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垣田達哉「もうダマされない」

電気料金も食品も凄まじい価格高騰で消費税減税論…実は店側は即日対応可能?

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
電気料金も食品も凄まじい価格高騰で消費税減税論…実は店側は即日対応可能?の画像1
「gettyimages」より

 降って湧いたように出てきた年金生活者への5000円給付金だが、「選挙目当て」という批判と「物価高騰で苦しんでいるのは年金生活者だけではない」という声も大きく、政府は軌道修正をせざるを得ない状況だ。政府・与党は、本当に国民の窮状をわかっているのだろうか。

高騰しているのはガソリンだけではない

 物価の高騰が異常なのはガソリンだけではない。エネルギー関連価格は、いったいどこまで高騰するのか見当がつかない状況だ。

 資源エネルギー庁が3月16日に発表した14日時点のレギュラーガソリンの店頭価格は175.2円/リットルだ。1年前(2021年3月15日)の147.3円より約28円の値上がりである。石油元売りに支給している補助金17.7円がなければ192.9円だった。実質、約46円も上がっている。3月24日発表の22日店頭価格は、174.6円/リットルと0.6円下がったが、このまま下落するとは思えない。

 ガソリンの高騰を受け、政府は「トリガー条項(ガソリン価格高騰時に、特例税率分の25.1円を免除すること)」を発動して減税するかどうかを検討しているが、期限が3月末までの補助金を4月も延長する方向で調整されている。

 高騰しているのはガソリンだけではない。電気料金の高騰もすさまじい。東京電力の平均モデルの電気料金は、今年の3月分は8,244円で、1年前(6,408円)より1,836円も値上がりしている。しかも、4月分も115円値上げされ8,359円になる。まさに天井知らずの値上げが続く。

 ガス料金の高騰もすさまじい。東京ガスの標準家庭のガス料金は、今年の3月検針分は5,611円で、1年前(4,403円)より1,208円も値上がりしている。こちらも4月検針分が83円値上げされ5,694円になる。

 こうしたエネルギー関連の高騰は、消費者にも事業者にとっても大きな負担になる。事業者は、原材料の値上がり分とエネルギー関連の値上がり分を販売価格に転嫁しなければ商売ができないので、当然食品などの商品価格が高騰する。

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※レギュラーガソリン価格は、資源エネルギー庁発表

※電気料金は、東京電力の平均モデル

※ガス料金は、東京ガスの標準家庭

食品の高騰も異常

 加工食品の値上げも止まらない。食用油は昨年1年間で4回も値上げされたのに、4月には再度値上げされる。13カ月で5回の値上げは異常だ。日清オイリオやJ-オイルミルズは、1kgで40円程度高くなる。

 小麦製品も値上げが続く。輸入小麦は、すべて政府が一括して仕入れ、マークアップ(政府管理経費及び国内産小麦生産振興対策に充当)を加算して民間の製粉会社や醤油メーカー等に卸す仕組みになっている。売渡価格は、製粉会社にとっては原材料の仕入価格になるので、製粉会社の製造原価が半年ごとに増減することになる。

 政府の売渡価格は、20年下期は49,210円/トンだったが、1年後の昨年下期は61,820円、そして3月9日に発表された今年上期が72,530円である。1年半で約1.47倍の23,320円(1kg当たり約23円)も値上がりしているが、08年(76,030円/トン)に次ぐ、過去2番目に高い価格になっている。

 08年といえば、イラク戦争の影響から原油の先物価格が1バレル147.27ドルと過去最高を記録し、リーマンショックで世界的な大不況が襲った年である。今年は、エネルギー危機、穀物高騰に加え、ウクライナ侵攻のトリプルショックに見舞われている。08年以上に世界中が高インフレに悩まされる可能性が大だ。

 4月から小麦が値上がりする原因は「昨年夏の高温・乾燥による米国・カナダ産小麦の不作」や「ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢等による供給懸念」だが、ウクライナ情勢による影響はこの先、不透明であり、今年下期の小麦価格も上昇する可能性が高い。小麦だけでなく、トウモロコシや大豆など穀物全般が高騰する可能性がある。こうした影響は、穀物そのものの価格だけでなく、穀物を飼料とする畜産物価格も押し上げることになり、その負担は多岐にわたる。

年金支給者に5000円より消費税減税のほうが効果的

ガソリンや灯油、軽油は、地方でも都会でも事業者も生活者も使うから、トリガー条項を発動すればよい」とか「小麦粉製品は、パン類、麺類等多くの食品で使う小麦粉だけ安くすればいい」という状況ではない。総じて物価が高騰しているのだ。ガソリンや灯油を使わない人も、小麦粉製品をあまり食べない人も負担は大きくなっている。何かを安くすればいいわけではない。ましてや年金生活者だけが物価高騰に悩まされているわけでもない。

 消費税減税は、すべての商品の値下げになる。消費者だけではなく事業者も、年金生活者もそうでない人も、平等に負担を軽減することができる。しかも、消費税を減税するために事務事業を立ち上げる必要は一切ない。すべて小売店等の民間事業者が、自分たちで対応する。減税するための事務を請け負う事業者を公募する必要もなければ、新たな事務費も発生しない。

 ところが、年金生活者約2600万人に5000円程度の給付金を支給するためには約1300億円かかるが、それ以外に事務費として数百億円かかるという。Go Toトラベルなどもそうだが、給付金を支給するために、必ず事務経費が数百億円単位で発生する。給付金は名目だけで、事務事業を事業者に請け負わせることが目的になってはいないだろうか。

消費税は簡単に変更できる

 今の小売店や飲食店のほとんどのレジは、消費税が何%になっても即日対応できるようにシステムがつくられている。チェーン店であれば、本部で全店舗「明日の0時00分00秒から値下げ」という事前設定もできる。流通業やレジメーカー、レジシステム会社は「税率が何%になるかわからない」「品目によって税率が変わることもある」という経験をしてきているので、現在ではほとんどの税率変更に瞬時に変更できる体制を取っている。極端にいえば「明日から消費税を0にしてください」と決めても、ほとんどの店で対応できるだろう。増税ではないから、店側も喜んで積極的に実行するはずだ。

 消費税減税は、現場でいとも簡単にできる。しかも、苦しい生活に追い詰められている国民の負担を軽減する意味でも効果抜群の政策になるのだ。消費税減税は、早くて簡単にでき、そして物価高騰対策としては最大の効果を生むのである。選挙目当てを狙うのであれば、野党のお株を奪う消費税減税が一番効果的だろう。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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