まともな会社であれば、メールの見落としなどというミスは、厳重な叱責もの。しかも、NECは、他社からのメール文中の特定の部分だけ見落としていたと主張しているのだ。
「どこの世界に、何度も『メールを見落とす』会社があるのでしょうか? しかも普段取引がある他社からのメ-ルの中の、当社に関する部分『だけ』をなぜか見落としているというのは、言い訳にすらなっていません。しかも一旦返答をよこしておきながら、それに対するこちらからの返答を再び無視する。そして、最後は脅しとも受け取られかねない行動をとる。こういう態度は、大企業だと許されるという考えなのかと不思議でなりません」
と、A氏は怒りを隠さない。
業績の悪化に伴い、早期退社対象者へのひどい対応や所得隠しなど、不穏な報道が続くNEC。「週刊朝日」(朝日新聞出版社/9月14日号)によれば、7月に募集した早期希望退職制度にグループ正社員2393人が応募したと発表したまさにその当日朝、社員が本社ビル内で飛び降り自殺するという事件が起きていたという報道もある。
「大手ということで、かつては『無理が通れば道理が引っ込む』だったのかもしれません。しかしNECという名前だけで、すべての下請けがなんでも言うことを聞いてくれていた時代は、もうとっくに過ぎ去ってしまった。そういう現実が、いまだに理解できないのではないでしょうか」(A氏)
現在の窮状の元凶を自らが内包していることに気がつかない限りは、再生への道筋も、メール同様「見落としてしまう」に違いない。
※前回記事はこちら
『連絡謝絶、ウソ連発…“腐った”NECによる取引先潰しの実態』
●田中 秀憲(たなか・ひでのり):NYCOARA,Inc.代表
福岡県出身。日本国内で広告代理店勤務の後、99年に渡米独立。04年、リサーチ/マーケティング会社、NYCOARA, Inc.を設立。官庁/行政/調査機関/広告代理店などのクライアントを多く持ち、各種調査や資料分析などを中心に、企画立案まで幅広い業務をこなす傍ら、各メディアにて寄稿記事を連載中。小泉内閣時代には、インターネット上での詐欺行為に関するレポートを政府機関に提出後、内閣審議会用資料として採用され、竹中経済産業大臣発表資料の一部となった。