家具・インテリア国内最大手ニトリホールディングス(HD)は35期連続の増収増益に向けて好発進した。
2022年2月期第1四半期(21年3~5月)の連結決算は売上高が前年同期比24%増の2154億円、営業利益は15%増の427億円、純利益は14.1%増の291億円だった。四半期ベースで営業利益、純利益とも過去最高を更新した。コロナ禍の長期化で外出を控える消費者が住みやすさを求めて家具や家電を買い替える動きが底固かった。収納用品では自由に組み合わせられる壁面収納「Nポルダ」シリーズなど機能性の高い新商品が好調。洗濯機などは家庭向けの大きなサイズまで品揃えを拡大した効果が出た。外出自粛下、電子商取引(EC)も前年同期比16%増の195億円となった。
島忠との共同店舗で利益率を引き上げる
20年12月、ホームセンター大手、島忠へのTOB(株式公開買い付け)が完了し、今年1月、子会社にした。決算の最大の注目点は島忠の業績が、全体にどう反映するかである。島忠の買収に伴い、セグメントをニトリ事業と島忠事業に分けた。ニトリ事業の第1四半期の売上高は前年同期比2%増の1779億円、営業利益は11%増の411億円。売上高営業利益率は23.1%と高い。
今期から新しく加わった島忠の事業は売上高が377億円、営業利益は16億円。売上高営業利益率は4.2%にとどまる。仕入れ商品が中心の島忠は、PB(プライベートブランド)が9割を占めるニトリと比べると営業利益率は18.9ポイント低い。そのため全社の売上高営業利益率は19.8%と前年同期(21.4%)から1.6ポイント低下した。
似鳥昭雄会長は前期(2021年2月期)の決算会見で、島忠とのシナジー創出に向けた道筋を説明した。「島忠の家具部門は赤字」と指摘し、島忠で扱う商品についてもPBを拡充し、利益率を改善させる。島忠の売上高経常利益率を5年で、およそ2倍の12%(20年8月期は6.6%)にアップさせる計画を打ち出した。
その第1弾として6月11日、島忠との共同店舗「ニトリホームズ宮原店」をさいたま市にオープンした。「島忠・ホームズ宮原店」を改装した店で、ニトリと島忠のほぼすべての商品を取り扱う。1階はホームセンターで2階に机やソファなどニトリの家具を販売するコーナーを設けた。売り場面積は約1万1864平方メートルで、ホームセンター商品と家具など6万点以上を揃えた。
今後、島忠が持つ60店舗を「ニトリホームズ」として再出発する。これまで島忠がない地域にも新規出店を計画しており、「ニトリホームズ」を全国規模に広げる考えだ。ただ、「島忠」としての出店は止める。当面、「島忠」の看板を掲げ、繁盛している店はそのまま維持する。
ニトリHD副社長で島忠の会長を務める須藤文弘氏は、共同店舗を開設した6月11日の会見で「島忠の課題は商品開発力だ」と述べた。「ニトリのPB開発力を島忠に生かしたい」とした。似鳥会長は「ここで満足することなく、改善に改善を加え、地域に貢献できるような店舗づくりを進めたい」と強調した。
島忠との相乗効果が表れるのは来期以降
2032年に3000店・売上高3兆円という目標を掲げている。国内では出店余地が少なくなっている郊外型大型店の「ニトリ」に代わって、都心型小型店の「ニトリEXPRESS」やインテリア商品を扱う「デコホーム」が目標達成のカギを握りそうだ。
ニトリEXPRESSは17年3月、札幌市の札幌駅前にある商業施設・札幌エスタに1号店を出店したのを皮切りに32年には1000店舗体制を目指す。22年2月期にはニトリとニトリエクスプレスと合わせて21年2月末より40店増の507店とする。
ホームファッションのみを取り扱う「デコホーム」の出店目標は500店。今期は前期末より40店多い146店を目指している。新規の業態のアパレルブランドの「N+(エヌプラス)」は30代以上の大人の女性をターゲットに、おしゃれな商品を手ごろな価格で提供する(現在は閉店)。19年3月、ショッピングモール「ららぽーと富士見」(埼玉県富士見市)に1号店を出店。今期は4店増やし21店とする。
N+の当面の出店目標は200店だ。似鳥会長が経営コンサルタントの渥美俊一氏が提唱した「チェーンストア理論」の実践者であることはよく知られているが、200店という数字は渥美氏の理論に基づく。200店舗を超えるとチェーンストアは大きな成長力を発揮し始め、500店を超えると異次元の効果を発揮するというのが渥美理論の核心である。渥美理論を忠実に実行したことでニトリは成功した。
海外出店は中国(47店)、台湾(42店)、米国(2店)、東南アジア(2店)と積極的だ。今期末に国内・海外合わせて827店を計画しているが、これは32年、3000店舗体制を構築する通過点にすぎない。22年2月期の連結業績予想は売上高が21年2月期比22%増の8736億円、営業利益は4.5%増の1439億円、純利益は7%増の986億円を見込んでいる。予定通りなら35期連続の増収増益を達成できる。
ただ、予想売上高営業利益率は16.5%。21年2月期の19.2%から2.7ポイント低下する。島忠の低収益が足を引っ張る。似鳥会長は「島忠との共同店舗を増やしたいが、今期は増収増益の達成がかかっているので、(改装費用など)ありとあらゆる費用を我慢している」と胸のうちを明かす。在庫管理の徹底や値引き販売の抑制など店舗運営に関連する経費の削減に心を配っている。島忠との相乗効果が発揮されるのは、早くて来期以降になる。
(文=編集部)