QRコード関連の話題が続き、いまやすっかりキャッシュレス決済といえば「Pay」というイメージが強い。しかし、ここにきて元祖キャッシュレス決済といえるクレジットカードが、物理的なカードを持たない「カードレスカード」の発行を開始しており、存在感を示している。これは、従来のプラスチック製のカードが発行されず、スマホアプリ内にある会員番号や有効期限といった情報使って決済する新たなクレジットカード。ATMでのキャッシングなどプラスチックカードが必要な取引はできないが、紛失やスキミング被害などの心配がなく、かつ従来のクレジットカードの利便性が活かせるのが特徴だ。
三井住友カードでは「CLタイプ」として発行しており、主にネット決済などでクレジットカードを使っている層の利用を想定している。また、三井住友カードは「ナンバーレス(NL)カード」も発行している。これはプラスチックカードは発行されるが、その券面にカード番号が印字されておらず、盗み見などの被害を防ぐことができる。カードにはICチップが搭載されているので、タッチ決済にも対応。タッチ決済を多用している人向けといえるカードだ。
ナンバーレスカードはセゾンカードが手掛けているが、こちらはセキュリティ面と共に「シンプルで美しい」とカードのデザイン性もアピールしている。
「CL」も「NL」も、従来のクレジットカードと同じポイントシステムが導入されており、使えば使うほどポイントが貯まる仕組みだ。カードがなく、スマホだけで決済できるとなると、QR決済や電子マネーと利便性的にはほとんど変わらない。となると選ぶ基準はお得度になってくる。
そこで、出費が増えるこの年末に、どのキャッシュレス決済を使えばお得なのかを簡単に比較してみた。
クレジットカード
2020年6月に一般社団法人キャッシュレス推進協議会が行った「キャッシュレス調査」では、クレジットカードを「週一回以上利用している」と答えた割合が33.8%となり、キャッシュレス決済の中ではもっとも割合が大きかった。新たな決済方法が次々と誕生しているが、現状ではクレジットカードが日本で一番普及しているキャッシュレス決済といえよう。
クレジットカードの特徴は、基本的に支払いが後払いになること。実店舗のほかネットショップ、公共料金の支払いなどどこでも使え、何よりも海外でも手軽に使えるのが大きなアドバンテージだ。
お得度を見てみると、各社ごとにポイント還元率は異なるが、最低0.5%から最大10%以上までと広がりがあり、さらに最近では使う店によってボーナスポイントがつくなど、かなり細分化されてきている。
例えば、前述の三井住友カード(NL)の基本還元率は0.5%。しかし、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、マクドナルドで利用すると2.5%にアップする。その時に、Visaのタッチ決済かMastercardコンタクトで支払うとさらにボーナスが付き、合計5%還元となる。さらに今なら新規申し込みで最大7000円相当のポイントがもらえるので、相対的なお得度はかなりのもの。
とはいえ、クレジットカードは年会費がかかるものもあり、そのぶんを相殺すると考えると、お得度は下がる。しかし、年会費のかかるカードは各種損害保険や空港ラウンジ利用などの優待プランがついてくることが多いので、これらをどう換算するかも重要だ。
電子マネー
電子マネーは、現金の代わりに電子データで決済する方法で、事業者によって大きく3種類に分けられる。
1つめがSuicaやPASMOなど鉄道会社が提供する交通系サービス。2つめはWAONやnanaco、楽天Edyなど流通事業者が提供する流通系サービス。3つめはドコモが提供するiD、JCBによるQUICKPayなど、クレジットカードとスマホを紐づけるクレジットカード系だ。
電子マネーはカードを機器にかざすだけで決済ができるというスマートさがメリット。最近では電子マネーカードを取り込めるスマホも普及しているので、利便性は他のキャッシュレス決済とほぼ変わらない。ただし、いずれも事前にお金をチャージする手間が必要だ。
ポイントは決済時での還元はほとんどなく、現金やカードからのチャージ時に付与される。還元率が上がるケースは、相性の良いクレジットカードからのチャージで、例えばイオンカードセレクトからWAONにチャージすればWAONポイントの二重取りができ、還元率は合計1%に。同じく楽天Edyも楽天カードからのチャージで還元率が合計1%となる。電子マネー単体ではあまりお得度がないともいえる。
QRコード決済
QRコード決済はスマホで読み込むだけの簡単さがメリット。チャージ時にポイントが付与されることが多いが、基本的には同じグループのクレジットカードと紐づけたほうが還元率も高まる。例えば楽天ペイと楽天カードの組み合わせなら1.5%、PayPayとYahoo! JAPANカードの組み合わせで1.5%という具合だ。また、使用頻度によって還元率がアップするプログラムなどを各社が行っており、使い方次第で高還元率を目指すことができる。
また、電子マネーやクレジットカードとは異なり、大型キャンペーンやクーポン配布などが随時実施されていることも大きい。例えば、PayPayなら抽選で全額還元したり、上限はあるものの、支払いが半額となるクーポンが随時発行されるなど、ターゲットを絞った時のお得度は随一だ。基本還元率はクレジットカード単体よりも低くなるケースもあるが、キャンペーンによってお得になるため、利用するメリットは大きい。
このように三者三様のメリットがあるが、いまトータルで利便性とお得度に優れるのは、やはりQRコード決済だろう。クレジットカードでチャージを経由することでポイントの2重取りや還元率アップが狙え、しかもスマホひとつで決済が完結するので利便性も高い。また、楽天であれば楽天市場、PayPayであればPayPayモールなど同事業者のネットショップを使うことで、そのシナジーはさらに高まる。
また、QRコード決済は口座から直接チャージも可能なので、与信審査の必要なクレジットカードを持っていない人でもポイントの恩恵にあずかれる。
状況によって3種の電子マネーを細かく使い分けるのがベターなのだが、現実的にはクレジットカードでチャージ→QR決済コード決済というパターンがいま最もお得度が高いと言えそうだ。
(取材・文=清談社)