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高所得者ほどやっている節税方法…国、金融所得課税の見直しで「きっちり課税」

文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー
財務省
財務省(「gettyimages」より)

 このコラム執筆時点では来年度(2022年度)の税制改正大綱は公表されていませんが、来夏の参議院選挙を視野に入れれば小粒の改正でお茶を濁すことが予想されます。噂されている金融所得課税の見直しは、来年度の改正には盛り込まれないようですが、大綱には「再来年度以降は見直し」などという文言が盛り込まれる気がします。

 金融所得課税の見直しは、高所得者に応分の税金をきちっと負担してもらおうという改正です。「きちっと」などと書くと脱税しているのか? と勘ぐりたくなりますが、高所得者ほど総合課税と分離課税の違いをうまく活用して、合法的に節税を行って実質の税負担を軽くしているからです。

 給与や年金、事業所得、不動産などの収益は総合課税となり、その税率は所得金額に応じて段階的に税率が上がっていく累進税率。最高は所得税と住民税を合わせて55%になります。

 一方、上場株式、投資信託、預貯金などの利益に対する税金は、どんなに利益を確保しても税率は所得税と住民税を合わせて一律20%で済むのです。この税率の違いに着目し、高所得者ほど上場株式などの分離課税の商品で資産運用を行い、収益に対する税率を20%に抑えることで、全所得金額に対する実質の税負担を抑えるのです。

 なかでも所得が1億円を超える人の実質税負担が大幅に低下していることから、その人たちにきちっと税金を負担してもらうための金融所得課税の見直しが、「分配」を強調する岸田首相の御眼鏡にかなったわけです。

金融所得一体課税を逸脱

 金融所得課税の見直しを株式市場は悪材料と捉えたわけですが、財務省(国税庁)が掲げる「金融商品一体課税」との整合性をどうするのか、あるいは同課税を放棄するのかが気になります。金融所得一体課税という言葉を近年は見聞きすることが減っていますが、財務省はすべての金融商品から発生する収益をひとまとめにして税金(所得税と住民税を合算して一律20%)を課す、または損益通算ができる仕組みをこれまで推進してきました。

「上場株式等」といえば株式、投資信託、ETF、REITだったものが、国債や地方債、公社債投資信託なども加わったのは、金融商品一体課税によるものです。上場株式等と損益通算はできないものの、FX(外国為替商品取引)の税率を20%にしたのもその流れで、ゆくゆくは財務省(国税庁)が「特定口座」をフックとして全金融商品を同口座で管理するようにし、税金のとりっぱぐれがない、または簡易に税金が徴収できるようにと考えているのです。

 今回の金融所得課税の見直し、上場株式等の税率を引き上げる、税制上の扱いを分離課税から総合課税に変更する、あるいは一定の所得を超える人の扱いだけの税率を変更するなどの動きは、これまでの金融所得一体課税の流れから逸脱します。

 財務省として増税政策はウェルカムでしょうが、高所得者あるいは上場株式等といった一部の金融商品だけの税率を改定するのは、これまで進めてきた金融商品一体課税から政策転換を行う大英断になるので、プライドの高い財務省が安易に政策転換に応じるのか気になります。

 金融所得課税の見直し、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金制度)などの非課税制度との整合性が問われていますが、金融商品一体課税の仕組みがどう変わるのか否かが、個人投資家にとっての最大の関心事です。なお、本文中の税率には復興特別所得税は加味しておりません。

(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

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