資産形成の主役といえば、投資信託です。低コストで分散投資をするなら「インデックスファンド」を選ぶことになりますが、インデックスファンドが連動を目指す指数はさまざまです。
今回記事では、株価指数は「日経平均株価」と「TOPIX」どちらに投資するのがいいのか、アメリカの株価指数「S&P500」「NYダウ」「ナスダック」のいずれに投資するのがいいのか、ほかに投資したほうがよい指標はあるのかについて、考えていきたいと思います。
指標を構成している銘柄数は多いほどいい
インデックスファンドが連動を目指す指数はさまざまです。下の表に示したとおり、株式の指数(株価指数)だけでなく、債券やREIT(リート/不動産投資信託)に関する指数もあります。
たとえば、「日経平均株価と連動するインデックスファンド」を購入すれば、日経平均株価の値動きと運用成果がほぼ連動するわけです。インデックスファンドに投資することで、間接的にその指数を構成する投資先に分散投資するのと同様の効果が期待できます。
国内株式の株価指数でよく知られているのは、日経平均株価とTOPIX(トピックス/東証株価指数)です。日経平均株価は、日本経済新聞社が算出している株価指数。東京証券取引所(東証)1部に上場している銘柄の中から業種のバランスなどを考慮して選ばれた225社の株価の平均を基にして計算されています。日経平均株価に採用されている銘柄は、トヨタ自動車、ソニー、任天堂といった、日本を代表する会社ばかり。毎年1回見直され、数社ずつ入れ替えが行われています。「平均株価」ですから、単位は「円」です。一般に、株価の水準が高い銘柄の影響を受けやすいといわれています。
対するTOPIXは、東証が算出している株価指数です。東証1部に上場する2200銘柄以上の時価総額を合計したうえで計算します。基準日となる1968年1月4日の時価総額を100ポイントとして、そこからどのくらい時価総額が増減したかを「ポイント」単位で示します。計算の基になる時価総額は「株価×発行済み株式数」で示される、会社の規模を示す金額です。比較的、時価総額の大きな銘柄(大型株)の影響が出やすいのが特徴です。
日経平均株価と連動するインデックスファンドと、TOPIXに連動するインデックスファンド。日本株に投資するならTOPIXに連動するインデックスファンドがおすすめです。なぜなら、より広く分散投資ができるからです。日経平均株価が組み入れている銘柄数は225銘柄です。しかし、日本で上場している銘柄数は合計3800銘柄以上。いくら日経平均株価が日本を代表する銘柄を組み入れているといっても、日経平均株価と連動するインデックスファンドでは、225銘柄にしか分散投資できないのです。
その点、TOPIXに連動するインデックスファンドであれば、2200銘柄以上に分散投資したのと同様の効果が得られるわけです。それでもまだ3800銘柄には届きませんが、日経平均株価よりも多くの銘柄に間接的に分散投資することができます。
分散投資は、幅広い投資先に自分のお金を分散するほど、リスクを抑えて堅実に増やす効果が高まります。ですから、インデックスファンドを選ぶ際は、なるべく対象銘柄の広い(多い)株価指数を採用しているものを選ぶのがおすすめです。
なお、国内株式の株価指数で知られているものにもうひとつ、「JPX日経400」があります。JPX日経400は、東証に上場するすべての銘柄のなかから、「業績は良好か」「資本を効率的に活用しているか」といった点を重視して選んだ「投資家にとって魅力的な会社」400社の値動きを基にした株価指数です。もっとも、こちらも「400社」なので、TOPIXを利用したほうが分散投資に役立ちます。
アメリカの株価指数「S&P500」「NYダウ」「ナスダック」ではどれがいい?
このところ、米国株が投資家に注目されています。米国株式市場はほぼ右肩上がりで上昇していて、世界経済の中心でありながら、なお成長しています。GAFAM(グーグル、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、アップル、マイクロソフト)はもちろん、コカ・コーラ、マクドナルド、P&G、ネットフリックスなど、日本に住む私たちにも身近な会社がたくさんあります。
米国株が注目される背景には、FIRE(経済的自立と早期リタイア)がブームになっていることが挙げられます。FIREでは、投資で生活費を上回る不労所得を手に入れることを目指します。不労所得だけで生活できれば、資産は減りません。
億万長者にならなくても早期リタイアができるとあって、若い人を中心にFIREを目指す人が増えているのです。米国株は株主還元に積極的で、配当金も年4回出してくれます。不労所得を得るのにぴったり、というわけです。
投資信託でも、米国株に投資するインデックスファンドを利用すれば、米国株に間接的に投資できるのはもちろん、好調な米国市場の成長の力を借りて資産形成ができます。冒頭の「S&P500」「NYダウ」「ナスダック」は、米国市場を代表する株価指数です。
S&P500は、米国の株式市場であるニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック市場(NASDAQ)に上場する銘柄のなかから、主に時価総額の大きい500社が選ばれ、時価総額を基に計算される指数です。S&P500と連動を目指すインデックスファンドもたくさんあります。S&P500だけで、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。
NYダウは、米国を代表する30銘柄の株価を合計して30で割って算出する株価指数です。正式名称を「ダウ工業株30種平均」といいます。「工業株」とありますが、実際は工業と関わらない銘柄も含まれています。算出開始は1896年と、歴史のある株価指数です。
そしてナスダック(ナスダック総合指数)は、ナスダックに上場しているすべての銘柄の時価総額を基に算出される株価指数です。ナスダックには、3000銘柄以上が上場しています。新興企業が多く上場していることで知られていますが、GAFAMのような大企業、任天堂や日産自動車などの日本企業も上場しています。
インデックスファンドの指標として、なるべく対象銘柄の広いものを選ぶとした場合、3つの指数のなかであれば、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーでき、信託報酬の低いファンドが多い「S&P500」を選ぶのがよいでしょう。
米国株指標のおすすめは「CRSP USトータルマーケットインデックス」と「NASDAQ100」
ここまで、最初の問題に対する回答をしてきましたが、米国株に投資するインデックスファンドが連動する株価指数として、おすすめしたいものが2つあります。
ひとつは、「CRSP USトータルマーケットインデックス」(以下CRSP)です。CRSPは、米国株式市場の大型株から小型株まで、投資可能な約4000社ほぼすべての銘柄の時価総額を基に算出される株価指数です。したがって、CRSPと連動を目指すインデックスファンドを購入するだけで、米国株式市場全体に投資することができるのです。S&P500やナスダック総合指数よりも幅広く米国株式市場をカバーできます。
もうひとつは、「ナスダック100」(NASDAQ100)です。ナスダック100は、ナスダック上場企業のなかから選び出された、積極的に研究開発を行っている革新企業100社の時価総額を基に算出される株価指数です。GAFAMのような大企業も含まれており、ナスダックの時価総額の7割程度をカバーします。おもしろいのは、積極的な投資をしたことで赤字になっている企業でも、指標の構成銘柄に選ばれる場合があること。
つまり、ナスダック100と連動を目指すインデックスファンドを購入すれば、「CRSP USトータルマーケットインデックス」や「S&P500」と比べリスクは高くなりますが、新興企業のなかでも特に有力な投資先だけに絞って投資できるのです。
(文=頼藤太希/マネーコンサルタント、株式会社Money&You代表取締役)
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