中国のスマホ市場では、小米と米アップルが大幅にシェアを増加させている一方で、中国レノボと韓国サムスンがマイナスに転じている。小米は米グーグルや米マイクロソフトから優秀な人材を引き抜き、製品はアップルのデザイン性を模倣しておりパーツも通常メーカーと同じものを使用しているため、デザイン・品質とも高い。にもかかわらず自社サイトでの直販により価格は約半額であるため、爆発的なヒットとなっている。
一方で高級衣料ブランド、英バーバリーの女性社長を高額報酬(約82億円相当のストックオプションといわれている)で引き抜き、副社長に据えたアップルは、高価格化やデザイン性を重視し、すでに予約で300万台を超えたといわれるアップルウォッチなどの新商品の開発、iTunesなどのプラットフォームと有機的に結びつくサービスを提供することで、他社を寄せ付けない強さを示している。同社の時価総額は約7550億ドル(約90兆円)でマイクロソフトの約2倍もあり、世界一だ。
どうやって低価格化を実現するのか
では、どのようにすれば高額商品の品質を落とさず、低価格化を実現することができるのだろうか。
グローバル市場への輸出品であれば、自国通貨を安く誘導すれば他通貨ベースでは割安になるため、容易に低価格化を実現できる。すなわち円安により輸出を拡大する方法だ。もっとも、日本の大手メーカーはすでに海外に多くの工場を移転させてしまっているため、効果は限定的だ。
今年3月分貿易統計(速報)の概要(財務省)によれば、貿易収支は2年9カ月ぶりに2293億円の黒字となった。実際、輸出は自動車、半導体等電子部品が増加し、対前年同月比8.5%の増加となったが、輸出数量ベースでの伸び率は3.3%にすぎない。ちなみに貿易収支が黒字化した最大の要因は、原油安により原油、石油製品等の輸入額が大幅に減少したことであり、輸出増ではない点は注意が必要だろう。
しかし、外国為替は個別の企業ではコントロールできないので、企業が利益を上げるための方法は、「売り上げを上げる」か「コストを下げる」かだ。
売り上げは、「単価×顧客数×リピート率」に左右されるので、単価を下げて売り上げを一定に保つには、顧客数とリピート率を増加させることが必要だ。
顧客数を増加させるためには、単価を下げること、人々に認知されること、店舗であれば回転数を増やすこと、スペースあたりの人数を増やすことなどが必要である。日本人にとって「安くてうまい庶民の味」といえば立ち食いそばが思い浮かぶが、前述した「いきなり!ステーキ」も「俺のフレンチ」も、立ち食いそばを模倣していると考えることができる。