日本では株価が一時2万円を超え、デフレ脱却の兆しも見えてきているが、厚生労働省が5月1日に発表した3月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比2.6%減とマイナスは23カ月連続となっている。
一方で円安による外国人観光客増加のため観光地などではホテル料金が急騰し、日本人の出張ビジネスパーソンを直撃している。残念ながら、大多数の一般層は相変わらず円安による輸入品の値上げ、消費税増税による厳しい家計のやりくりを迫られているのが実態だ。
そうした状況下でも元気のいいビジネスがある。今話題の「いきなり!ステーキ」(ペッパーフードサービス)や「俺のフレンチ・イタリアン」(俺の)、格安航空会社(LCC)、中国の格安スマートフォンメーカー小米(シャオミ)などだ。
これらの企業に共通して見られる特徴がある。それは従来高級品であるとされていたものを、一般の消費者が気軽に楽しめるよう低価格化に成功したビジネスモデルである点だ。
高額商品がクオリティを落とさずに格安で楽しめるのであれば、誰でも喜ぶヒット商品になるのは当たり前だ。従来の「安かろう、悪かろう」を脱しきれない低価格品は、もはや消費者の心を捉えることは難しい。現在ヒットしている商品は「低価格なのに高品質」を実現している点が顕著な特徴だ。
「低価格商品を売る」と「儲けの仕組み」の違い
ここで注意すべき点は、単に「低価格商品を売る」ことと、「儲けの仕組み」であるビジネスモデルを明確に区別することだ。すなわち、ヒット商品が出てもすぐに「模倣」されてしまい価格競争に陥ってしまうことは、現在の日本メーカーを見れば一目瞭然だ。多くは人件費の安い国で製造された模倣品に駆逐されてしまった。だからこそ、模倣しにくいとされるビジネスモデルの勝負へ世界は突入していることに、日本企業は早く気が付くべきだろう。
「高価格商品の低価格化」のビジネスモデルで真っ先に思い浮かぶのが、かつてパソコンを直販することで低価格化を実現して急成長した米デルだ。19歳で起業したマイケル・デル氏は、販売店やディーラーを介さず注文生産の製品を直接顧客に販売するという直販のビジネスモデルを採用したことで急成長を遂げ、創業からわずか4年後の1988年、24歳の若さで 米NASDAQ に株式公開を果たした。しかしその後、パソコンのコモディティ化(汎用化)が起こり、従来の勢いはなくなった。
同様のビジネスモデルで急成長しているのが、前出の小米である。設立わずか5年でスマホ市場世界シェア第2位と急成長している。