日本政府観光局(事務局・国際観光振興機構)が国土交通記者会などで7月20日に発表した「訪日外客数(2022年6月推計値)」には、衝撃的な数字が並んでいた。
発表によると、訪日外客は3カ月連続で10万人を上回り、添乗員付きパッケージツアーの受け入れも再開されたと評価する一方で、入国制限などの影響もあり、新型コロナ感染症のパンデミック以前の2019年同月比95.8%減の12万400人にとどまっているのだという。
新型コロナウイルス感染症の防止の観点から長らく厳しい入国制限を課してきた政府は今年3月、観光目的以外の新規入国を一定条件下で再開。続く6月には、「添乗員付きパッケージツアー」など観光目的での訪日外国人の受け入れも再開していた。しかし、日本国内は“コロナ感染第7波”の到来が叫ばれるような微妙な空気感になりつつある。その上で、政府観光局企画総室は以下のように公式見解を述べている。
「今後も各国の感染状況や出入国規制の変化、ウクライナ情勢による航空便の影響などを注視しつつ、インバウンドの本格的な再開に備えて地域の受け入れ環境整備(持続可能な観光への取り組み強化、ポストコロナの旅行ニーズへの対応など)とともに、きめ細かなプロモーションなどに努めていく必要がある」
かつて訪日客の多くを占めた中国は98.3%減
発表に付帯していた地域別訪日旅行市場の概況によると、韓国は1万1200 人(対 2019 年同月比 98.2%減)、中国は1万4700 人(同98.3%減)だった。特に中国について政府観光局は「中国政府外交部より海外旅行自粛の指示が出されていることから、観光客の日本への渡航は実質的に不可能な状況が続いている」と分析。日本への直行便数も「前年同月比を下回っている」とほぼ人的交流が途絶えた状態としている。
そのほか、台湾2400人(同99.5%減)、香港800人(同99.6%減)、タイ2500人(同96%減)、シンガポール1400人(同2019 年同月比 97%減)、米国9700 人(同94.5%減)、豪州1600 人(同95.7%減)、英国2000人(同 92.2%減)という厳しい数字が並ぶ。
一方、ベトナムのみ2万2900 人(同35.3%減)で突出して減少幅が小さかった。
大手旅行代理店幹部は「日本への直行便も少しずつ増加していて、回復基調にはある。ベトナムに関しては技能実習制度があるので入国者数の減少幅が(他国と比べて)厳しくないのかもしれないが、詳しいことはわからない。ただ、韓国やシンガポール、欧州、トルコなどすでにコロナ後を見据えた観光戦略を着実に打っている国や地域があり、何もしなければ日本は大きく出遅れることになる」と危機感をにじませる。
また、観光庁関係者は「あくまで個人的見解ですが、欧米のお客さんは“管理されたツアー旅行”を好まない、“自由な旅”を好む人が多い気がします。一方で、“ツアー旅行”の得意先だった中国の人たちは出国できない状況です。日本側でツアー客を解禁しても、欧米の人たちには関心がない。そういう状況があるのかもしれません」と話す。
国内の感染抑制施策とのバランスを取るのは難しい部分もある。政府の今後の方針が注目される。
(文=Business Journal編集部)