ばかりをやるスタンドプレーが横行するのでは」など、この制度に対する疑問や批判が寄せられているようだ。

成果主義のプレッシャーやコンプライアンス意識の低下が三井物産を暴走させた

 いわゆる「成果主義」をめぐっては、以前よりこうした問題点を指摘する声は強い。なかでも、成果主義の負の側面が“暴走”した例としてよく挙げられるのは、総合商社大手・三井物産が2002年に起こした「国後島ディーゼル発電施設事件」、そして同社子会社のピュアースが2005年に起こした「ディーゼル排気微粒子除去装置の性能データ改ざん事件」だろう。

 鈴木宗男衆議院議員をめぐる一連の事件のひとつとしても知られる「国後島ディーゼル発電施設事件」は2000年、北方領土支援の一環として当時国後島に建設予定であったディーゼル発電所の競争入札において、公正な入札を妨害したとして、偽計業務妨害の罪で三井物産の社員3人、背任の罪で外務官僚2人が有罪判決を受けることになったもの。

 一方の「ディーゼル排気微粒子除去装置の性能データ改ざん事件」は、首都圏のディーゼル車規制にからみ、ディーゼル車の排気ガスからススを取り除く装置について2002年、その性能データを偽造してに都の基準に適合するように見せかけ販売したというもの。こちらも、三井物産の社員ら2人が有罪判決を受けている。

 いずれの事件についても、成果主義による現場社員へのプレッシャーの存在や、その結果コンプライアンスを軽んじる傾向が社内に醸成されたことが問題の背景にあったとの分析がなされている。

 もちろん成果主義には、社員のモチベーションアップや、その結果としての生産性のアップなどメリットも存在するし、そもそも厳密に考えれば、成果主義がまったく介在しない人事評価というものはあり得ないだろう。とはいえ、やはり成果主義に偏りすぎた評価制度は問題なのではないか。

 現に先述した三井物産をはじめ、日本マクドナルドや富士通など、多くの大企業がいったんはこの成果主義をメインに据えた人事評価制度を取り入れ、しかし結局は取りやめたり修正したりしてきたという歴史が存在するのも事実。こうしたなかで、“日本の顔”であるトヨタが今、あえて完全成果主義に切り替えるという事態に関しては、議論の余地もあるのではないだろうか。

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