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日本発の先端技術が解明した「ビール」にまつわる長年の謎

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※画像はイメージ(新刊JPより)。

 最先端の技術はAIやロボット、仮想空間などまだまだ普通の人の日常生活から遠いところにあるように思われがちだが実は案外身近なところにあり、知らず知らずのうちに体験していることも多い。

 たとえば、コロナ禍では居酒屋でお酒を飲む機会が減り、家飲みが増えたとされ、ビール各社は家飲み用の商品に力を入れている。「居酒屋の雰囲気込みでお酒が好き。家で飲むビールは味気ない」と考えていた人も、コロナ禍で「ビールは家で飲んでもうまい」と気づいたのではないか。実はここにも日本の最先端技術が利用されている。

先端技術で「ビール」にまつわる長年の謎が解明

 「『家飲みビール』はなぜ美味しくなったのか? – コテコテ文系も学べる日本発の『最先端技術』」坂田薫著、ワニブックス刊)では、オンライン学習サービス「サタディサプリ」や大手予備校で化学を担当している坂田薫氏が、「家飲みビールはなぜ美味しくなったのか?」「2050年、宇宙エレベーターが完成する?」「水素が日本にエネルギー革命をもたらす」など、私たちの生活に潜む最先端技術をわかりやすく解説する。

 おいしい家飲みビールに利用されている最先端技術とは、2013年に東京大学卓越教授の藤田誠博士らによって開発された「結晶スポンジ法」だ。結晶スポンジとは、ジャングルジムのような規則正しい空間をもっている粒子のこと。美しい結晶を作るのが困難な物質、すなわちX線解析法が使えない物質をこの結晶スポンジに流し込むと、分子が同じ方向を向いた状態で規則正しい空間に取り込まれ、美しい結晶のように並ぶ。これにより、今まで長い年月をかけて美しい結晶にしていた物質や結晶にできなかった物質が、結晶スポンジに流し込むだけでX線解析が可能になったのだ。

 この結晶スポンジ法によって、今まで構造がわからなかった分子の構造を決定したり、予想していた構造がまちがっていたことが判明したりと、さまざまな分野で活用されるようになった。

 この結晶スポンジ法は、ビールの研究にも取り入れられる。ビールの苦味成分はビールを保存している間にさまざまな物質に変化するが、それらの多くは未解明だった。

 「苦味成分は、どんな物質に変化しているのか」「いったい、なぜ苦味が変化するのか」という謎は、ビールが何百年も飲まれているのにも関わらず解明できていなかったのである。

 しかし、スポンジ結晶法により、変化した後の13種類の物質を特定。そして、その構造も明らかになった。キリンホールディングス株式会社で結晶スポンジ法を使ったビールの研究を行う谷口慈将博士によると、変化した後の物質を特定できたことで、苦味成分がどのような反応で変化していくかが判明。その反応を制御し、苦味成分が変化する前の新鮮な状態を保つことが可能になるという。その結果、長期保存しても、新鮮な苦味を楽しめるビールができるだけでなく、狙った苦味を作り分けることなどの応用も期待できるようになったのだ。

 本書を読むと、日本では日々私たちの生活を豊かに便利にするような研究が行われ、実際に私たちの生活に取り入れられていることがわかる。化学講師の坂田氏による化学の授業を本書で楽しんでみてはどうだろう。「知らなかった!」という驚きに満ちた、知的刺激に溢れる一冊だ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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