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すぎもとたかよし「サラリーマン自動車ライターのクルマ業界ナナメ斬り!」

ダイハツ新型ロッキー、販売絶好調だけど…“派手顔”にトヨタデザインの影?

文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター
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ダイハツの新型ロッキー

 ダイハツの新型ロッキー/トヨタライズの販売が絶好調だ。

 もともと最近のSUVブームが底辺にあることに加え、日本ではやっぱり使いやすい5ナンバーサイズ。しかも、そうやってコンパクトゆえに価格もお手頃と3拍子が揃った感じ。

 とくにライズは、そこに圧倒的なトヨタの販売力が加わり、なんと今年の1月では軽を除く乗用車の登録台数で首位を獲得してしまった。ロッキーは21位に止まったけれど、OEM販売として考えれば両社ともがウィン・ウィンな状況なんである。

 けれども、僕はこの2台にとても残念なイメージを抱いている。その理由は単純で、「顔」を中心としたスタイリングがあまりにも酷いからである。

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トヨタ・ライズ

 ご存知の方も多いと思うけれど、ロッキーの元になったのは、2017年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「DNトレック」だ。ダイハツはモーターショーに毎回ユニークなコンセプトカーを複数用意するけれど、その中でもこの「DNトレック」は群を抜いて完成度が高かった。

 コンパクトSUVとしてグッドバランスのプロポーション。余計なラインがなく適度な張りを持つ面、前後でイメージを統一したシンプルなランプ類。一見して「これは市販前提だな」と思わせる出来で、だからそのデビューを楽しみにしていた。

 ところが、昨年の東京モーターショーに展示された量産型を見て愕然としてしまった。あのシンプルで清潔感のあった「DNトレック」の顔が、まるで失敗したアウディみたいにガチャガチャではないか。それに合わせ、サイドやリアにも余計な付加物が加わって全体的に騒がしくなってしまったのだ。

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ダイハツのコンセプトカー「DNトレック」

突き詰めればユーザ側の課題?

 一体、なぜこんなコトになってしまったのか? 担当のデザイナー氏の話では、実際に販売するとなると、やはりもっとSUVらしい力強さが必要だと判断されたのと、OEM先であるトヨタの「デザイン・フィロソフィ」に合わせ込む必要があったからだそう。

 トヨタのデザインというのは、「キーンルック」とか「アンダープライオリティ」などと呼ばれているもの。最近の同社のクルマは妙に左右に引き伸ばされたランプや、異様に大きなグリルによる派手な顔が特徴だけど、あの一連の表現のことである。

 つまり、両社で大半のパーツを共用しつつ「あの顔」になるようデザインを変更したと。実際、トヨタ版のライズはさらに騒がしいフロントフェイスで、兄貴分のRAV4に劣らない感じだ。ベースとなるロッキーはそこまでじゃないけれど、やっぱり相当にガチャついてしまった。

 そんな理由であの「DNトレック」の出来のよさをひっくり返してしまうなんて、なんてバカげた話だと僕は思う。ただ、しかしだ。冒頭のとおり、ロッキーもライズも売れている。しかも絶好調なんである。

 ここはもう、トヨタのマーケティング力の勝利かと。「カワイイ」だの「マイルドヤンキー」だの、そういう日本人の平均的な嗜好を見抜くトヨタの観察力は抜群に鋭く、「DNトレック」の美しさなんかより、大口を開けた獅子舞のような顔がウケることを十二分に知っている。

 社長自ら「もっといいクルマを」などと言っておきながら、醜悪なデザインが街の風景を乱すことに無頓着、無責任な姿勢はいかがなものかと思うけれど、ただ、当然ながらコトの半分は買う側、つまり僕らユーザーのほうに課題ありということだ。

 即ち、トヨタの力は認めるとしても、なんでこうも簡単にコロっと戦略に乗ってしまうのかと。ユーザーの皆が「DNトレック」や「キーンルック」を知っている必要はないけれど、より美しいもの、より上質なものを見極める審美眼は持つべきなんじゃないのか?

 まあ、いまだプロの評論家でさえ「デザインは好き嫌いだから」なんてことを平気で書いてしまう状況だけど、だからこそユーザーはその上を行かなくてはいけない。

 たとえば優れた演出のドラマとか、素晴らしい演奏の楽曲とか、本当にサービスのいい宿とか。審美眼はあらゆるコトやモノが対象になるんだろうけど、クルマ好きの僕らとしては、少なくともその佇まいの善し悪しくらいはしっかり見極めたい。

 本来であれば、メーカーの仕事は常にユーザーの想定を大きく上回るものであってほしいけれど、どうもそれは期待できないことが多いらしい。そうであれば、僕らユーザーは流行や安易な“仕掛け”に惑わされない、もっと広い視野を持たなくてはいけないのかもしれない。

(文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター)

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。

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