
エンゲル係数で示される生活水準の低下
経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が急上昇している。特に2020年には総務省「家計調査」の勤労者世帯ベースで前年に比べて+2.1ポイント高い26.0%となった。この背景には、コロナショックに伴うサービス消費の落ち込みやエネルギー価格の下落があると推察される。
エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされている。
エンゲル係数は相対価格と所得と消費性向に分解可能
エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合とされているが、その変動には、いずれも数量と価格が関係している。つまり、消費者物価(総合)に対して相対的に食料品価格が上昇すれば、エンゲル係数の押し上げ要因となる一方で、相対的に食糧費以外の支出抑制もエンゲル係数の押し上げ要因となる。
また、分母の消費支出は可処分所得と平均消費性向すなわち家計が自由に処分できる所得と世帯の消費意欲に分解できる。そして、可処分所得は実収入すなわち世帯の現金収入を合計した税込み収入に左右される一方で、非消費支出すなわち税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出にも左右される。従って、こうした要因に分解すれば、エンゲル係数がなぜ上昇したかを分析できる。
エンゲル係数=(実質食料費×食料費価格)/(実質消費支出×消費者物価)
=実質食料費×(食料費価格/消費者物価)/(実質可処分所得×平均消費性向)
=実質食料費×食料費相対価格/((実質実収入-実質非消費支出)×平均消費性向)
エンゲル係数の上昇は消費性向の落ち込みが主因
2020年のエンゲル係数は前年比で+2.1ポイントの上昇を記録した。そこで、エンゲル係数の上昇率を食料品の消費量と相対価格および実収入と非消費支出、平均消費性向に分けて要因分解してみた。すると、食料品の相対価格が+0.4ポイントの押し上げに働く一方で、平均消費性向の低下要因がそれを大きく上回る+2.5ポイントの押し上げ要因になっていることがわかる。
また、可処分所得の内訳では、給付金等に伴う実質実収入の増加によりトータルで▲1.2ポイントの押し下げ要因となる。一方、実質食料品消費の要因は+0.3%ポイントの押し上げに止まる。つまり、消費者の平均消費性向の低下が2020年のエンゲル係数上昇の主因といえる。
消費性向の低下は新型コロナに伴う移動・接触を伴う支出減
そこで、消費性向低下の主因を探るべく、総務省「家計調査」を用いて2020年の消費支出前年比の押下げ寄与が大きい品目を抽出してみると、「一般外食」がトップとなる。