新型コロナ治療の切り札となるか?「抗体カクテル療法」…入院または死亡リスク7割減の期待
新型コロナウイルスの感染拡大に拍車をかけることになるのではないかと、多くの人が不安を感じていた東京2020オリンピック。その不安は的中し、現在は「災害時レベル」といわれるほどの感染爆発が起きている。
そんななか8月13日、「抗体カクテル療法」として中外製薬の「ロナプリーブ」が承認された。軽症から中等症に対して治療効果が期待でき、その効果は「入院または死亡リスクを約70%減少する」「重症化の抑制と症状消失までの期間を短縮する」として注目されている。
抗体カクテルとは、2つの抗体蛋白を混ぜて投与する。その2つの抗体蛋白は「カシリビマブ」と「イムデビマブ」である。
新型コロナウイルスは表面に「スパイク蛋白」という鍵のようなものを持ち、その鍵が細胞に結合してウイルスが細胞内に侵入、増殖していく。抗体蛋白は、スパイク蛋白に結合し、ウイルスの侵入、増殖を阻止する。2種類の抗体を混ぜるのは、変異ウイルスへの効果を担保するためである。現在、猛威を振るうデルタ株への効果も期待できるといわれている。すでに実際に抗体カクテルを使用している医療機関もあり、その効果についは良好であることが報告されている。
各地で感染爆発が起こり、各自治体は頭を悩ませているが、そのなかでも大阪の感染者増加は顕著だ。
こういった現状を受けてか大阪府の吉村洋文知事が抗体カクテルについて、以下のようにツイートした。
<本日から「短期入院で抗体カクテル療法からのホテル療養」を始めました。なんで完治してないのに、ホテルやねん!最後まで入院させろ!と思われる方もいらっしゃると思いますが、より多くの人が治療を受ける為に必要です。重症化から一人でも多くの人を守る為にご協力下さい>
驚嘆でもあるが、賛同したい内容である。吉村知事の思いが国を動かし、抗体カクテル療法が標準治療となることを望むが、現状ではそのハードルは高いようだ。
抗体カクテル療法は、発症から7日以内で酸素を必要としない患者に有効性が期待できる。現状では、自宅待機等で急激な悪化が起きることも珍しくなく、抗体カクテル療法を受けるタイミングを判断する難しさがある。
また、現状では、抗体カクテル療法を受けることができる患者は、重症化リスクがある場合とされる。厚生労働省が示す重症化リスクは、以下の通りだ。
65歳以上高齢者
悪性腫瘍
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
心血管疾患
慢性腎臓病
高血圧
糖尿病 肥満(BMI値30以上)
喫煙
妊娠後期
重症化リスクを十分に考慮した判断が必要となり、今後の医療構築が課題となるだろう。
また、国の調達予定は20万回分ほどで、そのうち7万回分程度をすでに確保したことを明らかにしているが、新型コロナウイルスの終息までは、さらなる確保が必要となる。連日、自宅療養するなかでの死亡例も報道され、少しの猶予もない。菅義偉首相が、国民の命を最優先に考えた対応をされることに期待したい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)