コンタクトレンズのメニコンは、犬の飼い主向けの会員制サブスクリプションサービスを始めた。飼い主の保険や関連施設の優待、獣医師が24時間電話で相談に応じる「&Dベーシック」を基本サービスとし、犬のしつけが学べる動画コンテンツや犬の保険などのサービスを上乗せすることで料金が変わる仕組み。目玉となるのは、飼い主が亡くなった場合や、やむを得ない事情で愛犬を手放さなくてはならない場合に引き取って飼養する「犬のみらい保障」を含むコースで、秋ごろに投入する見通しだ。
4月16日からサービスを開始しているのは、「&Dベーシック」にしつけの動画コンテンツか保険のいずれかを加える2つのコースで、入会金は3300円。月額会員費用は1650~7450円とサービスや犬のサイズによって幅がある。
秋ごろ導入予定の「犬のみらい保障」が含まれるコースの場合、「&Dベーシック」やしつけ動画、犬の保険も付いており、入会金は1万1000円。まずは小型犬のみのサービスとして運用する。月額会員費用は1万300円(小型犬)。すでに他社のペット保険に加入している場合は8690円(同)とした。飼い主の死亡以外にも要介護2以上の介護認定や介護施設へ入居した場合における犬の終生飼養をはじめ、長期入院や被災、海外赴任などによる一時的な預かりにも日数の上限や追加費用を設けることで対応する。
保護シェルターを地域交流拠点に
「犬のみらい保障」では、犬を引き取り飼養するための保護シェルター「&HAUS」を開設する。茨城県笠間市の廃校をリノベーションして利用することが決まっており、秋に着工する見通し。2022年4月の開業を予定している。
獣医師が監修する科学的根拠に基づいた管理方法で、犬に快適な生活環境を提供する。犬舎に閉じ込めずリビングルームのような空間をイメージしている。さらに、ドッグランやカフェなどを併設し、地域交流や地域活性化の拠点となるようなイベントを開催する計画だ。
では、なぜメニコンが愛犬向けのサブクリプションサービスなのか。同社は01年にコンタクトレンズのサブスクリプションサービスを導入した。一方、人間の眼科分野で培った高い技術と安全性への信頼をベースに動物眼科医療の分野へ進出したのは1997年で、2003年には動物眼科医療を専門に手掛けるメニワンを設立し、犬用眼内レンズや犬猫用コンタクトレンズなどを開発してきた。この2つのビジネスで蓄積した経験と技術がベースとなって生まれた。同事業は愛猫への展開も検討している。
さらに、サービスの肝となる「犬のみらい保障」を導入する背景には、犬の殺処分問題や高齢化社会が抱える課題を解決したいという考えもある。同事業担当者は、「シニア層が保護犬の譲渡を受けることは難しい。一方、日本における高齢化は進んでいるため、人がアニマルセラピー効果でより長生きでき、わんちゃんも幸せになることができる社会を目指す」と話す。
一般社団法人ペットフード協会が実施した20年の全国犬猫飼育実態調査によると、年代別での今後の犬の飼育意向は5年前と比べて低下傾向となっており、19年と比べ飼育意向低下が顕著なのは60代と70代だった。飼育阻害要因として、「別れがつらい」「最後まで世話をする自信がない」といった項目が他の年代と比べ、特に高い。犬との生活で得られる喜びへの期待感に反して最後まで世話をする自信や責任感への葛藤が垣間見られるとする。
コロナによる生活スタイルの変容もあり、新たにペットを迎え入れたいと望む人がいる。最後まで世話をするという責任感の重要さは言うまでもなく高齢者の場合は受け入れのハードルが高くなるのも事実。ただ、高齢者の孤独軽減などペットが果たす役割は大きいため、飼い主とペットの幸せを保障するサービスが広がれば、より豊かな生活の可能性を広げることにもつながる。