トヨタ、コロナ下で「業績拡大」止まらず…連日の株価高値更新の裏に「株式分割」の妙手

トヨタ・アクア(「Wikipedia」より)

 6月1日の東京株式市場でトヨタ自動車の株価が前日比308円(3.4%)高の9423円まで上昇。企業価値を示す時価総額(発行済み株式数ベース)は30兆7472億円に達し、14年3カ月ぶりに最高となった。これで上場来高値を5営業日連続でつけた。

 時価総額は2007年2月27日に付けたこれまでの最高(30兆1434億円)を上回った。新型のスポーツタイプ多目的車(SUV)が人気のうえ、主力の米中市場での販売も好調。自動車業界で課題となっている半導体の供給不足に対応できていることも買い安心を誘った。

 株価5ケタ(1万円)接近で万年割安株という辛口の評価も返上できそうだ。時価総額30.7兆円は日本株では2位のソフトバンクグループの14.0兆円、3位のソニーグループの13.6兆円に2倍以上の大差を付けてダントツだ。

 米自動車(EV)大手、テスラ(約66兆円)には及ばないが、世界販売台数でトップを争う独フォルクスワーゲン(VW、約18兆円)や米ゼネラル・モーターズ(GM、約9兆円)を大きく上回っている。トヨタは東日本大震災のあった11年末に時価総額が10兆円の大台を割り込んだが、3.5倍の水準まで盛り返したことになる。6月2日も株価は続伸。一時、215円高の9638円をつけ、終値は9628円(205円高)。未到の1万円大台まで、あと3.9%に迫った。翌3日は9957円(329円高)まで上伸し、終値は9790円(162円高)。世界の自動車株をウォッチしているアナリストはいう。

「米テスラ株が高値をつけるとトヨタ株は7カ月遅れで、テスラに追いつくパターンが過去に2回あった。2014年と17年だ。今回も同じで、夏までトヨタ株は堅調とみている。テスラが下がるとトヨタは上がるという過去の経験則が生きている」

好決算と株式分割、自社株買いを好感

 21年3月期の連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる営業収益が20年3月期比8.9%減の27兆2145億円、純利益は10.3%増の2兆2452億円だった。新型コロナウイルス禍で一時、販売が急減したが、米中市場で回復したことやコスト削減が寄与し、増益を死守した。

 22年3月期は世界販売の拡大を背景に増収増益を予想している。営業収益は21年同期比10.2%増の30兆円、純利益は2.4%増の2兆3000億円を見込む。研究開発費は過去最高の1兆1600億円を計画している。日経平均株価が急落していた5月12日、午後1時25分、トヨタは3月決算を発表した。1時14分時点のトヨタ株は前日比129円安の8212円だったが、好決算の発表をテコに終値は8523円に反転した。

 決算と同時に9月末割当で1対5の株式分割と4100万株(発行済み株式の1.46%)の自社株買いを発表したことが、株価に大きなインパクトとなった。トヨタの株式分割は1991年の1対1.1分割以来のこと。近健太執行役員(CFO)は会見で、「(トヨタ株を)購入しやすい環境をつくる」とした。株価が1万円になっても1対5に分割されると同2000円が理論株価となるからだ。個人投資家がトヨタ株を、断然、買いやすくなる。

 トヨタの期初予想は株式市場では「保守的」とみられている。業績予想の前提となる為替レートも現在の実勢より約5円高い1ドル=105円と想定している。アナリスト予想の平均を示すQUICKコンセンサスでは22年3月期の連結営業利益は2兆8000億円。1ドル=120円の為替レートだった18年3月期の過去最高益(2兆4939億円)に急接近する。東京株式市場はトヨタの業績の上振れを、今後、株価に織り込んでいくことになる。

水素エンジン車で24時間耐久レースに参戦

 5月21日~23日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開かれた24時間耐久レースに、トヨタは開発中の「水素エンジン車」で参戦した。水素エンジンを脱炭素の実現に向けた選択肢の一つと位置付けており、レースを通じて技術の開発を加速させる狙いだ。

 レースは市販車を改造した車両を使い24時間でサーキットを何周できるかを競う。トヨタによると水素だけを燃料とした水素エンジン車によるレース参戦は世界初という。水素エンジンは既存のエンジンと基本的な構造は同じで、ガソリンの代わりに水素を燃焼させる。エンジンオイルの燃焼に伴う分以外に二酸化炭素(CO2)を排出しない。

 24時間でサーキットを358周、トータル1643キロメートルを完走した。レーサー名「モリゾウ」の豊田章男社長もドライバーとして出走した。「水素社会、そしてカーボンニュートラルの実現に向けた世界初の試みを、ぜひとも応援していただきたい」。豊田社長は5月23日の記者会見で水素エンジン車でのレース参入の意義をこう説明した。

 世界の自動車産業が電気自動車(EV)の開発に傾斜する中、トヨタはあえて水素自動車に挑戦した。「水素社会の旗手」との評価が高まったことが、トヨタの株価を押し上げたとのアナリストの分析もある。

 ただ、トヨタはEV戦線では「出遅れている」と見られている。世界でEVが本格的な普及期に入るとされており、トヨタを取り巻く環境は激変する。株価1万円という心理的に大きな節目をくぐり抜けるためにも、もう一段の株価支援策がほしいところだ。

(文=編集部)

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