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「マーガリンは健康に悪い」は昔の話? トランス脂肪酸の量はバターのほうが多い?

文・取材=A4studio
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「Getty Images」より

 味わいはあまり変わらない印象のバターマーガリン。料理をつくる際、少々割高なバターの代わりにマーガリンを使う人も多いだろう。

 そんなマーガリンだが、「マーガリンはバターよりトランス脂肪酸が多く含まれているため健康に悪い」といったイメージがあるのも事実。しかし「最近のマーガリンは改良されている」「むしろマーガリンはバターよりトランス脂肪酸が少なくなっている」といった声も聞こえてくる。

 実際のところ、マーガリンはバターより体に悪影響を及ぼすのか。今回は株式会社Luce(ルーチェ)の代表取締役で管理栄養士の望月理恵子氏に話を聞いた。

2010年頃までのマーガリンにトランス脂肪酸が多かったのは事実

 そもそもトランス脂肪酸とは、どういったものなのだろうか。

「トランス脂肪酸とはマーガリンの調理過程で発生する、脂質を構成している成分である脂肪酸の一種のことです。これは、悪玉コレステロール値を上げ、善玉コレステロール値を減らす働きがあるといわれています。

 日本人の多くはもともとトランス脂肪酸の摂取が少ない傾向にあるため、そこまで気にする必要はないのですが、多量に摂取してしまうと、血管が狭くなったり血栓ができたりと、いわゆる動脈硬化の引き金にもなるともいわれています。それが原因で狭心症、心筋梗塞といった病気、冠動脈性心疾患や、糖尿病のリスクを高める場合もあるため、トランス脂肪酸を多量に摂取しないよう注意が必要なのです。

 2002年に開催された『食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合』の報告書で、トランス脂肪酸が冠動脈性心疾患のリスクを高める確実な証拠があるということが語られ、その後もトランス脂肪酸にはメタボリックシンドロームや糖尿病など、さまざまな疾患のリスクを高めることが立て続けに発表されたことがありました。

 そして、2010年頃までに製造されていたマーガリンのなかには、実際15〜20%という、かなりの高数値でトランス脂肪酸を含んでいるものがあったのも事実です。そういった時代があったため“マーガリン=体に悪い食品”という印象がついたといっても過言ではないでしょう」(望月氏)

トランス脂肪酸がかつての15分の1以下…だが栄養面でバターに敵わず?

 2010年頃まではトランス脂肪酸を多く含んでいたというマーガリンだが、望月氏曰く、その認識はすでに過去のものだという。

「驚かれるかもしれませんが、現在販売されているマーガリンのほとんどは、企業努力によってトランス脂肪酸の含有量が1%前後まで低減されているんです。むしろ、バターのトランス脂肪酸含有量は平均で3.3%なので、今やバターのほうがマーガリンよりトランス脂肪酸の含有量が多いものがあるというわけです」(望月氏)

 現在の改良されたマーガリンには、トランス脂肪酸の代わりにパーム油やヤシ油、飽和脂肪酸が使われているとのことだ。

「パーム油とは主にポテトチップスやパンなどの加工食品に含まれている、アブラヤシという木の実から得られる植物油のことで、ヤシ油とはいわゆるココナッツオイルのことです。そして飽和脂肪酸とは牛脂などに多く含まれているもの。いずれもマイナス面が報告されているトランス脂肪酸に比べれば、過剰摂取しない限り問題はない成分といえますね」(望月氏)

 では、現在のマーガリンは栄養面や健康面でバターに匹敵し、むしろより健康的だといえるということなのだろうか。

「そう簡単にいえるものではないのです。このトランス脂肪酸の数値に限っていえば、確かにバター以下のマーガリンが大半になっています。しかし、そもそも牛乳と食塩でつくられるバターと、植物性油脂や動物性油脂からつくられるマーガリンでは栄養面がまったく異なります。ですから、そもそもバターとマーガリンは、コーヒーと紅茶を比較するというぐらい、成分がかけ離れているのです」(望月氏)

バターとマーガリン、それぞれのメリットとデメリット

 バターとマーガリンの味や栄養・健康面には、それぞれどんなメリットとデメリットがあるのかも聞いておこう。

「バターは基本的には牛乳と食塩のみでつくられているので、風味やコクはマーガリンより上といっていいでしょう。またビタミンAを多く含んでいるので、肌や粘膜を健康に保ち、細菌に対する抵抗力を高めてくれます。ですが一方で、その値段の高さ、酸化のしやすさ、マーガリンよりもコレステロール値が高いなどのデメリットも存在します。

 一方のマーガリンは、あっさりとした風味や冷やしてもカチカチに固まらない利便性、そして改良によってトランス脂肪酸の低さはバターより優れているもといえますね。けれど主として液体の植物性油脂を使っており、そのまま冷やしても硬化しないため、乳化剤などを使用しているのです。この乳化剤が一概に健康被害につながるわけではありませんが、なかにはアレルギー被害を呼んでしまうものもあるため、注意は必要でしょう」(望月氏)

 近年のマーガリンは、健康被害につながるとの指摘もあるトランス脂肪酸が激減するという進化を遂げていた。だが、だからといってバターよりマーガリンが優れているということでもないようだ。料理の場面やお財布事情で賢く使い分けるといいだろう。

(文・取材=A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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