前回、トヨタ「アルファード」が人気を集めている事情や、現在の“爆売れ”状況が終焉を迎えることは当分なさそうな理由について述べた。
2020年5月から実施されたトヨタ系ディーラー(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)全店舗での全車種(一部を除く)併売化もアルファードの販売台数を押し上げ、今や“オールトヨタ”でアルファードの積極販売を進めている。そして、圧倒的にリセールバリューが高いという点もアルファードの強みとなっている。
現行アルファードは2015年1月にデビューしている。次期型は2022年後半から2023年前半にデビューするとの情報が流れているが、販売現場で聞くと、次期型へのモデルチェンジ直前は現行新車の駆け込み需要が多く、中古車市場もつられて活発な動きを見せるので、これから購入すると、モデルチェンジ直前がかなりの“売り時”になるとのことであった(そのまま次期型に乗り替えるのもいいかもしれない)。
モスクワでレクサスの人気が高い理由
そもそも、輸入車の世界では高額なモデルほど“資産価値”を重視して新車購入する傾向が強いという。たとえば、スーパーカーの購入者は、本当に大好きで、購入したら頻繁にドライブに出かけたりする人ばかりだと思いがちだが、購入後はほとんど乗らずにガレージにしまい込んで、売り時を狙っている、まるで“資産”としてしか見ない人も多いとのこと。
今はコンパクトモデルも多くなってきたが、伝統的なFR系モデルなど一定レベル以上の「メルセデス・ベンツ」なども、都内では“これでもか!”とたくさん見かけるのは、輸入車のなかで圧倒的に人気およびブランドステイタスが高く、リセールバリューが確実なドイツ車のなかで、特に“鉄壁のリセールバリュー”を誇っている点が大きいことも影響していると聞く。
ロシアでは自国通貨ルーブルへの国民の信用が低いこともあり、経済危機などになると、不動産や高級車を購入して財産保護をするとのこと。そのなかで、モスクワ市内では「レクサス」の人気が高いのだが、これも聞いてみると「メルセデス・ベンツやBMWに比べると壊れにくいので、価値が維持できる」という面も影響しているとの話であった。
アルファードのように年間で10万台も売れるとさすがに流通台数も多くなり、リセールバリューに悪影響があるのでは、と販売現場で話を聞くと、「そんなことはないでしょう」と楽観的な答えが返ってきた。その理由を聞くと、「コロナが落ち着いて、海外への中古車輸出がコロナ禍前のレベルに戻るでしょうから問題ありません」とも答えてくれた。
もともとアルファードというクルマ自体を気に入っている人が多く、それが人気を支えていた。そこへ、コロナ禍による社会不安と、海外旅行などのレジャーや外食などの行動自粛要請が続き、そのためお金の使いみちが限られ、富裕階層だけでなく一部の中間所得層まで貯蓄が増えており、そのマネーが新車購入に集まり、好調な新車販売が続いている。
そのようななかでは、“プチ贅沢”(より高いハイブリッド車よりガソリン車が売れていることも考えると)ができ、より値落ちしにくいブランドの確かなモデルということでアルファードに選択が集中し、ある意味“異常事態”とでもいうべき、今日のアルファードの売れ行きになっているものと考えている。
(文=小林敦志/フリー編集記者)