一年でもっとも寒さが厳しくなり、外出時にはマフラーや手袋などが欠かせない。この時季、「手や足の指先が赤く腫れて痛む」「鼻先や耳たぶが赤くなり、かゆい」といった症状に悩まされる人が増える。これらの症状は、冬の風物詩ともいえる「しもやけ」である。しもやけは昔の病気と思う人も多くいるが、実際には現在も患者は多くいる。しもやけの特徴や治療法について、麹町皮ふ科・形成外科クリニック院長の苅部淳医師に聞いた。
「しもやけは、皮膚科では正式な病名は凍瘡(とうそう)といいます。気温4~5度以下で、日内変動が10度以上となる冬に頻発します。その症状は手足、特に足指に多く、耳、頬、鼻、前腕などにも見られます」
しもやけは子供に多い傾向にあるが、大人でも水仕事が多い人や屋外での作業が多い人なども発症しやすい。
「しもやけの症状は、初期は赤い斑点や腫れで、重症化すれば水疱、びらん、潰瘍へと進行していきます。強烈な痛みやかゆみを伴うため、日常生活にも支障をきたします。また入浴、就寝時など皮膚温の上昇とともにかゆみが増強します。症状が悪化すると強いストレスがかかるため、早めの治療が必要です」
しもやけには以下の2つのタイプがあり、それぞれ特徴が異なる。
・樽柿型(たるがきがた):子供に多く見られ、手足が真っ赤に腫れる。
・多型紅斑型(たけいこうはんがた):大人に多く見られ、発疹、しこり、水泡ができる。
「しもやけの正確な原因は不明ですが、寒冷に血管が収縮すると、血液の循環不全が起こり、血液のうっ滞から滲出液が漏れ出て発症すると推定されています。また個人の素因である遺伝、多汗、栄養状態等も関与することになります」
血液の循環不全は、急激な温度差刺激によって起こりやすく、冬は暖かい屋内と寒い屋外との温度差が生じやすいことが、しもやけが多くなる要因である。
しもやけの予防と治療
同じ環境下でも、しもやけになりやすい人とそうではない人があり、遺伝的な要因も大きく関与すると考えられ、家族にしもやけになりやすい人がいる場合には予防を心がけてほしい。
「手足のマッサージが有用で、入浴時に2~3分マッサージするとよいとされています。また、寒さが1番の誘因となるため、手袋や耳あて、帽子、厚いウールの靴下など防寒をしっかり行うことが大切です」
しもやけになってしまった場合には、悪化しないようにしっかりと治療を行ってほしい。
「しもやけによる腫れやかゆみなどの症状がひどい場合は、ビタミンEの内服や外用薬、ヘパリン類似物質外用剤の塗布、ステロイド外用剤などが治療法です。かゆみに対しては抗ヒスタミン剤内服が一般的です。皮膚がくずれ、びらん、潰瘍へと増悪したときは、抗生剤の内服や外用、潰瘍治療剤を用いることもあります」
ビタミンEの内服薬は血管拡張作用があり、血流障害を改善する。また、ヘパリン類似物質の外用剤も皮膚の血流を改善し、しもやけに有効である。ステロイド外用剤は、炎症、かゆみを抑える。かゆみが強く、日常生活に影響を支障がでるようなら、抗ヒスタミン剤の内服薬が有効である。しもやけを疑う症状があれば、早めに皮膚科を受診してほしい。
通常、しもやけは暖かい季節になると改善するが、暖かくなってもしもやけが続く場合には、ほかの病気が原因かもしれない。
「冬以外の季節や好発部位以外にしもやけがみられたり、紅斑の経過が長く難治性の潰瘍となる場合は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病や全身性血管炎、サルコイドーシス、甲状腺機能低下症などの病気も考慮しなければなりません」
全身性エリテマトーデス、シューグレン症候群は膠原病であり、原因不明の自己免疫疾患である。自己免疫疾患とは、本来はウイルスや細菌など外敵から体を守る免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気である。膠原病でも、手の平や足の裏、手足の指にしもやけに似た赤い腫れが起き、さらに寒さが刺激となり症状が出ることもあるため、しもやけとの区別が難しい。
しもやけの治療をしても改善しない場合や、暖かい時期になっても症状が続くという場合には、医療機関を受診してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)