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アップルEV、生産委託先に「マツダ」が取り沙汰…高いデザイン性、米国工場の生産余力

文=編集部
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アップルのiPhone

 米アップルが2020年代半ばにも発売する予定の電気自動車(EV)「アップルカー」の生産委託先として、日本車メーカーを含む6社が打診を受けたと報道されている。アップルEVを生産する日本メーカーはどこなのか――。

 韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車が生産を請け負うことで調整していたが、2月に入って協議の中断が明らかになった。現代側が「初期段階」と協議の事実を認めたため、秘密保持を重視するアップルの不興を買い、「冷却期間を置いた」(米シリコンバレーの情報筋)とみられている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版は、<日産自動車に生産委託で提携を打診したものの、交渉は不調に終わった>と報じた。

 ファブレス(工場なし)経営で知られるアップルはスマートフォン「iPhone」の生産を台湾の鴻海精密工業などに委託している。EVへの参入にあたってもアップルはデザインや設計に特化し、生産は自動車メーカーなどへ委託する方向で水面下で交渉が進んでいる。

 日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)はFTの取材に「車の製造方法を変えるつもりはない」と強調し、自社生産にこだわりを示した。アップルは協業の可能性のある、あらゆる自動車メーカーに声をかけているとされる。「欧州にも声をかけているだろうが、さすがに欧州メーカーは受けない。可能性は韓国、日本、中国に絞られる。1社ではなく、複数社になる可能性がある」(自動車担当アナリスト)。

「スティーブ・ジョブズ氏は、いいものをつくりたいと1社にこだわったが、今のティム・クックCEOは複数社に価格競争させ、発注している。金額次第だと思う。ただし、アップルEVは1台500万円以上の高級車になるとみられているので、技術力が必要になる」(在米の自動車担当アナリスト)

 アップルのティム・クックCEOは1月27日の電話会見で、「今、話すつもりはないが、もちろん新たなことを考えている。これまでにも他の新たなことが会社に貢献してくれたよう、当社に貢献してくれることになると思う」と意味深長な言い回しをした。

 アップルはスマホ市場(市場規模は5000億ドル)の3分の1を占めている。これに対してモビリティ(移動手段)市場は最大10兆ドルに成長するとみられている。アップルが2%のシェアを獲得すればiPhoneと同じ規模のビジネスになる計算。アップルにとってEVは実に魅力的なアイテムなのだ。20年12月21日、ロイターは「自動運転のEVを24年にも製造を始める」と伝えた。「プロジェクト・タイタン」と呼ばれるアップル独自のEV開発である。アップルが自動運転技術を開発していることは米国シリコンバレーでは公然の秘密だったが、ロイターが「アップルは画期的な電池を積んだ車を開発中」と報じ、一気にアップルEVに火がついた。

完成車メーカーは否定的

 では、日本の状況はどうか。“協業”といえば聞こえはいいが、アップルの下請けになるという見方もある。完成車メーカーはアップルの下請けをやるつもりはないはずだ。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)の世界最大手だ。自社のビジネスモデルを脅かしかねないアップルEVの量産には手を貸さない。かつて米テスラと資本業務提携して米国でEVを共同生産したが、今は手を引いている。

 ホンダも環境車の主軸はトヨタと同様にHV。これからEVに本腰を入れる。ホンダのパートナーは当面、米GMになりそうだ。SUBARUはトヨタの持ち分法適用会社だが、アップルEVへの対応は不明だ。

 日本では日産がもっともEVに積極的だが、「日産のEV技術は一世代古い。日産が21年に出す予定のSUV(スポーツ多目的車)タイプのEV『アリア』の売り値は500~600万円になるとみられており、アップルEVと競合する」(外資系証券会社の自動車担当アナリスト)。

 関係がギクシャクしているとはいえ、親会社の仏ルノーは世界7位のEV、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)のメーカーである。「日産がアップルの“下請け”になることを絶対に許さない。日産が『敵に塩を送る』ことになるアップルとの提携を断ったのは、ルノーの意向を忖度したからだろう」(同)。

 三菱自動車は、第一世代の小型EV「i-MiEV」のほかPHVの「アウトランダーPHEV」を生産しておりEVのノウハウはある。アップルが委託生産を任せるに足る技術を持ったメーカーのひとつだ。「ルノー・日産連合のなかで三菱自動車に遠心力が働けば、アップルEVをつくるという選択肢はある。アップルが設備投資をしてくれるなら、という条件付きだろう」(三菱グループの首脳)。

日本電産の動きにも注目

 マツダが一番可能性が高いとみられている。

「マツダはEVを本気でやるつもりはないので、アップルと競合しない。マツダはデザイン性の高いクルマづくりで知られ、アップルEVのボディーメーカーとして有力候補だ。他社が生産したEV車台に自社製のボディーを載せて完成車にするノックダウン方式なら、やるかもしれない」(自動車評論家)

「マツダは米国と中国に完成車工場がある。米国工場が空いているのでアップルEVをつくるのに好都合だ」(大手証券会社の自動車担当アナリスト)という“台所事情”もある。

「生産コストが安く電池供給も安定している中国メーカーに車台を、マツダにボディーと最終組み立てを委託する国際分業であれば、現在のマツダの経営体力でもやれそうだ」(完成車メーカー首脳)

 EVはガソリン車やHVのようにモデル別の車台ではなく、標準車台にボディーを搭載する生産方式になるといわれる。ここでクローズアップされてくるのは日本電産だ。永守重信会長兼CEOは25年に車台市場への参入を表明している。もし、韓国、日本がダメなら最後は中国メーカーになる。

「中国メーカーに米工場をつくらせる。ブランド力のない中国メーカーにとってアップルEVの製造はブランド向上につながる。メリットは大きいはずだ」(中国経済に詳しいアナリスト)

 アップルEVが成功すれば、日本メーカーが得意とするHVやガソリン車の市場の縮小に向かうことになる。アップルカーがiPhoneと同様のパターンになるなら、前面に出るのは「アップル」ブランドだけ。組み立てをする企業のメリットは限られる。先行きに展望を持てない日本メーカーが手を挙げるというのが、現下で考えられる最終シナリオになるかもしれない。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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