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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

ドローン、危険ばかり挙げて過剰規制の愚かさ ビジネス化で大きく世界に遅れる懸念

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員

先進的な「ドローン・マーケティング」の活用

 ドローンには、具体的にどのような活用の可能性があるのか。ドローンの活用事例として「空撮(空中からの撮影)」や「宅配」「農業支援」などがよく挙げられるが、ここでは、「マーケティング」にフォーカスして簡単に見ていこう。模索中の段階ではあるものの、ユニークな活用パターンが散見される。

(1)Product:既存商品の代替/進化

 今年1月にラスベガスで開催された家電ショー「CES2015」では、ドローンに関する展示も多かった。その中で注目を浴びたものの一つが「Nixie」。簡単にいえば、自撮り(セルフィ)のドローンだ。腕時計サイズのドローンで、通常は腕に巻きつけておき、自撮りしたいときにアームを伸ばして飛ばし、自分を写してくれるものだ。撮影後は、まるでブーメランのように空中浮遊して戻ってくる。

(2)People:無人化(+サービスのエンタメ化)

 次に紹介するのは、ウエイターに代わって店内で料理や飲み物を運んでくれるドローン。シンガポールのフードチェーンの「The Timbre Group」が計画中だが、すでに実験段階を終えており、今年中には国内5店舗に40機あまりのウエイター・ドローンを本格的に導入する予定。さらに、料理や飲み物を運ぶだけでなく、メニューの注文や支払い対応もできるように開発を計画しているとのこと。

ドローン、危険ばかり挙げて過剰規制の愚かさ ビジネス化で大きく世界に遅れる懸念の画像3出典:「Lindsworth Deer」(mythoughtsontechnologyandjamaica.blogspot.com)http://mythoughtsontechnologyandjamaica.blogspot.jp/2015/03/Singapore-Timbre-Waiters-Infinium-Robotic-Drones-Robot.html

(3)Promotion:広告手法の多様化
 
 ドローンによって、今まで考えられなかったユニークな広告手法も可能になっている。ロシアのモスクワにあるアジア系レストランではドローンに昼食の広告チラシを搭載し、オフィスビルの前をランチタイムの直前に飛び回った。この広告手法は大成功し、これをきっかけにドローンを用いた広告手法は「Drone-vertising(Drone advertisingの略称)」として世界的に知られることになった。

(4)Place:店舗空間の拡張化

 ここまでは海外の事例を紹介したが、最後に国内の事例を紹介しよう。クロックス・ジャパンは、3月に東京ミッドタウンでドローンを使った世界初の「空中ストア」を期間限定でオープン。ストア内のiPadで欲しいシューズの色を選ぶと、ドローンが空高く舞い上がり、高さ5メートル、幅10メートルの巨大ディスプレイから指定された色の靴を運んで持ってきてくれる。今後も、こういったプロモーションが増える可能性はあるだろう。

村澤典知

村澤典知

インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員。一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車のグローバル調達本部では、調達コスト削減の推進・実行を中心に、新興国市場での調達基盤の構築、大手サプライヤの収益改善の支援に従事。博報堂コンサルティングでは、消費財・教育・通販・ハイテク・インフラなどのクライアントを担当し、全社戦略、中長期戦略、マーケティング改革、新規事業開発、新商品開発の導入等のプロジェクトに従事。A.T.カーニーでは、消費財・外食・自動車・総合商社・不動産・製薬業界などの日本を代表する企業のグローバル成長戦略、中期経営計画、マーケティング改革(特にデジタル領域)、M&A、組織デザイン、コスト構造改革等のプロジェクトに従事。2014年より現職。大手メーカーや小売、メディア企業に対し、データ利活用による成長戦略やオムニチャネル化、新規事業開発に関する戦略策定から実行までの支援を実施。


株式会社インテグレート

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