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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

人気ユーチューバー「おーちゃん」、ハチに刺され緊急入院…昆虫扱いのプロでも油断禁物

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「おーちゃんねる」より

 魚釣りと昆虫の動画を配信しているYouTuber「おーちゃん」。さまざまな昆虫を動画に登場させているが、そのなかでも過去に何度もスズメバチを素手で触る、手の上を這わせるなどしていることから、視聴者から「刺されないの?」と心配の声が上がっていた。

 その心配が今回、現実になった。

 おーちゃんは、スズメバチに刺されアナフィラキシーショック(即時型反応)を起こし緊急入院していたことを動画で報告。ハチ毒によるアナフィラキシーショックは死に至ることもあり、むやみにハチに近づくのは危険である。

 ハチに刺されると、我々の体の中にハチ毒に対する抗体ができる。そして再度、同じ種類のハチに刺された際に激しいアレルギー反応を起こし、アナフィラキシーショックという重篤な症状が発生することがある。アナフィラキシーショックになると、呼吸困難や血圧低下、意識障害などを起こし、死に至るケースもある。

 特にハチに一度、刺されたことのある人は、十分注意する必要がある。昆虫好きのおーちゃんは、ハチ毒の怖さも知っていたと思われるが、過去の動画でもハチに刺されている事実もあり、あまりにも自己防衛ができていなかったのではと思われる。

 ハチ毒の危険性について、予防医療研究協会理事長で麹町皮ふ科・形成外科クリニック院長の苅部淳医師に聞いた。

「このYouTuberのようにハチに接触することが多い方は、抗体を持っている可能性が高く、危険なのです。ハチ刺傷による死亡数は、国内で年間20人前後と報告されています。林業・農業の約40%、電気工事関係者の約30%はハチに対する特異的IgE抗体が陽性であったとする報告もあります。ハチ刺傷を経験することの多い林野事業に関連する職種は、ハチアレルギー体質者が多く存在し、ハチ刺傷により全身アナフィラキシー症状を起こす危険性が極めて高いことが明らかになっています」

秋に向けてハチが活発になる!?

 一般に晩夏から秋にかけてハチの活動が活発になるため、医療機関でもハチによる全身アナフィラキシーにより運ばれる患者が、これからの季節に増えてくる傾向にある。

「過去にハチに刺されて抗体を持っている方がハチに刺されると、急激なアレルギー反応を起こし致死的な経過をたどる危険性が高いので、そういった経験がある方は注意が必要です」

 アナフィラキシーショックと思われる症状が出た際は、一刻も早い治療が必要となる。ハチ毒によるアナフィラキシーショックは、ハチに刺された後、30分以内になんらかの症状が現れる。

「症状としては、全身性の掻痒感やじんましん、胃痛や吐き気などの消化器症状や血管性浮腫、喘息様症状から呼吸困難などの呼吸器症状、血圧低下によるショックなどの循環器症状が認められます。このような症状があったら、すぐに救急病院や皮膚科アレルギー科を受診してください」

 ハチ毒にアレルギーがあることを知っていれば、ハチがいる環境を避け、さらにアナフィラキシーが出た際に自己注射で治療できるエピペンというアドレナリン自己注射薬を携帯するなどの対処ができる。ハチ毒の抗体の有無は、医療機関で検査することができるという。

「当院でもハチ毒の抗体を持っているかどうかがわかる3種類のハチのアレルギー検査を行っておりますので、心配な方はあらかじめ受診してください。ハチ毒は非常に危険なものですので、くれぐれもアナフィラキシーショックを起こしたYouTuberのように、自分からハチに刺される環境に身を置くことはやめていただきたいと思います」

 おーちゃんは、これまでに10回以上ハチに刺されたことがあると語っており、自分は刺されても問題はないと考えていたのかもしれない。だが、ハチの毒は甘く見てはいけないということがよくわかったのではないだろうか。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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