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宮迫博之の功罪…天然素材での活躍、ひな壇システムの一般化、吉本興業契約システムの改変

文=藤原三星
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“闇営業騒動”以降、日に日にYouTuber化していく相方・宮迫博之に対して、蛍原徹はこの2年間何を思っていたのか。画像はABEMAにて配信された『アメトーーク特別編 雨上がり決死隊解散報告会』より)

 8月17日、突如として特別番組『アメトーーク特別編 雨上がり決死隊解散報告会』が配信され、32年間におよぶ歴史に終止符を打つこととなった雨上がり決死隊。同番組では蛍原徹の口から「宮迫博之がYouTubeを始めたことが解散を決意したきっかけ」と説明され、今やネット上では「宮迫が諸悪の根源」「雨上がり決死隊をつぶしたのは宮迫」と宮迫バッシングが吹き荒れている。

 しかし、「とはいえ、雨上がり決死隊の人気をここまでのものにしたのもまた、宮迫さんでした」と語るのは、数多くのお笑い番組を手がけるある放送作家だ。

「雨上がり決死隊は、ポストダウンタウン世代の急先鋒として頭角を現し、吉本印天然素材(1991年に結成された、吉本興業所属の当時の若手芸人等によるユニット)時代にはそのリーダーとしてメンバーを引っ張ったのも宮迫さんでした。その後、宮迫さんは、演出家と揉めて天然素材を抜けることになった際、東京ではまだ何ひとつ仕事がなかったにもかかわらず、『東京で勝負する』と決意。すると蛍原さんは、『雨上がり決死隊は宮迫やから、おれはお前についていく』と語ったという逸話はあまりにも有名。だからといって闇営業騒動以降の宮迫さんの罪が消えるわけではないですが、雨上がり決死隊という屋号をここまで大きくしたのはまぎれもなく宮迫さんであり、宮迫さんがいなければ、雨上がり決死隊の存続など不可能。それは蛍原さんも理解しているはずで、だからこその解散……という側面もあったはず。

 また、コンビ初の冠番組として『アメトーーク!』(テレビ朝日系)が始まったのが2003年、今から18年前ですが、当時の雨上がりさんといえばまだ若く、芸人として脂がのりまくっていた時期。普通の芸人なら番組内で我こそはと目立とうとするであろうところを、雨上がりさんは回し役に徹し、ひな壇芸人たちを盛り立てるという選択をした。

 結果、今や一般的となった『ひな壇システム』を世に広めることにも成功し、その結果として『アメトーーク!』は大人気長寿番組に成長したわけです。番組演出の加地さん(加地倫三・テレビ朝日プロデューサー)が優秀だったというのはもちろんあるでしょうが、宮迫さんが番組に出演する多くの芸人たちの“ハブ”となり、面白い話を引き出す才能に長けていたことも間違いない。しかし、そのことをみずからも意識し、それが芸人としての驕りとなり、今回の解散につながったともいえなくもないでしょうね」

YouTubeを始めずおとなしく謹慎していれば、今頃とうに『アメトーーク!』MCとして復帰していたはず

 2019年6月に闇営業騒動が発覚すると、みずから記者会見を開き、罪を認めながらも吉本興業側を批判。騒動に連なった他の芸人とは違って謹慎生活を受け入れることなく、翌2020年1月には自身のYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』を開設。しかしその第1回配信が、ともに記者会見を開いたロンドンブーツ1号2号の田村亮の復帰会見の前日であったことが、批判を浴びるなどした。

「あれも本当に宮迫さんらしいというか……。売れっ子芸人としてのプライドがあるから、騒動に巻き込んでしまった後輩たちに配慮し、ただ黙って謹慎するということが彼にはできなかったのでしょう。しかしまさにそのことが、彼が心から願った芸能界復帰をさらに遠ざけ、むしろ蛍原さんとの溝を深める結果となっていった。YouTuberとしてはチャンネル登録者数140万人超と堂々の結果を残しているのに、なんとも皮肉な話ですよね。

 改めて考えれば、2年前の闇営業騒動にかかわった芸人で、クビになった入江さん(カラテカの入江慎也)を除けば、一般芸能界に復帰できていないのは今や宮迫さんだけなんですよね。ロンブーの亮さんのように、半年か1年かきちんと謹慎してさえいれば、おそらく今頃はなんの問題もなく復帰できており、蛍原さんの横で『アメトーーク!』MCに返り咲いていたはず。しかし、その道を選ばなかったというか“選べなかった”のは、ある意味、宮迫さんの芸人としての能力が突出していたからともいえる。だからこそじっとしておられずにヘタに動いてしまい、その能力の高さゆえにYouTuberとしてそれなりの結果を出してしまい、そのせいで結局は相方から愛想を尽かされてしまった……」(前出の放送作家)

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ただ黙って謹慎するということができなかった宮迫博之は、騒動後ほどなく自身のYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』を開設する。蛍原徹との溝を深める結果ともなったYouTubeに、宮迫は今後完全にシフトチェンジするのだろうか。(画像は同YouTubeチャンネルより)
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『アメトーーク特別編 雨上がり決死隊解散報告会』の配信後の8月19日には、自身のYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』で「昨日のアメトーーク!を終えて、お伝えしたいことがあります」というタイトルの動画を配信。芸人仲間の流した涙は、彼にしっかり届いたのだろうか? (画像は同YouTubeチャンネルより)

期せずして宮迫は、“ガメつい”吉本興業に大きな変化をもたらした

 また、この闇営業騒動が、お笑い帝国・吉本興業の内部システムに大きな変化をもたらしたことも忘れてはならないだろう。吉本興業に近いある雑誌編集者はこう語る。

「この闇営業騒動をきっかけに、今までは契約書も交わさずになんでも口約束が多かった吉本興業がきちんと所属芸人と向き合い、契約システムを明確にし、タレントに配慮したプロダクションとして生まれ変わろうともがき始めたのは特筆すべきこと。実際あの騒動以降、吉本と契約書を交わした芸人たちはみな、非常に居心地がよくなったとささやき合っていますからね。今や、お笑い系のプロダクションのなかでも、芸人にとっての最優良企業として認識されているのでは。

 一方で、極楽とんぼの加藤浩次さんやキングコングの西野さん(西野亮廣)、オリエンタルラジオのふたりなど、さまざまな事情で吉本を離れる芸人も続出しました。と同時に、あの“ガメつい”で有名な吉本が『エージェント契約』という新たな契約形態を認めるにいたったのも、もとを正せば宮迫さんのあの騒動がきっかけです。

 つまり宮迫さんは、期せずしてそのような“新しい時代”を吉本にもたらしたともいえる。まあご本人としては不本意でしかないでしょうが、『吉本を変えた』という意味では、これも彼の功績のひとつとして、後世に語り継がれていくのかもしれません」

 身勝手な判断を繰り返し、相方から三下り半を突き付けられた形の宮迫博之。彼がお笑い界に残した功績が正しく評価されるには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。

藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。

Twitter:@samsungfujiwara

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