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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

住宅ローン、不動産会社の“言いなり”は危険…安心の固定金利型は信用組合や住専も狙い目

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
住宅ローン、不動産会社の“言いなり”は危険…安心の固定金利型は信用組合や住専も狙い目の画像1
「Getty Images」より

 住宅ローンには3つの金利タイプがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。それを十分に理解しないで利用すると、あとで「こんなはずではなかった」ということになりかねません。そうならないためには、不動産会社の誘導に流されるのではなく、自分で方針を決めて選択しなければなりません。

住宅ローンには3つの金利タイプがある

 住宅ローンには、変動金利型固定期間選択型、全期間固定金利型の3つの金利タイプがあります。変動金利型は借入後の金利変動に応じて適用金利や返済額が変わるローン。ネット専用銀行では0.3%台から利用できるなど、金利の低さが最大のメリットですが、借入後に市中の金利が上がるとローンの適用金利も上昇、返済額が増えるリスクがあります。5年後には最大25%まで増える可能性があるのです。

 固定期間選択型は2年、3年、5年、10年などの固定特約期間中は金利が固定していますが、その特約期間終了後には、その時点の金利で再び固定期間選択型にするか、変動金利型に切り替えるかを選択できます。固定特約期間が短いタイプは変動金利型並みの低金利ですが、長くなるとやや高くなります。

 全期間固定金利型は、借入時の金利が完済するまで確定しています。したがって、借入後に市中の金利が上がっても適用金利は変わらず、返済額も不変です。完済までの返済額が決まっているので計画を立てやすく、リスクもないのですが、その分金利はやや高めになっています。

業者は相手におかまいなしに変動金利型を勧める

 住宅ローンを利用するときには、3つの金利タイプのメリット・デメリットを十分に理解して、自分たちはどの金利タイプがいいのかをシッカリと決めておく必要があります。何も決めないで不動産会社に相談すると、ほぼ間違いなく変動金利型のローンを勧めてきます。金利が低く、返済負担が軽くすむので、変動金利型を利用すれば買いやすくみえるからにほかなりません。金利上昇によるリスクがあることを十分に説明しないままに、「この資金計画であれば、あなたの年収なら楽勝ですよ」などと勧めてくるわけです。

 不動産会社にすれば、ローンを組んで物件を買ってもらえばそれでOK。購入後にお客がどうなろうと知ったことではありません。どんなお客であれ、おかまいなしに変動金利型を勧めてきます。一定の年収があって、返済額が増えても十分な対応力があるのならいいのですが、ギリギリの返済計画だと、金利上昇即ローン破綻ということになりかねません。まだ、年収がさほどでないのであれば、より堅実な資金計画にするのが安心です。

購入前の希望段階では変動金利型は少数派

 では、みなさんどの金利タイプを利用しているのでしょうか。

 住宅ローン利用前の段階では、必ずしも変動金利型の利用者が多いわけではありません。図表1にあるように、希望段階では変動金利型は37.4%で、固定期間選択型と全期間固定金利型の合計62.6%より少ないのです。

 たしかに変動金利型の金利の低さは魅力ですが、万一にも借入後に金利が大幅に上がったときには、返済額が増額され、家計を圧迫するのではないかというリスクがありますから、それを避けて、完済まで返済額が変わらない全期間固定金利型や、固定期間選択型でも比較的固定期間が長い10年固定などにしたほうがいいのではないかとする人が多いわけです。希望の段階ではある程度の理性が働いて、より安全・安心の資金計画を想定している人が多数派といっていいでしょう。

 しかし、実際にマイホームの購入段階になると、その理性の歯止めがはずれてしまう人が少なくないようです。

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実際の利用者の6割以上が変動金利型に

 図表2をご覧ください。これは、実際に住宅ローンを利用してマイホームを取得した人たちが、どの金利タイプを利用したのか、その割合を示しています。希望段階では37.4%だった変動金利型が、実際の利用段階では62.9%に増加しています。固定期間選択型や全期間固定金利型は完全に少数派にとどまっているのです。

 特に、この2~3年は日本銀行のゼロ金利政策の導入や大規模緩和の影響もあって、金利の先高感が弱まり、変動金利型利用者の割合は、3年前には50.4%とほぼ半数にとどまっていたのが、調査時期ごとにその割合が高まっています。

 ただ、2021年に入って、アメリカ発の長期金利の上昇で固定期間選択型や全期間固定金利型の住宅ローン金利が上昇しました。変動金利型は短期金利に連動するので、直接の影響はなかったのですが、変動金利型を利用している人たちは一瞬ドキッとしたのではないでしょうか。

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住宅ローンを自分で見つけてきてもOK

 不動産会社が勧める住宅ローンがすべてではありません。不動産会社は金融機関と提携していることが多いので、提携ローンを利用すれば手続きが簡単で、審査の結論が出るのが早いといったメリットがあるのですが、反面では提携ローンには金融機関へ支払う事務手数料とは別に、不動産会社に事務代行手数料の負担が発生することがあります。

 でも、必ずしも不動産会社が勧める住宅ローンを利用しなければならないわけではありません。自分で金融機関を回って住宅ローンを用意してもまったく問題はないのです。そのほうが、さまざまな住宅ローンのなかから、自分たちに一番合ったローンを見つけられる可能性があります。

 金融機関にしてみれば、不動産会社とは違って、マンションなどの物件を売りたいといった動機があるわけではないので、より客観的に判断して、お客に合った住宅ローンを勧めてくれる可能性があります。住宅ローンを売りたいという想いはあっても、ある程度第三者的に、その人に合ったローンを勧めてくれるはずです。

JAバンクでは固定期間選択型の比率が高い

 その際、事前に知っておきたいのが、金融機関別に金利タイプの得手不得手があるということです。

 図表3は、金融機関の業態別の貸出債権の金利タイプの割合を示していますが、業態によって主力となっている金利タイプは大きく異なっています。「都銀・信託」では、変動金利型が89.3%と9割近くを占めていますが、その他の業態では変動金利型が減少して、特に「信用組合」では31.9%と3割強に減って、代わって固定期間選択型の10年固定が56.5%に達します。「労働金庫」は「信用組合」ほどではありませんが、やはり固定期間選択型の10年固定が22.3%に達しています。

 固定期間選択型の10年固定は、全期間固定金利型より金利が低いので、変動金利型の金利の低さ、全期間固定金利型の安心感のいいとこ取りという考え方もできます。

 固定期間選択型を利用しようとする人であれば、メガバンクを初めとする「都銀・信託」などではなく、「信用組合」や「労働金庫」などで相談してみるのがいいかもしれません。

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地域によって金利タイプの利用状況は異なる

 この金利タイプ、地域によっても大きく異なっています。図表4にあるように、全国的には変動金利型が87.2%を占めており、特に三大都市圏のある南関東、東海、近畿などでは変動金利型の割合が高くなっています。なかでも南関東と近畿では9割近くに達しているほどです。

 しかし、北海道を拠点とする金融機関では変動金利型は0.5%にすぎません。代わって固定期間選択型の2・3・5年が46.1%で、固定期間選択型の10年が46.7%ですから、9割以上は固定期間選択型が占めています。

 また、北陸では変動金利型が8.1%で、固定期間選択型の2・3・5年が78.9%と大多数を占めていますし、四国でも変動金利型は8.8%で、固定期間選択型の10年が48.9%、全期間固定金利型が38.3%と長期の固定金利型が主流となっています。

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希望の金利タイプに積極的な金融機関を探す

 ですから、変動金利型以外が多くなっている北海道や北陸、四国などであれば、地元金融機関で固定期間選択型や全期間固定金利型を利用しやすくなります。反対に、そうした地域で変動金利型を利用したいときには、地元の金融機関ではなく、メガバンクなどの支店で相談してみるのがいいでしょう。

 逆に、「都銀・信託」の影響力の強い大都市圏では変動金利型が中心になるので、固定期間選択型や全期間固定金利型を利用したいときには、信用組合や住宅金融専門会社を探して相談すれば道が開けるかもしれません。

 まずは住宅ローンの3つの金利タイプについて十分に理解し、自分たちにはどの金利タイプがいいのかを決めておきましょう。それに合った資金計画を提示してくれる不動産会社であれば、その提案に乗ればいいでしょうし、そうではなく、他の金利タイプがいいという場合には、自分たちが利用したい金利タイプを積極的に扱っている金融機関を見つけて相談するのがいいのではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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