山本氏は、意欲的な事業家である。新潟に腰を据えたまま、創業翌年の94年には早くもFC展開を始めた。98年にオフハウス、01年にモードオフ、02年にガレージオフ、04年にホビーオフ、と矢継ぎ早にリユース事業を拡大している。
近年も、13年にリカーオフを開業しており、各ブランドの直営とFCを合わせた店舗数は700を超えた。
13年10月には、FCを10店展開している福岡無線を買収し、14年12月にはリサイクル着物の東京山喜に出資するなど、ネットワークの拡大を加速している。活発な事業展開だ。
ベンチャー企業というと、ITやデジタル、あるいはeコマースなどの分野が注目されがちだが、ハードオフは業態そのものを開発し、独自のビジネスモデルを磨いてきた。
ロールモデルがない、つまり先人がいない市場で道を切り拓きながら進んできたという点で、敬服に値する企業といえる。
20年に全国1000店舗を狙う
山本氏の視野は、自社グループだけでなく、リユース業界全体にも向けられている。09年には、日本リユース業協会を発足させたが、同協会には競合である上場8社が参画しており、自ら初代会長に就任した。また、山本氏は日本フランチャイズチェーン協会の会長でもある。
数百社のFC本部運営企業が加盟している中で、会長という職を任されている山本氏は、ただの事業家にとどまらない。
ロゴが似ているため、ハードオフとブックオフは資本関係にあるのかと思っていたが、実態は違っていた。両社は創業者が互いに信頼しているため、競合にもかかわらず相互にFC契約を結び、互いのショップを経営する関係だったのだ。今年3月に、ブックオフはハードオフとのFCチェーン契約を解除したが、異例ともいえるビジネス関係の構築からも、山本氏の懐の深さがうかがえる。
山本氏は、今後の目標として「当社は、リユース業界の圧倒的なリーディングカンパニーを目指し、中期目標として20年に全国1000店舗達成(直営とFC合計)」を掲げている。
今後も、リユース業界には追い風が吹くだろう。ネットオークションの普及で、使用済みの品物を売買することに、消費者が慣れていくからだ。市場が急成長していくフェーズでは、トップ企業が一番の利益を得るというのがマーケティング戦略のセオリーだ。
20年というと、山本氏はまだ71歳だ。創業経営者として、元気に同社を牽引していることだろう。そして、そうであれば、同社の中期目標が達成される可能性も大きい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)