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深野康彦「あなたと家族と日本のための、お金の話」

老後資金、2千万円不足どころか実は余剰?“老後必要な資金”の罠、本当に必要な金額とは?

文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー
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「Getty Images」より

 2年前(2019年)、世間を賑わせた「老後資金2000万円問題」を記憶している人は多いはずです。65歳から95歳までの30年間で、公的年金のほかに2000万円もの自助努力による老後資金の準備が必要という報告書を金融庁が作成したことが事の発端です。「そんなこと聞いてないよ!」「2000万円なんて貯められるわけない」等々、著名人を交えて連日ワイドショーに取り上げられたことが今では懐かしく感じられます。

 2000万円の根拠となった報告書が、総務省が公表している「家計調査報告(家計収支編)」なのですが、毎年公表されているにもかかわらず、翌年以降にその内容を取り上げた報道機関はほぼ皆無でした。「熱しやすく冷めやすい」「人の噂も75日」などといわれますが、単に毎年の数字の変化を取り上げても、人々の関心は低いのかもしれません。

 2000万円問題以降、コロナの影響もあると思われますが若年層を中心に「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」を始める人が急増していることから、金融庁の炎上商法(?)だったといえなくもないのですが、2021年に公表された家計調査報告を検証すると、なんと「老後資金を用意する必要はない」という衝撃的な数字が並んでいるので、ご紹介しておきましょう。

万人に共通の正解はない

 そもそも老後資金が2000万円不足するという根拠は、家計調査報告の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支」によるものです。その2017年のデータによれば、毎月の実収入20万9198円、実支出26万3717円、差額はマイナス5万4519円(赤字)になり、赤字額を12倍(1年分)して65万4228円、それを30倍にすれば1962万6840円となり、数字を丸めて2000万円の不足としたわけです。

 同様に計算したものが図版の数字になりますが、2000万円不足と試算されたときには2018年の不足額1507万3920円が公表されたのですが、この「家計収支」には一切触れられてはいませんでした。

 その2020年の数字を見ると、毎月の実収入26万6056円、実支出26万3662円、差額はプラス2394円(黒字)となり、30年間では86万1840円の余剰という結果になったのです。支出に大きな違いはありませんが、収入が5万6856円も増えているのですから、調査対象の収入が多かったと考えられます。大幅に収入が増えたというイレギュラーな要素が2020年にあったことから、同年を除いて改めて図の不足額を確認すると、最低が2019年の1165万3200円、最多が2015年の2243万7360円と、その差は1078万4160円もあります。2020年を加えればその差は約2300万円になり、うがった見方をすれば「2000万円」という数字ありきで報告書がつくられたと邪推したくもなるものです。

 たった8年の数字をみても、不足額に大きな違いがあるのですから、そもそも老後資金の過不足額には万人に共通の正解はないといえるのではないでしょうか。公表される数字を鵜呑みにするのではなく、我が家の基準、言い換えれば老後のライフスタイルによって老後のために準備すべき金額は異なるということです。

(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)

●深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

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