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木下隆之「クルマ激辛定食」

日産の社運かけたEV「さくら」の全貌…乗り心地も操縦性も、軽とは思えぬ高級感

文=木下隆之/レーシングドライバー
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日産の社運かけたEV「さくら」の全貌
日産自動車「さくら」

 フル電動化を押し進める日産自動車にとっての重要なニューモデルの名は「さくら」だった。軽自動車EVの名に対して、巷で侃々諤々の噂や予想が飛び交っていたのだが、想像を超えた和名がまたひとつ話題になるに違いない。

 日本を代表する花の名を授けたことから、日産のさくらに対する期待の高さが窺える。電動化を急ぐ日産にとってさくらは、「リーフ」と「アリア」に続く3台目の量産EVとなる。日産がさくらに、これまでの知見をすべて注いでいることは確かである。日産は三菱自動車ともアライアンスを組んでいる。世界初の量産EVをリリースしたのは三菱であり、僚友の技術を全力で投入したのは明らかだ。

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 それもそのはずで、さくらは日産のとって成功させなければならないモデルである。というのも、EVにとっての障害のひとつである、決して安くはないバッテリー価格にある。それを抑えるためには、量産効果が必要だ。台数を稼ぐことでバッテリー価格も低下する。相乗効果を期待するためには、比較的価格優位性のある軽自動車のさくらには期待が集まる。実際に日産では、軽自動車「デイズ」並みの月産5000台ほどを期待しているという。さくらの成功は、リーフやアリアの生産コストに影響するわけで、いわば社運を背負ったモデルなのである。

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 搭載されるバッテリーの総電力量は20kWh。航続可能距離は180kmに達する。最高速度は130km/h。長距離移動を目的としたアリアは61kWhのバッテリーを搭載、470kmの航続距離を実現している(B6)。60kWhを搭載する「リーフe+」の航続可能距離は454km。40kWhのリーフは322kmだ。さくらに搭載されるバッテリーは、リーフのそれより半分の電力量なのにもかかわらず、180kmを無充電で走破できるのは計算だ。シティコミューターとしては十分に足が長いといえよう。

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 というのも、日産のデータによると、国民の半数以上が日常を30km以下の移動で済ませ、全体の94%が1日に180km以下の移動に留めているという。航続可能距離180kmであることはつまり、国民の94% の生活に対応可能であることを意味するのだ。もちろん、急速充電を繰り返せば、長距離移動ができないはずもない。だが、さくらをシティコミューターとして割り切るならば、必要にして十分なバッテリー容量だといえよう。金曜日の晩に自宅で満充電にすれば、月曜日から金曜までのウィークデーは充電せずに生活ができるとも見込んでいる。

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 さて、その走り味は、上質である内外装が高級EVであるアリアのテイストを感じさせることからも想像できるように、アリア風の純和風感覚が際立っている。ジャパニーズモダン感覚が磨かれている。

 走行中の静粛性も高い。ハンドリングも上質だ。乗り心地はとても優しいのに、操縦性が整っている。最大の重量物であるバッテリーを床下に低く搭載することで、重心が下げられている。よって、無用に足回りを硬くせずとも姿勢をフラットに保つことに成功している。結果的に高級感が際立っているのだ。

 パワーも十分にある。ベースになったデイズよりも、最大トルクは約2倍に達する。加速感が悪いはずもない。もちろん、EVだから加速は静かだ。軽自動車とは思えない高級感なのである。

 日産はさくらの成功に期待している。それはすなわち、日産のEV戦略の成功でもあるのだ。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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