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バイアグラが保険適用に…診療報酬改定はEDに悩む男性に朗報?解決すべき課題も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
4月からバイアグラが保険適用に
男性の不妊治療も保険適用に(「Getty Images」より)

バイアグラが保険適用になる」と、話題になっている。1999年に日本で承認されたバイアグラは、ED(勃起不全)に悩む多くの男性のQOL(人生の質)を変えた薬といえる。しかし、これまで自由診療だったバイアグラなどのED治療薬は決して安価ではなく、二の足を踏む男性も少なくなかっただろう。

 ED治療薬が保険適用になれば、仮にバイアグラ1錠が1500円として患者の窓口負担はその3割の450円となるわけで、購入希望者には朗報となる。バイアグラの保険適用の真相を、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。

「2022年度診療報酬改定により4月から不妊治療への保険適用が拡大される施策の一環で、『勃起障害による男性不妊』と診断された患者さんにのみ、バイアグラなどのED治療薬が保険適用となります」

 診療報酬とは医療保険から医療機関に支払われる治療費のことであり、医療の進歩や日本の経済状況などを踏まえて適正な価格にするため、通常は2年に一度、改定が行われる。

「晩婚化や女性の社会進出が進み、不妊治療を希望する人は増加しており、不妊治療の保険適用拡大は社会のニーズに応えたものと評価できると思います。不妊の原因は様々あり、男性不妊が原因となっていることも少なくありません。あまり知られてはいませんが、男性不妊のひとつに勃起障害があります」

不妊治療に限る用途

「保険適応となるのは、あくまで男性不妊の勃起障害です。しかし、患者さんの『EDでのため不妊です』という自己申告すべてに対してED治療薬を保険適用で処方すると、男性なら誰でも処方してもらうことが可能になってしまいますので、一定の診断基準を確立する必要があると思います」

 確かに、「不妊治療のため」という男性の自己申告すべてにED治療薬を処方しては、診療報酬改訂の趣旨にそぐわない。しかし、現段階で示されている診療報酬改訂では、不妊治療の男性に関する要件は少ない。

「これまで自由診療で高額だった体外受精や顕微授精など、4月から女性では治療開始時点で43歳未満が対象となり、治療回数は40歳未満の場合、子ども1人につき6回、40歳以上43歳未満は3回が上限となります。男性不妊の場合には男性の年齢制限はありません。それでいうと80代でも90代でも、男性不妊が認められることになります。あくまで私の個人的見解ですが、パートナーと共に受診し、不妊であることを診断するなどの条件を設けるべきではないかと思います」

不妊の定義

 不妊の相談のために医療機関を受診することに抵抗がある人も少なくないと思うが、不妊の定義に当てはまるという人は、不妊治療を受けることを検討してもよいだろう。

「不妊症の定義は、『避妊を行わず性行為を行っても1年以上妊娠しない』こととされています。一般に何年も妊娠しないことを不妊と捉えている人も多いのですが、実際には1年が不妊と考える目安です。現代では妊娠を希望するカップルの10~15%が不妊といわれています。ご自身が当てはまると思う方は、最寄りの医療機関に相談することをお勧めします」

 ストレスの多い現代社会では、世代を問わず勃起不全に陥る男性も多い。不妊治療におけるED治療薬の保険適用が、男性不妊が世間に広く認識されるきっかけになれば、意義ある診療報酬改訂といえるかもしれない。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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