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中堅スーパー「ヤオコー」コロナ禍でも前年超えの売上達成…強みは小商圏における個店経営

文=兜森 衛
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埼玉県川越市新宿町にある、株式会社ヤオコー本社ビル。食品スーパーはコロナ渦でも伸びている業種だが、ヤオコーの伸びはそのなかでも圧倒的だ。(写真はWikipediaより)

 コロナ渦のさなか迎えた2020年度上半期の中間決算。早いところはすでに発表が始まっているが、ピークは11月第2週に集中しそうだ。東証一部上場企業は全2160社(2019年末時点)あるが、緊急事態宣言で外出自粛となった4、5、6月の第1四半期決算では、金融を除く全体の98.9%に当たる1313社中、最終赤字企業は431社、減益企業が481社を数え、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく響いた。

 一方、外出自粛による「巣ごもり」需要で業績を伸ばした企業もあった。即席麺、冷凍食品大手の日清食品ホールディングスは過去最高益を更新。ゲームソフト「あつ森」が大ヒットした任天堂も大幅増益となった。しかし、コロナ渦で先が読めないためか、日清食品ホールディングスも第2四半期決算予想は非開示。今期(2021年3月期)の業績予想も微増に留めた。任天堂も第二四半期決算予想は未開示で、今期(2021年3月期)の業績予想は減収減益とした。

「34期連続過去最高益」を達成したニトリの驚異的な記録

 こうしたなかでひときわ異彩を放ったのが、2020年2月期決算で「34期連続過去最高益」と驚異的な記録を更新したニトリホールディングスと、2020年3月期決算で32期連続過去最高益を更新した中堅食品スーパーのヤオコー(埼玉県川越市)だ。どちらも第1四半期決算で今期業績予想(経常利益)に対する進捗率はすでに41.9%に達していた。

 ニトリは10月2日に第2四半期決算を発表しており、「巣ごもり」需要を背景にネット販売を強化し、台所用品やダイニング家具、テレワーク用のパソコンデスクなどが売上を伸ばした。上期決算は売上高3624億8100万円(前年同期比13%増)、経常利益810億6700万円(前年同期比43.4%増)で、通期業績予想(経常利益)1341億円に対する進捗率は60.5%に達した。今後は業績予想のさらなる上方修正に期待がかかる。

ヤオコーの強みは「小商圏における個店経営」

 ヤオコーの数字も見てみよう。食品スーパーはコロナ渦でも伸びている業種だが、ヤオコーの伸びはそのなかでも圧倒的だ。今年8月11日発表の第1四半期決算では、売上高1299億2500万円(前年同期比17.3%増)、営業利益83億2800万円(前年同期比60.1%増)、経常利益83億4200万円(前年同期比59.6%増)、最終利益56億3200万円(前年同期比62.6%増)で、売上営業利益率も前年同期比の4.7%から6.7%に改善した。

ヤオコーはなぜ強いのか。その強みは昔から変わらない。小商圏における個店経営である。イオンやイトーヨーカドーなどの大手スーパーが大商圏(半径5キロ圏内)で、本部主導の広域大量販売であるのに対し、ヤオコーは小商圏(半径1キロ圏内)で、店舗主導の地域密着少量販売を展開している。大手スーパーの本部経営に対し、ヤオコーは1995年頃から個店経営を採用し、店長を中心にパートも参画する店舗運営と利益管理に移行。パートにも年2回のボーナスを支給していることでも有名だ。

 経済評論家の荻原博子氏に話を聞いた。

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コロナ禍でも、一部の店舗を除き、ヤオコーは原則として休業や営業時間の短縮などは行わなかった。(画像はヤオコー公式サイトより)

コロナ禍で外出できないため、“プチ贅沢”で客数も増え客単価も上がる

「昔はチラシを見てちょっとでも安いところを探したけど、今はコロナであまり遠くには行けないし、外食にも行けないから、なるべく自宅から近いスーパーで食材を買わなきゃならない。だから、ヤオコーみたいな形はスーパーの理想型なんです。昔のダイエーなんか、大量購入、大量販売で同じ商品を北海道から九州まで店頭に並べた。でも、それって効率が悪いじゃないですか。だから、ダイエーは潰れちゃったんですけどね。

 地域密着型のスーパーなら、この日は小学校の運動会だねとか、そういう地域情報がパートの人たちから入るので、その日はこれが売れるよみたいな小回りのきいたことができる。農家が大根を1本20円で出荷しても、途中で農協やらなんだで流通を通すので、大手だと店頭では100円とかになっちゃう。でも、地場のスーパーなら近所の農家から大根1本40円で仕入れても、店頭で60円とか70円で売れてどっちもウインウインになれる。

 コロナ禍でもヤオコーの業績がいいのは、食材は必ず必要になるし、店舗に行く回数も増えているからです。しかも、外食できないから、自宅でプチ贅沢しようとなる。今まで赤身だったマグロを中トロにしようかってなるじゃないですか。客数が増えて、客単価も上がるから、地場スーパーは元気なんです。地場の中堅スーパーなら小回りもきくし、その分、利益率も高くなりますからね」(荻原氏)

ヤオコー「地域のライフラインとして可能な限り通常どおり営業を継続」

 以下にヤオコーの第1四半期決算書の内容の一部を記してみよう。

「新型コロナウイルス感染症に対して、当社グループは、一部の店舗を除き、原則として休業や営業時間の短縮などは行わず、『地域のライフラインとして可能な限り通常どおり営業を継続すること』を基本方針として取り組みました。また、『外出自粛』の影響を受けて、『巣ごもり需要』が発生しており、お客様の買い上げ点数が大きく増加したため、当社の既存店売上高の昨年比は、4月:118.8%、5月:119.4%、6月:112.1%と大きく上昇しました」

 ヤオコーの第2四半期決算の発表は11月10日午後3時の予定だが、ニトリと同様に、そして第1四半期決算に匹敵する好調な数字で再び驚かせてくれるに違いない。

(文=兜森 衛)

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