リピート率については、ポイント会員化などの施策もさることながら、やはり客に「もう一度行きたい」と思わせる品質の高さが何よりも大切だ。
他業界での成功事例を模倣
では、コストを下げるためにはどうすればよいのだろうか。
価値連鎖(バリューチェーン)や経営資源を見直すことが重要だ。例えば、LCCは、機体を統一してパイロット養成コストを削減、発着間隔の短時間化、客室乗務員による機内清掃の実施、座席指定の廃止、インターネット予約に限定などのコスト削減策を取っている。
経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)などについても、例えばブックオフコーポレーションは、古本の回収基準をアルバイトでもすぐにわかるように変えたことで、人件費を抑制することに成功している。従来古本の買い取り価格の相場がわかる目利きになるためには10年かかるといわれていたものを、アルバイトでもすぐ会得できるようにした。
ユニクロやZARAなどのファストファッションは、製造から販売までを一貫して行うSPAモデルであるため、流行をいち早く取り入れるスピード経営とコスト削減を同時に達成することで、低価格でファッショナブルな商品化に成功した。
このように事業の過程を分解することで、「自社でも他業界での成功事例を模倣できないか」と考えることは極めて有効だろう。
日本を含む先進国の製造業では、労働コストの上昇から高付加価値化を目指す方向にあるが、国家戦略として効率化によるコスト削減を目指す動きもある。
例えばドイツは国家戦略として「イノベーション4.0」を掲げている。これはITを駆使することでIoT(Internet of Things:モノとインターネットの融合)を進めて、国全体をひとつの工場のように捉えることで徹底的な効率化を図ろうとするものだ。
価格を先に設定する
以上のように、まず消費者に受け入れられる価格を先に設定することで、ロボット化、ITの利用、バリューチェーン(価値連鎖)の見直しなどによりコスト削減の余地はあるだろう。
「高額なものを安く」という経営思想は、古くは米国フォードがT型フォードで目指した理念であり、日本ではパナソニック創業者、松下幸之助氏の水道哲学に通じる古典的な思想だ。松下氏は1932年5月5日、全社員を集めて以下の使命を明示したとされている。