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AIが変えた、女性たちの「その後」…「WOMAN AI AWARD 2026」が示す新たなロールモデルの形

2026.05.08 05:55 2026.05.08 00:32 経済
取材・文=昼間たかし
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Women’s AI Day 2025の様子

●この記事のポイント
・Women AI Initiative Japan(WAIJ)が、AIに挑戦し自らを変えた女性を讃えるアワード「WOMAN AI AWARD 2026」を7月6日に開催する。エントリー開始からわずか10日で100件近くの応募があり、関心の高さが浮き彫りになった。
・WAIJにはサイバーエージェント・ソフトバンク・マイクロソフト・メルカリ・富士通など20社が「女性のAIチャレンジ応援宣言(MIRAIα)」に賛同。アワードを起点に、企業との実際のキャリアマッチングまでを視野に入れた生態系が整いつつある。

 AIを活用して自らのキャリアや生活を変えた女性たちを、社会のロールモデルとして広く発信する――。一般社団法人Women AI Initiative Japan(WAIJ、代表理事:國本知里)が主催する「WOMAN AI AWARD 2026」が、7月6日に東京都内で開催される。

 WAIJは2023年11月に任意コミュニティとして発足し、2025年5月に一般社団法人化。女性AI起業家育成プログラム「RAISE HER」を東京都スタートアップ支援事業「TOKYO SUTEAM」との協定事業として2期にわたり実施し、Google Japan(渋谷ストリーム)でのデモデーを開催するなど、世界的テック企業も注目する取り組みとして知られる。サイバーエージェント・ソフトバンク・マイクロソフト・メルカリ・富士通など20社が賛同する企業ネットワークも構築し、今や単なる支援団体を超えた女性AI人材の社会インフラとなりつつある。今回のアワードは、その活動をさらに広げる新たな試みだ。

 今回は統括マネージャーの平理沙子氏に、アワード開催の背景と意義を聞いた。

目次

起業家だけじゃない…AIで変わった、すべての女性へ

 WAIJがこれまで取り組んできた「RAISE HER」は、生成AIを活用して起業を目指す女性のためのアクセラレーションプログラムだ。今回の「WOMAN AI AWARD 2026」は、そのフェーズを大きく超える。

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「RAISE HER」デモデーの様子

「RAISE HERは起業家に特化したプログラムでしたが、このアワードは、AIを学んで自分のキャリアを変えた女性、育児中にAIで業務効率化を実現した女性、地方の保守的な環境でAIに挑戦している女性……そうしたすべての女性に光を当てたいと思っています」(平氏)

 エントリーはスキルレベルや肩書を問わない。審査基準の根幹に置かれているのは「共感性・独自性・変革性」の3軸だ。華々しい実績よりも「AIと向き合い、自分を変えようとした」という意思と行動のプロセスが問われる。

 エントリーは4月27日に開始。ゴールデンウィーク直前というタイミングにもかかわらず、10日足らずで100件近くの応募が集まった。

「正直、想像以上の反響でした。PTAでAIスキルを活かしている方、地方の市役所で保守的な環境の中でも挑戦しているという方など、本当に幅広い層からエントリーをいただいています」(平氏)

76歳から15歳まで――平均年齢42.4歳が示すAIの広がり

 応募者の顔ぶれは、AIの「今」を映し出している。

 職種別ではIT・テック系が約半数を占めるが、残り半数は教員、看護師、市役所職員など、いわゆる「非IT系」の女性たちだ。年齢層は30代が最多だが、60代が3人、最年長は76歳。一方で最年少は15歳の高校生。平均年齢は42.4歳となっている。

「デジタルネイティブ世代だけがAIを使いこなしているというイメージとは、全く異なる現実があります。40代・50代の方も多く、専業主婦期間を経て派遣社員として働いていた方が、AIを学んで正社員に復帰したというエピソードも届いています」(平氏)

 AI活用歴については、1〜2年が最多で3分の1を占め、2年以上のいわば「古参AI層」も3分の1に達する。ChatGPTが世に広まった2022年ごろから早々に使い始め、着実に成果を積み上げてきた女性たちが、満を持してエントリーしてきているともいえる。

 エンジニアリングの知識がなくても、自然言語でAIに指示を出すだけで業務改善やプロダクト開発ができる時代になった。ノーコード・AIコーディングツールの急速な進化が、これまで「自分には無理」と諦めていた女性たちの背中を押している。

「インポスター症候群」と他薦という選択肢

 国際的なコンサルティング機関KPMGの調査では、女性役職者の75%が「インポスター症候群=自分の成果を過小評価してしまう心理傾向」を経験したと回答している。AIに挑戦し、実際に周囲を変えている女性ほど、「自分の歩みなんて大したことではない」と感じ、自薦をためらう傾向にある。

 こうした現実を踏まえ、「WOMAN AI AWARD 2026」では他薦を積極的に歓迎している。男性が身近な女性を推薦することも可能だ。

「実際、男性の方からの推薦も予想以上に届いています。自薦と他薦がほぼ1対1という状況で、自分で手を挙げる勇気を持った女性がこんなにいるんだと、改めて驚いています」(平氏)

 経営者・管理職にとっては、自社でAIを使いこなすメンバーを推薦することで、企業のAI活用・人材育成・ダイバーシティ経営のPRにも繋がる。受賞者はWAIJのオウンドメディアや各種イベントで発信される機会が設けられており、アワードを受けて終わりではない継続的な支援の仕組みが整えられている。

専門性×AI――ブランクを越える「ブースター」としてのAI

 今回のエントリーで特に目立つのが、「育児中×AI」と「これまでの専門性×AI」という2つのパターンだ。

「育児や出産でブランクが生じた女性、夫のキャリアを優先して駐在に帯同した女性……そういったライフステージの変化で、どうしても自分のキャリアを後回しにせざるを得なかった方が、AIをきっかけに自分を取り戻していく。そのリアルな変化に、何度も胸を打たれています」(平氏)

 AIは単なる効率化ツールではなく、これまで積み上げてきた経験や専門性を「何倍にも増幅するブースター」として機能する。看護の知識、教育の経験、長年の事務スキル――そうした蓄積がAIと掛け合わさることで、まったく新しい価値として開花する事例が相次いでいる。

 一方で、事務職など女性の割合が高い職種がAIによって代替されるリスクも現実として存在する。WAIJが独自に実施した「女性AI人材白書2025」(全国20〜59歳の女性1,116名対象)によれば、生成AIを日常的に活用している女性はわずか約3〜5%にとどまる。しかし「女性と一緒に学べる場に参加したい」と答えた割合は80.6%に達しており、潜在的な需要の大きさが浮き彫りになった。経済産業省の推計では、2040年には事務職で214万人の余剰人材が生まれる一方、AI・デジタル人材は326万人不足するとされており、女性がこの構造的ミスマッチを埋める鍵を握っている。

「だからこそ、諦めるのではなく、AIを使って変わっていける、という期待感を社会に示すことが重要だと思っています。このアワードがそのきっかけになれば」(平氏)

アワードの先にあるもの

 審査員には、前内閣総理大臣補佐官(賃金・雇用担当)を務めた矢田稚子氏、SOMPOホールディングス執行役員常務でグループChief Data Officerの村上明子氏、昭和女子大客員教授でジャーナリストの白河桃子氏など、政策・ビジネス・メディアの各分野を代表する顔ぶれが揃った。

 今回のアワードは東京都の補助事業ではなく、WAIJが独自に立ち上げた取り組みだ。その意味でも、組織としての自走を示す節目となる。

 背景にあるのは、WAIJが着実に積み上げてきた企業との連携だ。サイバーエージェント・ソフトバンク・マイクロソフト・メルカリ・富士通・日清食品HDなど20社が「女性のAIチャレンジ応援宣言(MIRAIα)」に賛同しており、受賞者はこうした企業群とのネットワークにも接続される。転職・副業・キャリアアップの実質的な機会創出まで視野に入れた仕組みは、表彰イベントの域をはるかに超えている。

 さらに9月には「Women AI Update」と題したイベントも予定されており、受賞者が登壇するセッションや参加企業とのネットワーキングも実施される予定だ。WAIJは2026年に個人5万人・法人100社への支援を目標とし、2030年には100万人規模への拡大を見据えたロードマップを描いている。

「SNSだと、どうしてもアルゴリズムに最適化された投稿ばかりが目に入る。でも本当に地に足のついた形でAIを活用している女性たちの姿は、なかなか見えてこない。このアワードを通じて、そういうリアルなロールモデルを社会に届けたいんです」(平氏)

 エントリー締め切りは2026年5月13日(水)23時59分。他薦フォームへの所要時間は約1分とされている。「AIがある時代に、あきらめなくていい」――そのメッセージを体現した女性たちの物語が、7月6日の表彰式で明かされる。

(取材・文=昼間たかし)

エントリーフォーム WOMAN AI AWARD 2026

公開:2026.05.08 05:55