
「老後のおカネが足りるか不安……」という人に老後資金づくりとして「個人型確定拠出年金」(以下、iDeCo)や「つみたてNISA」を勧めるのは、ファイナンシャル・プランナーとして、今やテッパンともいえる。
ただ、実際にこれらを利用している人は、まだ少ないのが現状だ。どうやら、投資を経験したことがない人にとって、投資信託などのリスク性商品での運用は、すこぶるハードルが高いものらしい。しかし、これらの制度は、老後資金が計画的に積み立てられ、運用によって元本が殖える以上に、税制優遇が受けられることが最強のメリット。とくにiDeCoの節税効果は高く、仮に金利ゼロの商品で運用しても、やっておく価値は大である。
今回のコラムでは、そんなiDeCoの節税メリットについて紹介したい。
iDeCoの加入率は公的年金被保険者全体の2.5%
まず、iDeCoの加入状況を確認しておこう。国民年金基金連合会が運営するiDeCo公式サイトによるとiDeCoの加入者数は172.4 万人(2020年9月時点(※1))となっている。2001年に導入された当時は、対象者が自営業者や企業年金のない会社員のみ。加入者数の増加もじわじわといった感じだった。
その後、普及推進のテコ入れ策として、2016年9月、公募によってiDeCo(イデコ)という愛称が決定。2017年1月には、加入対象範囲が大幅に拡大され、これまで加入できなかった専業主婦や公務員も加入できるようになった。原則として60歳未満の国民年金、厚生年金加入者は誰でも加入できる(ただし、自営業者等は国民年金保険料を納めている人、勤務先で企業型確定拠出年金に加入している場合はiDeCoに加入できる旨の規約変更を行っている人に限る)。
対象拡大によって、これ以降、iDeCoの加入者は急増した。しかし、それでも被保険者全体から見ると多いわけではない。iDeCo の加入対象者数を公的年金被保険者数(6,746 万人、2019 年 3 月末時点(※2))とすると、それに占める加入者数の割合(加入率)は2.5%にすぎない(iDeCoの加入者数とのタイムラグはご容赦願いたい)。
年金の種類別の加入者数と加入率をみると、第1号加入者(自営業者等)が約19.3 万人で約1.3%、第2号加入者(会社員、公務員)が約146.9 万人で約3.3%、第3号加入者(専業主婦等)が約6.2万人で約0.7%となっている。
第2号被保険者の加入率が最も高いが、iDeCoの本来の趣旨からすると、会社員に比べて、公的年金や企業年金などが見込めず、自助努力が必要な自営業者等の加入率は、もっと高くなっても良さそうだが。
※1「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について」(2020年9月時点)
※2:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」
2020年5月改正で、iDeCoの加入者の対象がさらに拡大
そして今後、加入者の範囲がさらに拡大される改正も実施される。2020年5月の年金改正で、iDeCoの加入条件に関して以下の2つが変更になる予定だ。
(1)iDeCoに加入できる年齢の引き上げ
iDeCoに加入できる年齢の上限は、現行60歳だが65歳に引き上げられる(2022年5月から)。ただし、60歳以降、会社員として厚生年金保険に加入、または国民年金に任意加入して、保険料を納める必要がある。20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入していた人等は、任意加入も不可のため、iDeCoも加入・継続できない。