外出自粛で“夜型化”が進行、3つの健康リスク…睡眠時間が増えても生産性は低下
東京都では、ついに4回目の緊急事態宣言が出され、“自粛疲れ”をしている方も多いと思います。また逆に通勤のない在宅ワークに慣れて、快適に過ごしている方も一定数いらっしゃいます。ただ、どちらのケースの方も就寝時刻が遅くなり、「夜型化」している可能性が高いです。
2020年9月に早稲田大学と株式会社askenが3万275人に行った調査では、睡眠時間は30分増えたものの就寝時刻が30分遅く、また起床時刻は1時間近く遅くなったと報告されています(早稲田大学HPより)。
私も、年間30社を超える会社をサポートしていますが、すべての会社の調査結果で睡眠が夜型化しているので、これは間違いないと思われます。とはいえ、睡眠時間自体は以前より確保できているので、一見何も問題ないようにもみえます。しかし、実はかなり重大で危険なリスクが3つも潜んでいます。それを今回は解説していきたいと思います。
夜型化のリスク(1):体重の増加
前出の早稲田大学等が行った3万人規模の調査では、起床時刻・睡眠時刻だけでなく、その間の体重の変化も調べています。
この図からわかるように、朝型生活になるほど体重は減り、夜型生活になればなるほど体重は増加しています。この体重の増減の原因が食事にあるのか運動不足にあるのかは不明ですが、少なくとも夜型化することによって体重が増加するのは、ほぼ間違いなさそうです。
夜型化のリスク(2):メンタルダウンリスクの向上
先の調査では「睡眠の質」についても調べていて、その結果は8割が「睡眠の質が改善していない・悪化している」でした。夜型化すると夜に活動したり、スマホやパソコンをいじったりすることが多くなるので、必然的に睡眠の質は下がってしまいます。
睡眠の質が下がるということは、「夜中に起きてしまう」「寝ていても眠れている感じがしない」など不眠症状的なケースが多くなります。さらに、不眠症状がひどくなるとメンタルダウンリスクが高まることが、さまざまな研究でわかっています。
そのため、睡眠時間だけでなく、睡眠の質も確保することが重要になってきます。
夜型化のリスク(3)仕事の生産性の低下
睡眠に関して、企業からもっとも改善依頼が多い項目が「始業時にしっかり集中できる状態になっていてほしい」です。一見当たり前のことのように思われるかもしれませんが、自粛でテレワークになってから、始業前30分以内に起床する人が急増しています。私も想像していなかったのですが、現場で睡眠改善のサポートに入ると、特に若い新人さんが学生の頃の超夜型にすっかり戻ってしまい、苦しんでいるケースを多くみかけます。
多少の個人差はありますが、頭が冴えるのは起床してから3時間以上が必要といわれます。自粛前は6時台に起床して、そこから通勤して多少体を動かせば、ほとんどの人は始業時刻には覚醒しており、仕事モードになっています。
しかし夜型化して起床が遅くなれば当然、始業時にまだ覚醒していない可能性が高いのです。仕事は準備と入りが非常に大切になってきますから、始業時刻に覚醒していないことは仕事の生産性の大きな低下につながる可能性が高いです。
以上の点から、自粛によって睡眠時間は増えたけれども、夜型化によって仕事や健康面においては、かなりリスクが高くなっているといわざるを得ません。
ただ、この自粛期間で睡眠マネジメントを身につけることができれば、自粛が解除されてからも、これからの時代の働き方に対応しやすくなります。ぜひこの機会に、睡眠スキルを身につけてみてはいかがでしょうか。
(文=角谷リョウ/パフォーマンスコーチ)