近年、スーパーやホームセンター、コンビニなどの小売店に設置されているセルフレジ。マーケティングリサーチ企業であるクロス・マーケティングが行った調査によれば、セルフレジの利用に対して「ほぼ毎回利用する」「利用することが多い」と回答した人の割合は、商品の読み取りまで行うフルセルフレジで55.0%。商品の読み取りは店員が行い、会計はセルフで行うセミセルフレジでは61.8%と、多くの人が利用するものとなっている。
こうしたなかで、大手スーパー・イオンを運営するイオンリテール株式会社は、同スーパーで新たなセルフレジシステム「レジゴー」を2020年3月から導入。なにやら、店内に置かれた専用スマホを使い、客がみずから商品のスキャンを行う、という独特のシステムを採用しているらしいが、その使い勝手はいかに……? 導入から9カ月が経過し、実装店舗が増えてきている今、実際に使用してその利便性を確かめることとした。
できたてホヤホヤのイオンタウンふじみ野には、レジゴーの専用端末が入口横に!
訪れたのは、埼玉県ふじみ野市にある「イオンタウンふじみ野」。11月21日に開業したできたてホヤホヤの“最新型イオンタウン”で、敷地面積5万3000平米超、3階建ての建物内に92店舗が出店し、レジゴーも導入されているという。とはいえレジゴーが利用できるのは、イオンリテールが運営するイオンのスーパーにおいてのみだ。
訪れたのは12月初旬の某平日。店内に入り、レジゴー用の端末を探すと、入口の右側に並んで置いてあった。「サクッとお会計 待たずにレジ」という看板も設置されており、イオン側も強くプッシュしていることがうかがえる。実際に筆者が手に取ったレジゴー端末の画面には、大きく「レジゴー」の文字が表示されていた。
端末のスタートボタンを押し、さっそく近くの青果コーナーのネギに付いていたバーコードをスキャン。ところが、バーコードがネギの形に沿って曲がっていたせいか、読み取るまでに少し苦戦。いきなり出鼻をくじかれた感があったものの、読み取りに成功すると、値段と品名が端末の画面に表示され、ちょっとテンションが上がってしまった。画面上部に買い物点数や合計金額が表示されているのも、常に合計金額を把握しながら買い物ができて、なかなかに便利ではないだろうか。なお、同一商品を複数購入する場合は何度もスキャンする必要がなく、その分の個数を入力すればよいようだ。
閉店前の生鮮食品タイムセールも忠実に反映される利便性
ほかにもいろいろな商品を試してみることに。まず、同じく青果コーナーにあったグレープフルーツをスキャン……しようと思ったものの、こちらはバーコードのない商品。こうした商品の場合、端末の画面下部の「バーコードのない商品を追加」という部分をタップし、自分で品目と個数を指定する仕組みのようだ。
イオンタウンふじみ野を訪れたのは20時すぎであったため、ちょうど生鮮食品のタイムセールが始まっていた。店員が目の前で半額シールを貼ってくれたブリの刺身は、本来の値段のバーコードの上に、新たなバーコードつきのシールが貼られてある。
ところが、この新しいほうのバーコードをスキャンすると、なぜか当初価格の658円が表示され、ビックリ。しかしよく見ると、商品名の左上に「レジにて50%OFF」という文章が表示され、合計金額も割引が反映されたものとなっていた。それなら、各品目の部分にも割引後の金額を表示したほうがわかりやすいのではないか……とも思ったが、何か深い事情があるのかもしれない。
レジ横のQRコードをスキャンすると会計が開始されるという先進的なシステム
ほかに欲しい商品を何点かスキャンしたあと、いよいよレジゴー専用レジに向かう。この時には筆者以外に専用レジを利用している人はおらず、ガラ空きの状態だった。通常レジのほうは少ないながらも客が並んでいたため、少なくとも取材時においては、通常レジのほうが待たずに会計することができたわけだ。
専用レジの横にはQRコードが貼られており、このQRコードをレジゴー端末でスキャンすると、会計が開始される……という流れ。スキャン忘れの商品がないかの確認メッセージが表示されたあと、「お支払いに進む」というボタンを押すと、レジに合計金額が表示され、そこから先は、コンビニにあるような一般的なセルフレジと同じように支払いする形となる。
最後に、レジ付近にあった置き場にレジゴー端末を返却して終了。置き場のスタンドの数以上に返却端末が置かれていたので、筆者はたまたま空いているタイミングで会計を行えただけで、実際にはレジゴー端末の利用者はもっと多いのかもしれない。
「レジゴーは不正利用ができてしまうのでは?」との懸念
以上、実際にレジゴーを利用して買い物をやってみた感想は、「楽しくて便利」というものだ。
自分で商品をスキャンするのは新鮮でちょっとワクワクするし、何よりも、合計が常に把握できるというのはかなりのメリット。スーパーなどで日用品を買おうとした際、ついつい欲しいものをカゴに入れまくってしまい、合計金額が当初考えていた予算を大幅に上回ってしまった……という経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。筆者もそうした失敗にたびたび頭を抱えていた買い物好きのひとりだが、現在の合計金額を常に把握できている……というのは、非常に便利だと思えた。
とはいえ、気になる点もある。率直にいえば、「このシステム、いくらでも不正ができるのでは……?」という懸念を抱いてしまうのだ。
バーコードのない商品は自分で品目を選択するのだが、例えば今回購入した98円のグレープフルーツを78円のキウイフルーツとしてカウントしたり、あるいは個数を少なく申告したりということが、十分可能なように思えてしまう。バーコード付きの商品でも、例えば10個カゴに入れたところをちょっとだけ少なめに8個……など、ごまかして申告することもできてしまうのではないか。
「ロス率」は平均値以下に収まっているため、不正利用はきわめて少ない?
デジタル家電・ITビジネスの総合ニュースサイト・BCNが10月に掲載したレジゴーに関する記事によれば、イオン側はレジゴーを導入した店舗について、監視カメラを増台する等の対応は行っていないとのこと。この記事では、防犯対策について「防犯のために“がんじがらめ”にしては元も子もない」との、イオンリテールのシステム企画本部長の声を掲載している。
さらに、レジゴー導入店舗において、売り上げと、実際に減った商品個数の差から割り出された「ロス率」は平均値以下に収まっているとのこと。しかし、今後レジゴーが普及し、利用人口が多くなった時、本当に大丈夫なのだろうか? と、余計なお世話ながら心配になってしまう。もちろん、それなりの防犯対策は行われているのだろうが……。
こうした懸念点を除けば、利用メリットは大いにあると考えられた、このレジゴー。お住まいの地域にイオンの導入店舗がある読者諸氏は、是非一度利用してみることをお勧めしたい。
(文=編集部)