同社は理化学研究所(理研)認定のベンチャーで、現在は加齢黄斑変性という難治性の眼病について、iPS細胞を使う治療法を開発中だ。加齢黄斑変性とは加齢により網膜の中心部にある黄斑という部分に障害が生じることで、見ようとするところが見えにくくなる病気。欧米では成人の失明原因の1位となっている難治性の病気だ。日本では患者数が比較的少なかったが、高齢化の進行や食の欧米化によって、近年は著しく増加している。2つのタイプがあるが、どちらも治りにくく、根本的な治療方法がないのが実情だ。
iPS細胞は、あたかも受精卵のように、あらゆる臓器になる可能性を秘めている。同社では、iPS細胞から分化誘導して作製した網膜色素上皮細胞を移植に適したシート状組織に成長させ、患者の網膜下に移植するといった根本的な治療法の開発を目指している。
理研では現在、加齢黄斑変性治療の臨床試験を実施している。ここでは患者本人の細胞(自家細胞)を使った再生医療を行っているが、その治療費は医療業界の関係者の推計で5000万~1億円と見られている。
ヘリオスでは、他人の細胞から培養したiPS細胞を使う方法を考えているという。この方法であれば価格を安く抑えることができるため、より実用化に近いと見られている。安全性の確保も進んでおり、iPS細胞の量産化のインフラも整いつつある。治療費は数百万円程度になるとの見方もある。
再生医療実用化へ高まる期待
山中伸弥京都大学教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞して以降、再生医療、細胞医療の分野は政府の成長戦略に採用されるなど、追い風が吹いている。この分野は、これまで官僚主導で研究が進められてきたが、成果は乏しかった。しかし現在は、山中氏が実質的にリードする格好で規制緩和などが進んでいる。その代表例が、2014年11月に施行された再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)と薬事法等の一部を改正する法律(改正薬事法)だ。