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トヨタ「bz4X」、あえて加速力を抑えた深謀遠慮…BEV市場で猛追の構え

文=木下隆之/レーシングドライバー
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トヨタ「bz4X」、あえて加速力を抑えた深謀遠慮
トヨタ初のBEV専用車「bz4X」

 トヨタ自動車が沈黙を破ったのは2021年12月14日のこと。豊田章男社長が、トヨタの電動化戦略を発表。アンベールされると、そこには17台ものEV(電気自動車)モデルが並んでいた。圧巻だったのである。

 それまでのトヨタは、BEV(バッテリー・エレクトリック・ヴィークル)に消極的だと批判されていた。世界で初めてハイブリッドを量産したメーカーだというのに、世界販売1000万台のなかに純粋なBEVは存在していなかった。電動化に消極的とされたのは、それが理由だ。それを否定してみせたのが、今回の会見だ。水面下で、すでにこれほど多くの電動車を開発していたのである。

「これでも電動化に消極的ですか?」

 豊田社長の言葉に溜飲が下がる。その第一弾が、今回デビューする「bz4X」である。まだプロトタイプの試乗だったこともあり、スペックなど全容は明らかにならなかった。国土交通省の認可待ちであり、正式データは公表できなかったのだ。その点からも、トヨタ初となるBEV専用車bz4Xの発表が急足だったことが想像できる。

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 bz4Xの走り味を一言で表現するならば、「自然」である。パワーの源をガソリンエンジンではなく電気モーターに依存するBEVは、これまでの常識を覆す特性である場合が多い。電気モーターは初速から最大パワーを炸裂させる。内燃機関が回転の上昇に比例して段階的にパワーをかさ上げしていくのとは対照的だ。それゆえに唐突な加速フィールが味わえる。ダッシュ力が過激なのである。

 だがbz4Xは、あえてその感覚を抑えている。これまでガソリンエンジンに慣れ親しんだユーザーが、自然にBEVに乗り換えられるようにとの配慮である。搭載するバッテリーの総電力量は71.4kWh。日産自動車の「リーフ」が62kWhだから、車格が「RAV4」と同等であることを思えば常識的な数字である。

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 それでもEV等価レンジ、つまりいったんバッテリーをコンセントに繋いで満充電すれば、航続距離は500kmを超えるという。スペックには現れない高効率であろうと予想する。BEVへの抵抗感のひとつが、航続距離の短さである。それを払拭する性能であるわけだ。

 駆動方式は2種類。前後にモーターを搭載する4WDと、前輪のみでモーター駆動する2WDから選択可能。モーターパワーは、2WDが一基で150kW、4WDは前後80kWずつで合計160kWと予想する。

 発進加速は鋭い。内燃機関に慣れたユーザーは驚くに違いない。だが、前述したように過剰な加速感を抑えている。そればかりかBEVの欠点、すなわち伸びのなさへの不満を解消している。速度が高まるにつれて、グイグイとパワーが漲る印象なのだ。この点も自然だといえよう。

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 ただし、BEVならではの低重心フットワークは磨かれている。BEVにとって最大の重量物である大容量のバッテリーを、床下に低く薄く搭載することが可能になり、重厚かつ軽快なハンドリングを盛り込むことに成功している。

 乗り心地は悪くないのに、足回りを固めた印象は薄い。クルマが深々と不自然な姿勢に陥ることがない。フラットな姿勢でコーナーをクリアするのだ。その点で自然な感覚には驚かされた。

 不自然さを抑えることで得られる自然なフィーリングを最大の特徴とするトヨタ初のBEVは、後発だという気負いはなく、ごく自然に振る舞う。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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