ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 鳥取・有害図書問題、三才側が反論
NEW

鳥取県が有害図書指定→アマゾン販売停止、有識者が議論なしで決定、判断基準が不明

文=Business Journal編集部
【この記事のキーワード】, , ,
鳥取県が有害図書指定→アマゾン販売停止、有識者が議論なしで決定、判断基準が不明の画像1
有害図書指定を受けた『アリエナイ医学事典』(三才ブックス公式サイトより)

 鳥取県が青少年健全育成条例に基づいて三才ブックス(東京都)の書籍3冊を有害図書に指定したところ、同条例が県外のECサイトでの販売規制を明言していたため、Amazonが販売を停止した問題で、鳥取県は8日、有害図書指定の理由を鳥取県庁在籍のメディアに発表した。三才ブックス側によると説明資料などが「唐突に」メールで送付されてきたという。こうした鳥取県の対応について、有害図書指定された3冊の編集を担当したラジオライフ編集部の小野浩章編集長は16日、Twitterと公式サイト上に反論を掲載。あらためて鳥取県の対応に疑問を呈した。

委員が議論せず投票→後になって理由を公表?

 同社は有害図書指定の経緯について同県に対して情報公開請求をしていた。しかし、県は指定に携わっている有識者委員が議論をせず、投票によって決まっていると説明し、「そのため議事録がない」と主張していた。ところが今回、県が公表した「指定理由」では、「ピッキングツール」の購入サイトを示していることなど12項目を挙げた。

 小野編集長は、同社の情報開示請求などを通じて得られた前述の鳥取県の説明を踏まえ、「今回の指定にあたっては、委員が図書を閲覧し、個別の発言をすることなく、投票によって指定すべきと判断されたことになり、そうであれば、本書面に記載されている指定理由についての議論はなされなかったと考えるしかありません。即ち、本書面に記載されている指定理由は、『後付け』によるものにほかなりません」と不信感をにじませる。

 そのうえで、「指定の内容に関しても言いがかりのようなものであり、基本的人権である『表現の自由』への大きな侵害であると同時に、『青少年への悪影響』などという都合の良い言葉を盾として使い、公権力を濫用していると判断するに十分すぎる内容でした。彼らは自分たちが運用している鳥取県の条例施行規則さえ、きちんと理解していないことが明確になったといえます。条例の枠組みを越えて、曖昧で主観的な『雰囲気』で指定していることを自白しているようなものです」と述べ、さらに以下のように法的な問題点を指摘した。

「鳥取県は、鳥取県青少年健全育成条例施行規則第 8 条の規定を根拠として、当該図書の表現の“一部”を理由として、有害な図書類にあたるとしています。しかし、今回慌てて出してきた本書面で鳥取県側が示しているのは、規則 8 条各号への該当理由にすぎません。

 例えば『殺人、強盗、 傷害、暴行その他の反社会的行為の準備又は実行行為の手段又は経過を詳細かつ著しく刺激的に表現しているもの』という規定が多用されています。

 この規定には、『全体的な内容が生命の尊厳を損なうような表現により殺人、暴力等を興味本位に取り扱うことを主眼としていると認められるもの』という重要な前提があります。 各号への該当性のみならず、この前提が認められなければ、指定基準には該当しません」

 小野編集長は当編集部に「個別の指定理由についての反論的なものは、改めて(ラジオライフの誌上で)記事化しようと考えています」と語った。

鳥取県・平井知事「ECサイトがコントロールすればいいこと」

 鳥取県の平井伸治知事は今月1日の会見で、有害図書指定問題に関する見解を示していた。(当該部分は1時間13分18秒以降)

 平井知事はまず青少年健全育成条例について「珍しい条例ではありません。全国にあります」と同県の条例の特殊性を否定。映画を例に出し、「“R指定”なんかありますよね、年齢制限は世界的にもかけています。できれば、こう、ちゃんと皆さん守っていただいて、子どもたちにはそういう映像に触れないようにしましょうというもの」と例え話をした。

 そのうえで「有害図書だとか、あるいは有害玩具そういうものを指定して”子どもたちに売ってはいけないという“規制で、本の出版を差し止めるとかそういうことは内容として入っていません。売る際に相手が18歳未満であれば売るのをやめてくださいということです」と述べ、「こういう作業を実は伝統的に我が国どこの都道府県でもやっています」と重ねて強調した。

 三才ブックス側の情報公開請求に関しては、条例と規則で定められた公開できる文書を出したとの趣旨を繰り返している。

 三才ブックス側が「県の有識者5人が議論せず、自由に決めている」という点を問題視していることいついては、「審議会の要領・要件に合うかどうかを判定している。我々に対していろいろご意見をいただいている向きはここを完全に誤解している。フリーに自分の気分で決めていると言っていますが、これは(有識者)委員の方に大変失礼です」とし、民事裁判と刑事裁判での裁判官の「自由心証主義」と同様であるかのように例示した。

 また平井知事自身の見解として「現物も拝見しましたけれども(有害図書指定は)妥当な判断だと思います」と語り、「(鳥取県庁記者)クラブの皆さんにも、(有害図書指定は)こういう理由だということをお示ししたいと思います」と後日、追加説明する方針を示していた。

 なおAmazonによる販売休止に関しては「子どもたちに売っていただきたくない。その売る手段として、実店舗のお店であろうが、あるいはネット店舗であろうが、これを子どもに売ってはいけませんよというところしか我々は規定しておりません」と説明。「ある特定のサイトが掲載を止めたか、なんかだと思うんですね。それはそのサイトの考え方です。サイトが 我々の子供たちに売らないようにコントロールすれば、全然問題ないはずです」と語った。

 Amazonが販売を休止した理由のひとつは2020年10月の条例改正で、子どもへの有害図書の販売を禁じた青少年健全育成条例16条に「インターネットの利用その他の方法により鳥取県内において前項に規定する行為を行った全ての図書類又は玩具刃物類の販売等を業とする者に適用する」とする第2項が”加筆”されたことだ。なお16条には罰則規定がある。

 本来であれば鳥取県外の自治体在住の18歳未満なら購入可能なはずなのだが、同条例を踏まえAmazonは販売中止、それ以外の大手ECサイトでも当該書籍を「18歳未満閲覧禁止コーナー」に振り分けた。

 この条例改正について、大手ECサイト関係者は「条例のバッファーゾーンがなくなった。法律にそう明記されればコンプライアンスの観点から最低でも、年齢制限をかけないわけにはいかなくなる。鳥取県の18歳未満のみに売らないようなシステムを特別に構築するのは、非現実的で非合理的。Amazonは販売を休止し、他の大手ECサイトが18歳未満閲覧禁止カテゴリーに移したのは、だから一律にサイト上で規制するしかない」などと疑問を呈している。

 地元メディア関係者は平井知事や県庁の対応について次のように語る。

「正直、平井知事も県も県議会もこれほど大事になるとは考えていなかったというのが本音でしょう。この条例改正自体“もともとECサイトも対象だが、あえて明記したほうが良い”という程度の趣旨でのものでした。グローバルな話になるとは思いもしなかったんじゃないでしょうか。

 県議会は今、“旧統一教会問題のみそぎ”で大忙しです。統一地方選も近い。条例改正の是非が話題になれば、改正案を通した知事、県議会の責任問題にもなってくる。県知事の会見で『記者クラブのみなさん』の言葉が何度もでてきていることからわかるように、地元メディアにさえ理解されればそれでいいと思っているのでしょう」

(文=Business Journal編集部)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

鳥取県が有害図書指定→アマゾン販売停止、有識者が議論なしで決定、判断基準が不明のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!