エイベックス会長の松浦勝人氏が自身のX(旧Twitter)アカウント上で、楽天カードの月間限度額を一方的な通知で10億円から1億円に下げられたと不満を吐露し、話題を呼んでいる。松浦氏は<想像するに、三木谷浩史氏(楽天の創業者兼CEO)の限度額を上げる際に、私の限度額も誤って上がってしまったのだと思います>とその理由を推察しているが、カード会社側からの一方的な通知で限度額が大幅な減額となるケースはあるものなのか。そして、なぜ松浦氏の限度額は大幅に下げられたのか。楽天カードに見解を聞いた。
楽天カードの人気は高い。お金の相談プラットフォーム「オカネコ」を運営する株式会社400Fが、オカネコユーザーの男女1530名を対象に行った「クレジットカード利用に関する意識調査」(調査期間:2023年6月14~21日)では、「あなたが所持しているクレジットカードを以下の中から教えてください」という質問に対して「楽天カード」がもっとも多く、回答者のうち55.23%の人が所持しているという結果になっている。マネー情報サイト「ザイ・オンライン」が昨年4月に発表した「2023年の最強のおすすめクレジットカード」の「メインカード部門」では、評者である専門家2人がそろって楽天カードを選出している。
高いポイント還元率で人気の楽天カードだが、昨年11月以降のサービス内容改定が一部で「改悪」と評判になったことは記憶に新しい。楽天カードの特典分の獲得上限ポイントは5000ポイントから1000ポイントに下がり、楽天プレミアムカードのポイント倍率は+2倍からゼロになり、上限は1万5000ポイントから5000ポイント(楽天カード分と合計)に削減。楽天銀行で楽天カードの引き落としをすると+0.5倍、さらに給与・賞与・年金を受け取ると+0.5倍だったポイント倍率が、それぞれ+0.3倍、+0.2倍に引き下げられた。楽天カード利用獲得ポイントの計算方法も変更となり、毎月のカードショッピング利用金額合計に対して100円につき1ポイントだったものが、1回のカードショッピングの利用金額に対して100円につき1ポイントというかたちに変更。たとえば999円の買い物を10回した場合、これまでは合計9990円に対して99ポイントついていたが、昨年11月以降は90ポイントとなり9ポイント下がることになった。
このほか、楽天プレミアムカードにおけるプライオリティ・パスでの海外空港ラウンジ無料利用の回数が無制限から5回までに変更(2025年以降)。楽天カード会員の「毎月5と0のつく日」の利用時の付与ポイント倍率は5倍から4倍に、「5と0のつく日特典」分の獲得上限ポイントは3000ポイントから1000ポイントに削減された。
一方、楽天グループのサービス利用者のなかで恩恵を被ることになったのが楽天モバイル契約者だ。「楽天モバイル 最強プラン」の契約者が楽天市場で買い物する際の付与ポイント倍率は最大4倍から5倍へ引き上げられ、楽天モバイルのキャリア決済を月2000円以上利用すると付与されるポイントは+0.5倍から+2倍に、Rakuten Turbo/楽天ひかり契約者の付与ポイント+1倍は+2倍にそれぞれ変更された。
「楽天グループは楽天モバイルを楽天経済圏ユーザ増大の重要なツールと位置付けており、楽天モバイル契約者の各種楽天サービス利用時のポイント獲得面などでのメリットを大きくする戦略を取っている。その分、グループ全体で帳尻を合わせるために他の楽天サービスのポイント還元率などを削っているということだろう」(大手キャリア関係者)
<私は毎月1億円近く使用していたので、正直言って困っています>
そんな楽天カードをめぐって松浦氏は10日、以下のように投稿し話題を呼んでいるのだ。
<先日、突然楽天カードから連絡がありました。僕の楽天カードの限度額を下げるとのことでした。これまで月間10億円の限度額が、一方的な通知で1億円に減らされると言われました。しかし、私は一度も限度額を10億円に上げてほしいとお願いしたことはありません。勝手に限度額を上げて、今度は勝手に下げるとは、どういうことでしょうか>
<これはおそらく楽天のミスで、想像するに、三木谷浩史氏(楽天の創業者兼CEO)の限度額を上げる際に、私の限度額も誤って上がってしまったのだと思います>
<私は毎月1億円近く使用していたので、正直言って困っています。担保もなしに10億円の限度額を設定してくださった三木谷氏には感謝していますが、結果的にこのような対応をされると、がっかりします>
確かに松浦氏がこのポストに添付している過去の利用明細をみると、ひと月の利用額が1億7000万円以上の月もあり、限度額が1億円になると「困ってしまう」というのも納得できる。
そこで楽天カードに見解を聞いたところ、以下回答が寄せられた。
「与信状況についてはお客様の個人情報となりますので詳細の回答を控えさせていただきます。当社はクレジット取引における基本方針として、適正与信の考え方、加盟店取引の方針、関連法令等の遵守を盛り込んだ『クレジットポリシー』を制定しており、ポリシーに沿った運用を行っております。市場の変動やリスク要因に対応するため定期的に与信方針の見直しを行っており、個人与信枠に関する基準を改定する際は、事前に告知期間を設けて対象となるお客様へのご案内を行う場合がございます」
楽天カードでは契約者の利用額の限度額が下がることはあるのか。また、下がる場合、どのような理由によるのか。
「一般的に、当社では個人与信枠に関する基準の改定や、カード利用可能枠の法定途上を含めた定期・不定期の途上与信により、お客様のカード利用可能枠が変動する場合がございます」(楽天カード)
「使い切ることができないポイント」が累積
ちなみに松浦氏は昨年6月にもX上に
<楽天ポイントって期限あんですかね?1ヶ月に50万ポイントしか使えないから年間6億以上カード使うと増え続けるんですが>
と投稿。楽天カードでは、原則100円の利用ごとに楽天ポイントが1ポイント貯まる仕組みとなっており、楽天カードで年間6億円以上を利用すると獲得ポイントは600万ポイント以上となる。ダイヤモンド会員の場合1カ月のポイント利用上限が50万ポイントと設定されているため、使い切れずにポイントが貯まり続けるケースが起こり得る。松浦氏は<年間6億以上使ってるんですが、一生増え続けるんですか?>とも投稿していた。
一般の人々が普段、楽天カードを利用するうえで意識する機会は少ないが、実は楽天ポイントには1カ月あたりに使うことができるポイント数に上限がある。プラチナ会員、ゴールド会員、シルバー会員、レギュラー会員は10万ポイント、ダイヤモンド会員は50万ポイントが上限となっている。1ポイント当たり1円換算で支払いなどに充当できるが、ダイヤモンド会員の場合、毎年コンスタントに楽天カードで6億円以上を利用するようなユーザにとっては、年に600万ポイントまでしか消費することができない今のシステムでは、毎年「使い切ることができないポイント」がどんどん累積していくことになる。
中堅IT企業役員はいう。
「松浦氏はYouTubeチャンネルでも三木谷氏と交遊があることを明かしているので、本気で怒っているというわけではない。また、楽天カードで限度額に達したとしても別のカードをたくさん持っているだろうから、困るようなことはないだろう。むしろ、なぜ松浦さんほどのセレブが楽天カードを持っていて、さらにヘビーユーズしているのか、その理由のほうが興味深い。最近のお金持ちはカード選びでステイタスよりもポイント還元率や各種特典など現実的なメリットを重要視する傾向がある。松浦氏のお眼鏡にかなうくらい楽天カードが魅力的ということなのかもしれない」
(文=Business Journal編集部)