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最愛の家族を失って見つけた「孤独」という生き方…「人生で一番悲しい瞬間」からの再生法

文=小川隆行/フリーライター
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「gettyimages」より

 妻や息子、娘。大事な家族を失ったとき、人間は未体験の孤独感に苛まれる。常に楽しいひと時をともにした大事な家族が、この世を去った。「後を追いたい」――こんな思いにかられる人も少なくないはずだ。

「孤独」という生き方 「ありのままの自分」でいることのできる、自分だけの居場所を求めて』(光文社)の著者でノンフィクション作家の織田淳太郎氏も、そんな一人だった。愛する息子を白血病で亡くし、心は暗雲に覆われた。「一人になりたい」――そう感じて、実際に一人になれる場所を探した。

 織田氏の心境はものすごく理解できる。愛する妻と長年二人で暮らしている私が、仮に妻を失って一人になったとしたら、間違いなく同じ心境になるだろう。

「世間の雑音」から逃れられる禅寺へ

 織田氏は、息子を亡くした喪失感から「一人=孤独」に救いを求めるべく、ある禅寺を訪ねた。山奥にあるその禅寺は、鎌倉時代から続く歴史を持つものの、テレビもなければラジオもなく、携帯電話の電波すら届かない。「世間の雑音」から逃れられる場所である。

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『「孤独」という生き方 「ありのままの自分」でいることのできる、自分だけの居場所を求めて』(光文社/織田淳太郎)

 その寺で留守番や犬の世話をしながら、亡き息子との日々に思いを巡らせた。静寂に包まれる澄み切った空気の山奥で、座禅と読書に時間を使った。そんな織田氏を、住職は温かく見守ってくれた。時には話し相手になり、時にはそっとしておいてくれたそうだ。

 これ以上ない悲しみを味わった人間は、どうしようもない絶望感に襲われるが、禅寺での生活により、織田氏の心の中に潜んでいた絶望感は次第に小さくなっていった。

 達観、とでもいえばいいのだろうか。間違いないのは、織田氏が新たなステージに向かっていく、その扉が開いたことである。やがて、織田氏は禅寺の近くに小さな山荘を購入。月の半分をそこで暮らすようになった。

 本書は、そうした日々とともに、同じような境遇を味わった人たちへの取材をもとに構成されている。

SNSでのつながりに喜ぶ現代人の“もろさ”

 ここ最近のSNSの「賑わい」には、すさまじいものを感じる。

 私の知り合いに、フェイスブックでの承認申請が増えて喜んでいる人がいる。1日に100人ほどからくるコメントに返信をして悦に浸っているが、SNS上でのつながりとは、真の人間関係の足元にもおよばぬほどもろい気がしてならない。悪く言えば「うわべだけのつながり」である。

 自分の経験上、真の人間関係とは、酒を飲みながらさまざまな話をして、相手の感性と自分の感性をすり合わせる。いわゆる「気が合う」か否かを確認することで、初めて築かれるものだと思う。

 そう考えると、SNS上でのつながりとは想像以上にむなしくてもろいものだが、それでも多くの人がつながりを求めるのは、人間という生き物が「誰かとつながっていたい」からである。

 しかし、そうした気持ちがあっても、織田氏のように「人生で一番悲しい瞬間」を迎えると、今まで味わったことのない心境=「一人になりたい」と感じるようになる。

 がんばって働いてきたのも愛する家族を養うためであり、その家族がいなくなったとき、お金よりも大事なもの、として亡き家族を思い浮かべる。そうした経験をする人は少なくないだろう。

 愛する人を亡くし、生きることがつらくて仕方ない。あるいは、生き方に迷っている。そんな人たちに読んでもらいたい1冊である。

(文=小川隆行/フリーライター)

小川隆行/フリーライター

小川隆行/フリーライター

ライター・編集者。1966年生まれ。中山競馬場の近くで生まれ育ち、競馬場から徒歩5分の高校時代に競馬に目覚めて馬券買いを始め、ダイナカールに恋をする。拓殖大学卒業後、競馬雑誌編集者になり数多くの調教師、騎手、厩舎関係者、競馬予想家に取材を重ねてきた。主な著書に『アイドルホース列伝 1970ー2021』(星海社)などがある。

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